
これまでの表紙と異なり、ともに歩く2人の後ろ姿が印象的な「何食べ」23巻。
この巻のハイライトといえば、なんといってもシロさんの還暦(!)の誕生日にケンジが用意したサプライズ。初期から読み続けてきた読者にとっては、参加者の一員となったような、じんわり感慨深い気持ちになるシーンでした。(1巻で「誰にも話せない関係なのか」とケンジが泣いていたシーンを思い出すと余計に…)
その前振りとなったのが、22巻で描かれた小日向さん&ワタルくんの披露宴でしたが、今回の23巻の冒頭では、その後スペインに新婚旅行に行ったふたりが登場します。
旅の自慢話でマウントをとるかと思いきや、愚痴連発のワタルくん。しかしオチで、その真意をちゃんとくみ取ったケンジはさすがだと思いましたw
このとき、お土産としてもらったのが本番のオリーブオイルとサフランなど。これらを使ってシロさんが夕飯のメニューにしたのが、スペイン料理の代表格「パエリア」です。

※【コマ引用】「きのう何食べた?」(よしながふみ/講談社)23巻より
庶民派のシロさんにしては珍しい、おしゃれな本格派レシピ。これから年末年始シーズンですし、特別な日のご馳走メニューとしても良さそうです。
まずはサイドメニューのグリーンサラダに使う、ドレッシングの準備から。(分量は作品をご確認ください)

玉ねぎをフードプロセッサーでみじん切りの状態にし、そこにしょうゆ、砂糖、酢、塩、こしょうを加え、ドロッとするまで攪拌。

これを鍋に移し、混ぜながら中火で5分煮て、オリーブオイルを加え、さらに5分煮ます。
オリーブオイルはあいにく作中と同じスペイン産ではないけど、貰い物のちょっといいやつを使います。

火を止め、冷ましたら玉ねぎドレッシングの完成です。
ドレッシングというとオイルたっぷりのイメージですが、こちらは野菜に対してオイルは控えめ。どちらかというと、野菜ソースのような印象です。メインのパエリアがオイルたっぷりだから…というシロさんのバランス感覚、さすがです。

あわせる野菜は水菜、ブロッコリー(茹でておく)、きゅうり、カイワレをミックスしたもの。
食べる直前まで冷やしておきます。
さてここからはパエリアの工程へ。

水にサフランを加え、サフラン水を作っておきます。
10~15分くらいで、きれいな黄金色になります。

ひと口大に切り、塩コショウした鶏もも肉を、オリーブオイルをたっぷり入れたフライパンに皮目を下にして入れ、中火でこんがり焼き、別皿に取り出しておきます。

鶏もも肉を焼いたフライパンにそのまま、みじん切りしたにんにくと玉ねぎを入れ、玉ねぎが透き通るまで炒めます。

次にホールトマト缶(トマトは手でつぶしておく)を入れ、トマトがペースト状になるまで煮詰めます。
ここでしっかりトマトの水分を飛ばすのが、旨みを出すポイントのよう。

サフラン水を注ぎ、コンソメキューブを加えて強火に。
スープが沸騰したら、魚介類を加えます。

赤海老は近所のスーパーに見当たらないので角上魚類に行ったら、えらく立派なものが入手できてしまった。

赤えび、そして冷凍あさりをスープに入れてフタをし、あさりの貝の口が開いたら、いったん火を止め、具材を引き上げます。

赤えびを取り出すときは、トングで頭をぎゅっとはさみ、海老味噌をスープに加えるのもポイントのようです(力を入れすぎて頭をつぶさないように注意)。

↑この色が違う部分が海老味噌です。

引き上げたあさりと赤えびたち。
ここまでの工程でようやく気付いたけど、パエリアって途中まではブイヤベースっぽい感じなんですね。この魚介たっぷり出汁で炊いたご飯なら、そりゃ美味しいはずだ~~とあらためて実感。

フライパンを再度強火にかけ、沸騰してきたら生米(洗わなくてOK)をフライパン全体にいきわたるように振り入れます。

まずは強火のまま5分。
パエリアのレシピはさまざまなようですが、今回は本場のレシピにあわせ「フタはしない」方式とのことです。
ただ「炊飯するときはフタ」の文化で育っているせいか、シロさん同様に「いいのか…?本当に…?」と出来上がるまではハラハラしますね。

