main

藤子不二雄先生の時代から、子どものもとに居候としてやってくる異界の生物、というのはマンガにおいておなじみの設定。

紺野アキラ先生「クジマ歌えば家ほろろ」も、ロシアからやってきた謎の怪鳥・クジマと主人公の中学生・新(あらた)の交流を描く作品です。

クジマは、オバQのようないわゆる「ごくつぶし」的なゆる食客。傍若無人でマイペース、怒るとロシア語で一方的にまくしたててくるようなキャラ。一方で新は、読むたびに「ええ子や…」とホロリとしてしまうくらい、ピュアピュアな少年。




新には、浪人生の兄・英(すぐる)がいます。英が受験に失敗したことで、家族の雰囲気は以前よりどこかぎこちなくなってしまったよう。

そんななかでもクジマは、誰にも気を使わず家庭内でやりたい放題。でもだからこそ、ぎくしゃくした停滞感を打ち壊せるのかもしれません。クジマがきたことで、新はもちろん家族にも変化が生まれます。

2巻では、新がクジマのためにロシア料理・ボルシチを作るエピソードが登場します。

koma
※【コマ引用】「クジマ歌えば家ほろろ」(紺野アキラ/小学館)2巻より

牛肉、キャベツ、玉ねぎ、にんじん……食材をいろいろ揃えますが、ボルシチの根幹をなす「あの食材」が手に入らなかったことで、悲劇が起こります。

新が買ってきたのは、ビーツではなく「ラディッシュ」。外側が赤いので、代用できると勘違いしてしまったよう。確かにビーツって、普通のスーパーだとあんまり売ってないもんね……。

しかしビーツなしのボルシチがうまくいくはずもなく、途中味見をして自ら「失敗」を悟った新が手にしたのは……煮込み料理失敗時の万能薬・カレールー。さすがにそれはないだろ、とキレたクジマは…。


クジマは「ごくつぶし」とか書いてしまったけど(殴りかかられそう)、実は料理が得意な一面も持っていて、作中にも彼が作る美味しそうなロシア料理がたびたび登場します。

読んでいると食べたくなってしまうのですが、新が失敗したこのラディッシュカレーも気になるところ。

途中までは材料は一緒だし、二毛作でどちらも作って食べられるのでは…?と思い立ち、再現してみることに(※作品を紹介したいだけともいう)。


P1290101
まずはカレーとボルシチ、共通の食材から。

材料:(※分量は参考まで/カレー4人分+ボルシチ4人分くらい)
・牛切り落とし肉(500g)
・玉ねぎ(1個)
・じゃがいも(2個)
・キャベツ(1/4)
・にんじん(1本)
・にんにく(1かけ)
・トマト缶(1缶)
・コンソメキューブ(2個)
・ローリエ(2枚)
・カレールー(適量)
・サラダ油(適量)

P1290102
上記に加え、
・カレー用:ラディッシュ(1袋)
・ボルシチ用:ビーツ(1個)
を用意します。

ビーツは最近、大きいスーパーだと国産品が入手しやすかったりしますね(夏と冬が旬らしい)。
もし生のビーツが手に入らなければ、缶詰でもいいかもしれません。




P1290109
じゃがいもとニンジンは1cm程度の角切り、玉ねぎは薄切り、キャベツは太めの千切りに。
にんにくはみじん切りににしておきます。

P1290125
ラディッシュを切ってみる。

中が……赤くない…!!!?
koma5
※【コマ引用】「クジマ歌えば家ほろろ」(紺野アキラ/小学館)2巻より

(だってラディッシュだもの……)

ボルシチが絶望的なことを悟ったクジマですが、新のためを思い、だまってそのまま調理を見届けようとする姿に、「彼にも人(人?)の心があったんやな…」となるシーンです。

P1290111
ボルシチ用のビーツは皮をむき、角切りにしてみた(短冊にした方が火が通りやすかったかもしれん)。
ビーツは当然ながらちゃんと中まで赤いヨ!

P1290113
厚手の鍋にサラダ油を熱し、みじん切りにしたにんにくを炒め、香りが出たら牛肉を投入。
さっと炒める。

ビーツ&ラディッシュ以外の野菜を投入し、しんなりするまで炒める。
P1290119
ここで鍋をふたつに分け、それぞれ水(各鍋に500ccずつ)をそそぎ、トマト缶を半分ずつ、さらにコンソメキューブとローリエを加えて煮込む。

P1290129
カレーの鍋にはラディッシュを加える。

味見をすると、コンソメのおかげでなんとか「肉と野菜を煮込んだスープ」感は出てるものの、やはりボルシチっぽさは皆無。
P1290219
失敗した料理はカレールーを入れれば、8割がたどうにかなる(経験則)。

P1290221

P1290223
無事カレーになりました。

P1290225
ボルシチになるはずだったラディッシュカレーです。

P1290240

食べた感想:
普通に美味しいビーフカレーです。
ラディッシュ、煮込むと外皮の赤い色が抜けちゃうのね。ただのかわいいミニ大根になりました…。
そういえば昔、カレーに大根を入れるのにハマったことがあったなと思い出した。


さて、新が無事ビーツを手に入れていた場合の世界線にいってみましょう。
koma2
※【コマ引用】「クジマ歌えば家ほろろ」(紺野アキラ/小学館)2巻より

こちらがビーツを入れた鍋。
P1290127
目も冴える赤さ。

P1290133
新のセリフには「15分煮込む」とあるけれど、ビーツは沸騰させて煮込むと色が抜けてしまうらしいので、弱火で煮込んでいたら意外と時間がかかってしまった(30分以上煮込んだかも)。

P1290134
サワークリームと(あれば)ディルをのせる。
黒パンがあれば添えると、気分が出ます。

P1290157

食べた感想:
ご覧の通り、2種類のカレールーを入れる前の工程の違いは、ビーツの有無のみ。

果たしてビーツだけでそんなに味が変わるんだろうか…というのが疑問だったのですが、食べ比べてみると、ビーツを入れたものはしっかり「ボルシチの味」。当然といえば当然だけど、なんだか不思議です。

ビーツは「砂糖大根」の仲間と言われるだけあって、食感は固めの大根だけど、味が濃く甘みがあります。やはり只者ではない野菜。

作中ではクジマが作るロシア料理が他にもちょくちょく登場するので、また何か再現してみたいです。




 
▽X(@pootan)はこちら


▽Instagram(@mangashokudo)はこちら
instagram_bn


▽Threads
(@mangashokudo)はこちら
https://www.threads.net/@mangashokudo


▽YouTubeはこちら