先日のお知らせで、「ダンジョン飯」のアニメガイド本のレシピ6品を担当したと書きました。
あれをやりとげた今なら、長年の夢だったあのメニューも勢いで再現できるのでは…?と思い立ち、作ってみたのが2巻に登場する「宝虫のおやつ」シリーズです。
※【コマ引用】「ダンジョン飯」(九井諒子/KADOKAWA)2巻より
ダンジョンの冒険者たちが求める金銀財宝。
しかしコインや宝石と思われたものは、実はダンジョンに巣食う昆虫系の魔物「宝虫」。欲に目が眩んだ冒険者たちを油断させたところを攻撃する、というなかなか厄介なやつらで、カブルーたちのパーティーが全滅した原因にもなりました。
センシがこの宝虫を使って作ったスイーツは、数ある魔物料理の中でもインパクトのある一品ですが、先日放送されたアニメで版は色彩豊かに描かれて、さらに強く印象に残りました。
アニメ版の料理のフードデザイン(カラースクリプト)を担当されたのは、フードイラストで世界的に有名なもみじ真魚さん。美味しそうなはずだ…!
TVアニメ【#ダンジョン飯 】〈第5話〉「宝虫の巣のジャム」のカラースクリプトです。
— もみじ真魚@ TVアニメ「ダンジョン飯」フードデザイン(カラースクリプト)担当 (@mamomiji) February 23, 2024
宝石みたいだけど食べれそうな、しっかり噛み切れそうな質感&美しさを意識して作画しました。液体部分も美しい色が溶け合うように意識、私も是非パンに挟んで食べたい一品です。 https://t.co/W7itaP4u8H pic.twitter.com/t7cZVIgnIC
調理計画はこんな感じでいきます(ポンチ絵)。
・宝虫の巣のジャム
ライオスがパンにはさんで食べるシーンがあったことを考えると、固いキャンディよりはやわらかい食感のものがよいかもしれない。今回はゼリーやグミをイメージして作ることに。
(琥珀糖もよいな~と迷ったものの、寒天は砂糖をたくさん入れないと透明感が出ない&乾燥させる工程があり時間がかかるので今回は見送りに)
・コイン虫のせんべい
チルチャックのセリフに「小魚の味がする」とあるので、海老せんべいっぽくするのはどうかしら(にぼしだと色が黒くなりそうだし)。ただのせんべいより洋風に寄せたほうが架空のお菓子らしさが出るので、海老味のクラッカーにしてみる。
・真珠ムカデの串焼き
マルシルが「とろっとした食感」にトラウマを抱くシーンが描かれていたので、私の中では読んだときからなんとなく「タピオカ」のイメージでした。
ではそれぞれ作っていきましょう。
↑レシピの動画版はこちらからどうぞ。
■宝虫の巣のジャム
材料:(※分量は参考まで)
・お好きなジュース(着色するので無色のものがおすすめ。甘い天然水シリーズとか) 200ccくらい
・粉ゼラチン 20g
・食紅各種
手作りグミのレシピを調べてみたら、基本は「ゼラチンの分量を多めにしたゼリー」みたいな感じでできるらしい(市販のグミのような食感にするには、水飴を使ったりいろいろ工夫の余地があるようですが)。
お菓子作り苦手勢なので、できるだけシンプルなレシピでいっておこう。
実は以前から「宝虫作れないかな…」と思い、調理道具だけ色々各方面で探していたのでした。
7年前くらい前に買った宝石の製菓型がついに活躍するときがきたで…!
↓同じ商品はもうネットで見当たらなかったけど、こういう感じのやつです。
小鍋にジュース(200cc)を入れ(お好みで砂糖も追加)て火にかけ、60度程度に冷めたら粉ゼラチン(20g)を投入してよく混ぜる。
食紅をごく少量の湯で溶き、ゼラチン液を混ぜて型に流し入れていく。
型には少量のサラダ油を塗っておくと、あとで外しやすいです。
ゼラチン液は冷えると固まっちゃいますが、軽くレンジにかければまた液体に戻ります。
色んな色を作ってみた。
(緑だけなんか変な色になったな…)
型のなかである程度固まったら、冷蔵庫へ。
しっかり冷えたら取り出します。
うおお、ときめくビジュアル……。
キラキラしたもの見るのはやっぱり楽しいですよね(グミだけど)。
深夜番組の「麗しの宝石ショッピング」もつい見ちゃうもんな。
緩衝材(?)として、クラッシュゼリーも作っておきます。
残ったゼラチン液を薄めに着色して、冷え固まったらフォークで混ぜるだけ。
煮沸消毒したガラス瓶に、クラッシュゼリーとグミを重ね入れます。
グミは瓶の側面にあわせて入れると、きれいに見えます。
こんなかわいいピンクのアラザンもあったので入れてみる。
(あと、後で出てくるタピオカの余ったやつも入れた)
ラッピングしたら宝虫の巣のジャムの完成!
