
2025年のマンガ大賞で1位に輝いたことも記憶に新しい「ありす、宇宙までも」。
主人公のありすは、幼少期のバイリンガル教育の過程で両親が他界し、英語と日本語のどちらも十分に習得できないまま育った「セミリンガル」の少女。
美少女ゆえに一見するとクラスの人気者ですが、授業についていけず、自分の気持ちを言葉でうまく表現することもできない。そんな彼女は、周囲から「赤ちゃん」のように扱われています。
そんなありすが、クラスで孤立する天才少年・犬星君と出会い、学ぶ楽しさを知ることで、少しずつ「宇宙飛行士になる」という大きな夢へ歩き始めます。
少女漫画界の鬼才・売野機子先生の軽やかなタッチと、ありすの明るく前向きなキャラクターに、ポジティブなパワーをもらえる作品です。
宇宙飛行士を目指す物語というと、どうしても理系のイメージを抱きがちですが、本作で重要なテーマのひとつとなっているのが、実は「言葉」。
言葉は育ってきた環境や文化、そして「自分は何者なのか」という意識にも深く結びついている。本作では、そんな言葉とアイデンティティの関係が、さまざまな形で描かれています。
なかでも印象的なのが、5巻に登場する料理のエピソード。
アメリカのスペースキャンプに参加したありすは、地元のハンバーガー店でエイヴリーという少女に出会い、意気投合します。しかしその後、キャンプで再会したエイヴリーはなぜかありすを無視するように……。
険悪な雰囲気のなか、ふたりが同じチームになってしまったのが「宇宙食プログラム」のミッション。
課題は、宇宙で食べる料理を考えること。その条件は、
・無重力でも食べられる
・保存できる
・ゴミが少ない
・栄養バランスが良い
そしてもうひとつ、「チームのメンバーの郷土料理を取り入れる」という条件が加わります。
アメリカ育ちのエイヴリーですが、実はルーツはトリニダード・トバゴ。
それを知った犬星君はトリニダード料理を軸にすることを提案しますが、エイヴリーが思わず口にしたのが「ダブルス」でした。

※【コマ引用】「ありす、宇宙までも」(売野機子/小学館)5巻より
ダブルスは、トリニダード・トバゴでは定番のストリートフード。2枚のパンで具材を挟んで食べることから「ダブルス」と呼ばれているそうです。
普段は英語話者のエイヴリーですが、トリニダード・トバゴにはクレオール語という独自の言語文化があります。
アメリカに移民としてやってきた祖父母は、故郷の言葉を捨てた代わりにこのダブルスを家庭で作っていたのだとか。
祖父母の苦労を知る彼女にとって、自身のルーツには複雑な思いがある。それでも、この料理には譲れないこだわりがある。
言葉はその人を形作りものだけど、料理や味という非言語の文化もまた、その人のルーツを繋ぐ大切なものなのだと気付かされます。
そしてこのダブルスが、調べるほどにとても美味しそう!
本場のレシピを参考にしつつ、再現してみることにしました。
犬星君のセリフでは、ダブルスは「平焼きパンのロティに挟んで食べる」と説明されています。一方、ネットで調べてみると「バラ(bara)」と呼ばれる揚げパン風のレシピが主流のようだったので、今回はそちらにならってみます。
具材は「チャナ」と呼ばれるひよこ豆の煮込みが定番のようです。

チャナ(ひよこ豆の煮込み)の材料:
・ひよこ豆の水煮缶 1缶(400g)※水気は切っておく
・にんにく 1片(みじん切り)
・カレー粉 小さじ1.5
・クミンパウダー 小さじ1/2
・ターメリック ひとつまみ
・水 200〜300cc
・塩、コショウ
・サラダ油 大さじ1
パンの材料:
・強力粉 60g
・薄力粉 60g
・ドライイースト 小さじ3/4
・ベーキングパウダー 小さじ1/2
・砂糖 小さじ1
・塩 小さじ1/2
・ターメリック 小さじ1/4
・ぬるま湯 100cc
チャナ(ひよこ豆の煮込み)の作り方:

厚手の鍋にサラダ油を熱し、にんにく、カレー粉、クミンパウダー、ターメリックを弱火で香りが出るまで炒める。

ひよこ豆の水煮を加えてさっと炒め、ひたひたの分量の水を加えて中火で煮る。沸いたら弱火にし、豆がやわらかく潰れるまで煮込む。

豆がやわらかくなったら、鍋のなかの半量ほどを木べらなどで潰し、とろみがつくように仕上げる。

塩コショウで味を整えたら完成!やってみると、意外とシンプルで簡単ですね。
続いてパンのほうに挑みます。
パンの作り方:

ボウルに強力粉、薄力粉、ドライイースト、ベーキングパウダー、砂糖、塩、ターメリックを加えて軽く混ぜあわせる。
ぬるま湯を少しずつ加えてやわらかめの生地になるようまとめ、ボウルのなかで5分ほどしっかりたたきつけながらこねる。