5分経ったら弱火にし、さっき焼いた鶏もも肉を上に乗せ、さらに12~15分。

米の上にでんぷんの膜が張り、鍋肌からフチの部分が離れてきたら最後に10~20秒強火にし、おこげを作ります。

火を止め、赤えびとあさりを乗せます。
角上魚類の赤えびが立派すぎて、すごい存在感になってしまったw このサイズなら、赤海老の数はもう少し減らしても十分だったかも。

イタリアンパセリ、カットレモンを添えたら完成です!
普段、日常で酷使している26センチのフライパンが、えらくゴージャスに映えますな。

食べた感想:
トマトといろんな魚介の出汁、オリーブオイルがしっかりしみ込んだご飯は、悶絶するほど美味しい。スープに加えた海老味噌のコクもしっかり感じます。
そして具材もたっぷりなので、ワンパン料理でもご馳走感は十分。特に赤えびは大きいのを入手できたこともあり、食べごたえ抜群でした。
スペインのご飯は日本人好みとよく聞きますが、魚介+米を使ったパエリアはまさにドンズバのメニューですよね(小日向さんたちも現地で食べたんでしょうか)。

底のおこげもちゃんと出来ていました。
香ばしくて美味しいけど、こげを作りすぎると硬くて食べづらくなりそうなので、歯の弱い方はほどほどに焼きあがたほうがよいかもしれません。

そしてサイドメニューのグリーンサラダ。
メインのパエリアがカラフルなので、グリーン一色が逆に食卓に映えます。
手作りの玉ねぎドレッシングは、市販で500円以上する「ちょっといいドレッシングの味」がします。身近な材料だけでたっぷり作れるし、味加減も自分好みに調整できるのがよいですね。
しかしシロさんが還暦……。
1巻当時は43歳の設定でしたもんね(気が付けば自分がその歳を超えてしまっていることにもびっくりしている…)。
表紙を見たときは「え、もしかして最終巻なの!?」と勘違いしてしまいましたが、今後も続くようでほっとしました。
大きなイベントがあっても(※ネタバレ避けるためぼかした書き方ですが…)、毎日の食卓のように人生はこれからも続く。20年連れ添った2人の今後がどう描かれるのか楽しみです(次はケンジの還暦イベントか…?)。
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コメント
コメント一覧 (8)
フタをしなくて~のくだり、清水義範の「12皿の特別料理」という料理小説集のパエリア(作中ではパエーリヤ)の主人公が、まさしくコシヒカリを洗って入れた上に蓋をして過熱してしまい――、という展開なので、フフッとなってしまいました。
774さん
おお、面白そうな小説ですね。
やっぱり洗ったり蓋するのはダメなのか〜。
教えてくださってありがとうございます、機会があったら読んでみます!
774さん
確かに今回調理してみて、でっかい調理器具で豪快に作るのに向いてそうだな~!と実感しました(でっかいパエリア、食べてみたい…!)。
今回はレシピ見つつ緊張しながらでしたが、場数踏んで慣れてきたら、冷蔵庫の余り物の材料とかぶっこむような雑なパエリアとか作ってみたいですw
同じく表紙を見て「最終回か!?」と早まってしまいました。
覚悟を決めて読んで、よかった二人の物語はこれからも続くのだと安心した覚えがあります。
ボリュームたっぷりのパエリア美味しそうです。
ドレッシングを私も作ってみましたがいつもよりワンランク上の味がしました。
きらさん
はじめまして、コメントいただきありがとうございます!
自分も末尾に次巻予告がちゃんと載ってて安心しましたw
でも逆に、こんなすばらしいエピソードが途中で挟まるとなると、よしなが先生はいずれ迎える最終回は何をもってくるんだろう…!?!?と今からドキドキしてしまいます。
ドレッシング、ちゃんと煮詰めるだけあって玉ねぎの甘みが美味しいですよね!
パエリアの上にドンとおかれた魚介を見るだけでウキウキになりますね。
蓋をせずに蒸さないのは東南アジアの湯取り方を想像させますが、こちらは湯を入れ替えずそのまま煮上げているので根本的にコメの扱い方が違うんだなと。
パエリアのお米は、本場スペインではボンバ米という地元のお米だそうです。
日本と似た短粒種のお米ですが粘り気や水分が少なく、スープをたっぷり吸い込むリゾットやパエリアに向いたお米みたいですね。
日本で作る場合は粘りの少ないササニシキなどが向いているのかも?
まーむさん
赤海老はけっこうお手頃価格で売られているのに、家庭料理に使うと「外食で食べたら高そう…!」という見栄えになるのが嬉しいですw
やはり本場では米の品種が違うんですね。
カルディにリゾット用の輸入米が売ってたので、今度はそれでチャレンジしてみたい…!