予想した以上に宝石っぽい!
サン宝石っぽい!
■コイン虫のせんべい
材料:
・薄力粉 100g
・乾燥小エビを粉末状にしたもの 大さじ1~2
・オリーブオイル 大さじ2
・塩 ひとつまみ
・水 大さじ2.5
ボウルに薄力粉と粉末小エビを混ぜ、水を加えて混ぜ、途中でオリーブオイルと塩も投入。
なめらかになるまでよくこねたら生地をまとめ、ラップして30分ほど置く。
寝かせた生地を薄く伸ばす。
実はコインの製菓型も入手していたのですが、これはおそらくチョコレート用で耐熱温度が低いやつなので、焼き型としてオーブンには突っ込めません。
(焼き菓子用のコイン型って、意外と見当たらないのよね…)
生地を押し付けてみたものの、コインの模様がきれいに出ないのでうまくいかなさそう。
そこで使ってみるのが、こちら。
ローマ帝国のアウレウス金貨、のレプリカです。Amazonで1500円くらい。
レプリカとはいえ、お金をこんなお菓子作りに使ってすまない…。
円形の抜型で生地をくり抜いたら…
レプリカのコインをぎゅっと押し付けて鋳造していきます。
なんとなく薄くコインの模様が出ています。
180度に予熱したオーブンで、20分ほど焼きます。
焼き上がりはこんな感じ。
焼成中に記事が少しふくらんでしまうので、コインの模様は結局きれいに出なかった…。
でも全体のフォルムはなんとかコインっぽくなったので、まあよいか。
フライパンに油を入れて熱し、コインせんべいをさっと炒める。
(味の面ではこの工程別になくてもいいですが、センシの調理シーンを真似できるのでお好みで)
コイン虫せんべいの完成!
■真珠ムカデの串焼き
いよいよラストです。
前述のように、タピオカを使います。
タピオカを袋の表示通り(50分ほど)茹でます。
茹でたやつ。
茹でたタピオカを、竹串に一粒ずつ刺していきます。
なにげに今回の3品の工程のなかで、一番苦労したのがここかもしれない。
小サイズのタピオカを使ったのと、やや芯が残った状態で茹で上がったので、竹串をなかなかきれいに通ってくれないのです。大きいサイズのタピオカを使えばもうちょっと楽に作業できたかもしれない。
それから、最後に宝虫の巣のジャムをはさんで食べる用のバンズも用意しておきましょう。
市販のバーガー用バンズがあればそれでよさそうですが、甘いものを挟むので今回はブリオッシュ生地で焼いてみました。
宝虫のおやつ3種が揃いました!
真珠ムカデの串は謎の力学で立たせています。
(撮影中に何度か倒れてタピオカ粒が失われた)
バンズに宝虫ジャムを挟みます。
宝虫バーガーの完成。
自分で作っておきながらですが、食べ物と思えないほどキラキラ!
食べた感想:
宝虫はグミというより、固めのゼリーのような食感になりましたが、その分パンになじんで食べやすい。
安価なジャムのなかにはペクチンでゼリーのようになってるものがありますが、それと似た感じと思えば、パンに合わないわけはない。
もちろん普通のゼリーとしても食べられます。
お次はコイン虫せんべい。
市販の素焼きクラッカーと同じ味ですが海老の風味が加わって、作中のチルチャック同様、一度食べると手が止まらない。味の面で、今回一番のお気に入りはこれかも!
どうせなら、黄色く着色してゴールド感を出してもよかったかもしれない。
実はクラッカーではなく、せんべいで作ってみたパターンもあります。
上新粉をこねて茹でて、さらにこねて成形して…と手間がかかるのと、乾燥させるのが難しく仕上がりにバラつきが出るので、個人的にはクラッカーがおすすめです。
最後に真珠ムカデの串焼き。
タピオカ茹でただけなので、タピオカ茹でただけの味がします(虚無)。
とろっとした食感に関しては、マルシルのトラウマが再現できたのではないでしょうか。
さらに手間かけるなら、シロップ漬けにして、仕上げにバーナーで炙ってもよかったかもしれない。
コミックが出てから約9年越し!に、「宝虫のおやつ」を食べる夢がかなって嬉しい。
みんなの欲を掻き立てる宝石と、世間で嫌われがちな昆虫との対比を感じられるお菓子。でも一方で、芋虫に見とれていたファリンのように、昆虫に宝石のような美しさを見出す人もいるのですよね。
再現してみて、九井先生の豊かなイマジネーションの魅力を再認識しました。
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コメント
コメント一覧 (14)
宝虫バーガーの完成度にとうとう我慢できなくてコメントしてしまいました。
「美味しそう」に加えて「楽しい」ところが漫画飯に嵌まった切っ掛けです。
これ作ってみたい、食べてみたい、何これと思ってた料理がことごとくこちらで再現されていて食べた気になっています。
美味しんぼのローピン、海街diaryのしらすトースト、天国大魔境のヨーパン汁、おいしい関係のいもグラタン、…すぎなレボリューションのナスキャビディップetc、まさかスーパー食いしん坊の涼味弁当まで再現しておられたとは!