生地をまとめたら表面にサラダ油を塗り、ボウルにラップをして1時間ほど発酵させる。

発酵させた生地をガス抜きしてから8等分し、ピンポン玉大のサイズに丸め、ふきんをかぶせて15分ほどベンチタイムで休ませる。

ぬらした手の平で生地を薄く平らに伸ばす(きれいな円にならなくても適当でOK)。

高温に熱した油で片面3〜5秒ずつ、短時間でさっと揚げる。
(揚げるのに時間をかけると固くなってしまうので注意)

揚げるとこんな感じ。
ターメリックの色がきれいに出ます。これだけでも美味しそう。

トッピングとしてポピュラーな、タマリンドソースときゅうりのチャツネも作ってみることにしました。
(生地を発酵させている時間に作ると効率的です)

タマリンドソース:
小鍋にお湯(100cc程度)を沸かし、タマリンドペースト(大さじ2)、砂糖(大さじ3)、クミンパウダー(小さじ1/4)、おろしにんにく(1/2片)、塩(小さじ1/4)、チリパウダー(ひとつまみ)を加えて軽くとろみがつくまで煮詰めたら完成。

きゅうりのチャツネ:
きゅうり(1本)は粗めにすりおろし、水気をしぼっておく。

きゅうりとおろしにんにく(1/2片)、ライム汁、きざみパクチー、塩、チリパウダーを混ぜたら完成。

2枚セットにしたパンの片方にひよこ豆のチャナをのせ、上からタマリンドソースときゅうりのチャツネをトッピング。

初めて食べるエスニック料理っていつもわくわくする。

もう一枚のパンで挟み、そのまま手でいただきます。

食べた感想:
香ばしくてもちもちの食感のパンは、「揚げナン」といった感じで、これ単体でも美味しい。
スパイスの効いたひよこ豆カレーは素朴な味わいですが、甘酸っぱいタマリンドソースと爽快なきゅうりのチャツネが合わさると絶妙。これ、めちゃめちゃ好きだー!
基本のトリニスタイルのダブルスに満足したところで、今度はありすたちが課題で作った「スペース・ダブルス」としても再現してみます。
「メンバーの郷土料理を取り入れる」という課題をもとに、作中の「スペース・ダブルス」では、アメリカのポークアンドビーンズと、日本の豚の生姜焼きをダブルスの具材にしています。
生姜焼きは言わずもがなですが、ポークアンドビーンズはアメリカで定番の家庭料理のよう。

今回は、豚肩ロースと玉ねぎを両方の料理に使います。

豚肩ロースのブロックは、ポークアンドビーンズ用は1cm程度の角切り、生姜焼き用は薄切りと切り分けておきます。ベーコンは角切りに。

まずはポークアンドビーンズから。
厚手の鍋にオリーブ油とみじん切りにしたにんにくを入れて弱火で熱し、香りが出たら角切りにした豚肩ロースとベーコンを焼き色がつくまで炒める。玉ねぎを加え、しんなりするまで炒める。

白インゲンの水煮を煮汁ごと加え、トマト缶と黒蜜(※)、はちみつ、酢、ウスターソース、マスタード、塩コショウを加え、蓋をせずに30分ほど煮込んだら完成。
※本場では「モラセス」という黒い糖蜜を使うことが多いようです

生姜焼きは水溶き片栗粉でとろみをつけて、パンにのせたときに食べやすいようにしました。

トリニ(ひよこ豆煮)、アメリカ(ポークアンドビーンズ)、日本(生姜焼き)の3か国セッション。

揚げパンと一緒に並べるとパーティ感が出ますね。

ポークアンドビーンズは子どもでも食べやすそうな甘口のシチュー。
肉と豆がゴロゴロ入っているので、食べ応えも十分です。

おなじみの生姜焼き。
ふだんからサンドイッチの具にすることもあるので、ダブルスにしても違和感なし。

でもやっぱり個人的には、本場のトリニスタイルのダブルスが好きだな〜〜。
課題後の宇宙食パーティのシーンでは、このスペース・ダブルスだけでなく、さまざまな多国籍&ミックスな料理が並んでいて、実に楽しそうでした。

「ひょっとして、ご飯にも合うのでは…?」と思ってすべてを白米にのせてみたら、こちらもなかなかいけました。
炭水化物って、だいたいの異文化を受け入れる土台になるのかもしれない……。
▽X(@pootan)はこちら

▽Instagram(@mangashokudo)はこちら

▽Threads(@mangashokudo)はこちら
https://www.threads.net/@mangashokudo
▽YouTubeはこちら

▽Instagram(@mangashokudo)はこちら

▽Threads(@mangashokudo)はこちら
https://www.threads.net/@mangashokudo
▽YouTubeはこちら










コメント