
真造圭伍先生の作品といえば、「森山中教習所」「ぼくらのフンカ祭」など、どこかひねくれつつも爽やかな青春の空気感が魅力です。
現在連載中の「ひらやすみ」は、東京・阿佐ヶ谷の古い平屋を舞台にした物語。元俳優のフリーター・ヒロトと、美大進学で上京してきた親戚のなっちゃんによる、ゆるりとした共同生活が描かれます。
NHKでのドラマ化も話題になりましたが、来年はアニメ化も予定されているようで楽しみ!
ふたりが暮らす平屋は、かつての住人だった一人暮らしの「はなえさん(ばーちゃん)」からヒロトが譲り受けたもの。彼女が亡くなった後も、そこにはかつて一緒にご飯を食べた日々の温かな記憶が残っています。
私は真造先生の絵が昔から好きなのですが、この「ひらやすみ」は特に、独特の柔らかな線が描き出す平屋の生活感や、阿佐ヶ谷の街の風景が本当に魅力的。ヒロトの暑苦しい親友・ヒデキや不動産店に勤める美女・よもぎさんなどさまざまなキャラが登場しますが、阿佐ヶ谷という街もまた主役のひとつといっていいかもしれません。
今回再現する「くるみいなり」は8巻に登場するエピソード。 なっちゃんの実家・山形から届いた立派な殻付きのくるみ。
剥く手間を考えて面倒くささを隠せないなっちゃんに対し、ヒロトはばーちゃんがよく作っていたという「くるみいなり」を作ろうとノリノリで提案します。

※【コマ引用】「ひらやすみ」(真造圭伍/小学館)8巻より
このいなり寿司の面白いところは、具材を自分たちで組み合わせるフリースタイルな点。まるで手巻き寿司のように自由で、寿司桶に並んだ色とりどりの具材を眺めるだけで、ワクワクしそう。
旅先で鬼くるみが売られているのを見つけたので、いそいそと再現してみました。
めちゃめちゃ久々ですが、動画も作りました。
(久々すぎて撮り方とか編集の仕方とか忘れかけていた)

材料:
・殻付きくるみ(殻のまま一晩水に浸ける)
・油揚げ
・ひじき
・ガリ
・枝豆
・ハム
・だし汁、醤油、砂糖、酒
・酢飯、白米

くるみは一晩水に浸けておきます。
くるみは日本では「西洋くるみ」と在来種の「鬼ぐるみ」が一般的ですが、今回は「山形の地元でとれたもの」ということで後者かな・・・と想像。
殻がめちゃめちゃ硬いのが特徴らしいですが、割り方もヒロトが解説してくれています。

油揚げは、豆腐屋さんに手作り感あふれるいい感じのものが売ってたのでそれを使ってみました。
半分に切って袋状に広げるのですが、めん棒などで事前にコロコロしておくと開きやすいです。

2分ほど茹でて、油抜きをします。

ザルにあけてさっと水にさらして冷まし、手でぎゅっと水分をしぼります。
ヒロトが料理をしながら、ばーちゃんがどんなふうに作業していたかを徐々に思い出していくシーンが、静かな温かさがあってとても好きです。

油抜きした油揚げを、だし汁、醤油、砂糖、酒で味付けします。
ここは作中にならって、味をみつつ目分量で適当に。

煮汁に油揚げを入れたら、落とし蓋をして弱火で20分。その後冷まして、味を染み込ませます。
しかし
「いなりなんて甘辛くすりゃいいんだよ。」
とは、作中のばーちゃんのセリフですが、この「甘辛」の塩梅が慣れない身にはなかなか難しい。
今回は昔ながらの濃い味を目指したはずが、意外と上品な色合いに。
本気で「おばあちゃんの味」を目指すなら、それこそ「油揚げでジャムでも作るんかい」というレベルで砂糖をぶち込む勇気が必要な気がします。
さて、油揚げを冷ましている間に、ほかの具材の準備を進めます。

ひじきはだし汁、みりん、醤油で煮ておく。

枝豆は塩でもんで茹でて、さやから出しておく。
ガリとハムは粗く刻んでおく。
簡単な具材ばかりとはいえ、品数が多いので意外と手間がかかる…!
いなり寿司をちゃんと作ると、こんなに大変なのかと再確認。どの工程も楽しそうにこなすヒロトのゆるりとした時間感覚、見習いたいものです。

さて、いよいよくるみ割りに挑戦します。
水に浸けたくるみを、フライパンで5〜10分程度空炒りしていきます。
くるみの殻で表面が傷つく可能性があるので、鉄製のフライパンなどが安心です。

しばらく炒り続けると表面が乾いてパチパチと音がします。
よく見ると、くるみの殻の割れ目に少しだけ隙間ができているのが見えます。こんな感じでOK。

くるみの粗熱がとれたら、いよいよ割る作業。
マイナスドライバーとトンカチを用意します。

くるみの殻の割れ目にマイナスドライバーの先端をあて、上からトンカチで軽くたたくと・・・

意外なほど、すんなりぱかっと割れました!

どのくるみも綺麗に割れて快感。
慣れてくるとこの作業、永遠にやっていたいほど楽しい。

逆にちょっと大変だったのが、竹串などで実をとりだす作業。
最初のほうはうまく取り出せず、ボロボロになってしまいましたが、時間がたつとこれもするっと取り出せるようになりました。
(少し冷めたほうがよいのかもしれない)

大きな実は粗く刻んで、具材の準備は完成!
(今回は端折っていますが、酢飯と白飯の準備も忘れずに)

寿司桶に白飯、酢飯、具材を順番に盛り付けていきます。

煮汁をしぼった油揚げも並べます。

準備完了!

まだ準備中なのに、手巻き寿司のように華やかな彩りの具材たちにテンションが上がります。

油揚げのなかに各種具材を好きなように詰めていきます。
・くるみと酢飯
・枝豆とハムだけで洋風に
・全部盛り
・ご飯だけ
などなど、気のむくまま、手が動くままに。

すべて詰め終わったのがこちら。不器用で皮が破けちゃったものもありますが、それもまた「家庭の味」ということで。

↑うっかりくるみ入りじゃないものを断面図にしちゃった
(ご飯→具材→ご飯と重ねて詰めていったので、断層状になっていますね)
食べた感想:
油揚げは思ったより上品な味付けになってしまったけど(昔ながらの和菓子屋さんで売ってるような、甘辛い感じにしたかった)、くるみの香ばしさと食感、ハムや枝豆の彩りなど、いろんな具材のいなりをランダムで味わえるのが楽しい!
そして手間をかけてくるみを割った時間も、美味しさのエッセンスになっている気がしました。
そして手間をかけてくるみを割った時間も、美味しさのエッセンスになっている気がしました。
都会の片隅、平屋に流れる穏やかな時間。ばーちゃんが遺してくれたレシピは、今もヒロトたちの生活を温かく彩っているのだな、と感じる一品でした。
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コメント
コメント一覧 (2)
たまたま手に入れられてワクワクしながら割ってみたら意外と実がきれいに取れずに苦戦した思い出。
半分くらい潰れた気がします。
手巻き寿司ならぬ手詰めいなり、パーティーぽくていいですね。