興味なかった漫画もこちらで紹介されてると気になって読んでみたり(ドロヘドロしかり女の子の食卓しかり)
その他まだまだある私のココロの漫画飯もいつかは!と期待して待っています。
10年分のコメントが一気に溢れて長文スミマセン、細く長く続けて頂けたらと思います。
ひよこまめさん
すごくもったいないコメント、ありがとうございますmm
誰もが知る作品でなくても「同じファンの人に共感してもらえるといいな」「手に取るきっかけになるといいな」という気持ちで再現してきたので、めちゃめちゃ嬉しいです…!!
私もこのブログがきっかけで、皆さんに教えていただいた作品がたくさんあります。
最近はあまり更新ができず心苦しいのですが、無理なく続けていたらと思うので、ぜひ思い出した時にでも覗いてくださいませmm
武田壮介さん
ダンジョン飯ファンの方にご覧いただけて、こちらも嬉しいです!!
ダンジョン飯の再現は読む人によって、いろんな解釈ができるのが面白いですよね。
自分も試行錯誤しながらですが、再現したいものまだまだあるのでまた覗きにきていただければ嬉しいです~。
こういうの本気でやる人、尊敬します
しかも年々スキルがアップしとる
メ!さん
ありがとうございます!!
今も料理は「得意」まで言えないレベルなのですが、始めた当初に比べると「マシ」になりましたw
つっこんでいただきありがとうございますw
ほんとに謎のパワーバランスで立たせています…。
真珠ムカデが本当に真珠に見えて「何で作ってるの?飴細工?!」とわくわくしながら記事を読んだらなんとタピオカ!
タピオカってこんなに真珠っぽく見えるんだ~と驚きました。
宝石虫は琥珀糖かなと思いましたがこちらはグミ!その手があったか!
いつもながらさすがです。
この宝虫の軽食はアニメの感想を覗くと「虫は無理」「これは食えない」というものが多く意外でした。
本当の昆虫食(例えばフェモラータオオモモブトハムシクリームとサクラケムシのジャムのサンドイッチにカナブンの塩煎りを添えて、とか)とこの宝虫軽食だったら私は迷いなく宝虫を選びます。
食べられるコインに宝石なんて、子供心がくすぐられるどころじゃないじゃないすか(笑)
あとこのアニメにフードスタイリストさんがついていることに今更ながら驚いて納得して、です(笑)
フードスタイリストさんのお仕事って幅広いんだなぁ(笑)
麻さん
宝虫のスイーツ、人によっていろんな解釈ができるのが楽しいですよね!
真珠ムカデは自分は最初読んだときから「タピオカ」のイメージだったんですが、白玉だんごなどをイメージしていた方も多くて、「なるほどな~!」と感じました。
私もリアル昆虫食は得意なほうじゃないですが、ダンジョン飯のはファンタジーとしての味付けが絶妙なせいか、麻さんと同じく「食べたい」が上回った派です。
アニメ版はほんとに配色がきれいで、さらに魅力的に感じましたね!
ななしさん
確かに焼きごてとかあれば、もっとはっきり模様をつけられたかも…!
コイン型のクッキー型が意外なほど市販にないので(あってもサイズが大きすぎたり)、シリコンで型取りしてオリジナルで作ろうかしら…と迷ったりしてました;
作中では昆虫食的な立ち位置でしたが、宝石部分がゼリーになっていたり、コインの煎餅はエビの味だったり、真珠ムカデの串焼きはタピオカを使ったり........あぁ、食べたくなってきました!!
宝虫って、ファンタジーありそうでなかった存在だったので、初めて宝虫の回を読んだ時は目から鱗でした!!
本当に九井諒子先生の想像力は凄すぎる.....
cocoaさん
こちらこそご覧いただきありがとうございます!
九井先生の食べ物はファンタジーの想像力だけではなく、「現実にありそう」と思わせるロジックがあるのが魅力ですよね。昆虫食ブームのときに無印で「コオロギせんべい」が出て、コイン虫のやつだ…!と感動しましたw