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かわいい異星人のほろ苦い移民生活を描いた「バクちゃん」が話題となった増村十七先生。

最新作「花四段といっしょ」のテーマは「将棋」。といっても、棋士のバチバチの対局を描く作品ではありません。

C級2組に在籍する花つみれ四段を主人公に、プロ棋士の日常を描いた、ゆる将棋漫画。将棋に詳しくなくても楽しめます。

花四段といっしょ(1) (ソノラマ+コミックス)
増村 十七
朝日新聞出版
2022-06-07

 

一見クールな花四段ですが、対局相手が落とした高級ブランド財布に心をざわつかせたり、そこからYouTuberの収入に思いをめぐらせたり……と、彼の脳内はいつも雑念にあふれてにぎやか。スマートに見えて意外と不器用だったり、トラブルに巻き込まれがちだったり、そのギャップを見るうちに花四段のファンになってしまうはず。

さて対局といえば、よく話題になるのが休憩時間の棋士の食事。いわゆる「将棋めし」(同名のグルメ漫画もありますね)。

その悲喜こもごもが描かれるのが、第3話の「ご飯の時間」のエピソードです。

花四段は自分の持ち時間を使ってでも、昼食選びに「長考」するタイプ。そのメニュー選定は、ほかの棋士からも一目置かれるほどのセンスのようです。

この日も注文をとるバイトの男性がしびれを切らすのを後目に長考し、一度は「親子丼」に決めかけたものの、苦手な椎茸が入っていることに気づき却下。

最終的に、この日の対局相手の灘六段が「他人丼」を注文していたことを思い出し、同じものを注文します。

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※【コマ引用】「花四段といっしょ」(増村十七/朝日新聞出版)1巻より

「他人丼」と聞いて、「ああ、あれか」と思う人もいれば「なんだそれは」という人もいるのでは。作中にも説明がありますが、牛肉や豚肉を卵でとじた丼もののこと。鶏肉と卵の「親子」丼をもじったネーミングというわけです。

他人丼は西日本ではわりとおなじみですが、関東では「開化丼」という名称で呼ばれる場合もあるらしい(しかし関西から関東に移り住んで20年になりますが、いまだに飲食店では目にしたことないな…)。

この他人丼、花四段はさらにこだわりのカスタマイズを加えてオーダーします。

・ご飯は十六穀米
・お味噌汁はあさり汁に替えて
・追加でみょうがの甘酢漬け

オプションまで加えることで、灘六段よりも「気分的に優位」に立つという作戦。


しかしこのこだわりの昼食プランが思わぬ事態を呼び起こし、悲劇的な結末を迎えることに……(オチはぜひ作品をご覧ください)。

花四段が結局食べられなかったこの「他人丼」、せっかくなので再現することにしました。


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材料(2人分)
・牛薄切り肉(ちょっといいお肉で) 120g
・たまご 2個
・玉ねぎ 1/4個
・三つ葉 適量
・十六穀米(※ご飯2合に対し大さじ1入れて炊く)
・みりん 大さじ2
・日本酒 大さじ1
・砂糖 小さじ1
・醤油 大さじ2
・だし 120cc

たくさん市販されている雑穀米の中で、「十六穀」に絞って探すのは初めての経験でございました。

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小鍋や小さいフライパンにだし、日本酒、みりん、しょうゆ、砂糖、玉ねぎを入れて煮立たせる。

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玉ねぎに火が通ったら牛肉をほぐして加え、火が通るまで煮る。

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溶き卵の半量をまわし入れる。

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フタをして火を通し、

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フタをあけて残りの溶き卵と三つ葉を加え、再度フタをして加熱し、半熟状に仕上げる。
「何食べ」の親子丼のテクニックを流用してみた)

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十六穀米も炊けました。

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丼ぶりによそって、フライパンの具を乗せたら完成です。

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あさりの味噌汁、みょうがの甘酢漬けを添えたら、「花四段が食べたかった他人丼」の完成。

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ちょっと火を通し過ぎて半熟感が弱いのが反省点。

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食べた感想:
他人丼は西日本ではおなじみ、と先に書いてしまいましたが、思い返してみると、実は外食でも家でもあまり食べた記憶がない……。

外食なら親子丼のほうがメジャーだし、家で作るときも牛肉があればわざわざ卵でとじずに、牛丼や野菜炒めなどで食べたくなってしまうからでしょうか。

なので人生でもんのすごく久々に食べる気がしますが、牛肉を卵でとじた具は牛丼よりもやさしい味わいで、親子丼よりもリッチな気分になれて、「他人丼、いいじゃん」と見直してしまった。

例えばすき焼きの翌日、ちょっといい牛肉が中途半端に余った日なんかに、ちょうどいい献立になるかもしれない。

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あさり汁って、味噌汁の中でも位(くらい)がワンランク上、という感じがする。

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私も大好きなみょうがの甘酢漬け。
色合いもきれいで、オプションとしてテンションが上がります。

しかし目の前にすると、作中のあのシーンが蘇って笑えてしまう。


ここで終わらせてもよかったのですが、ついでに作ってしまったのが、花四段ががっかりしたバージョンの他人丼セット。
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あさりじゃない普通の味噌汁と、みょうがの甘酢漬けじゃない漬物。

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そして他人丼は、花四段が嫌いな椎茸入りです。
でも椎茸嫌いではない私にとっては、きのこの旨味も加わったし、卵の半熟の仕上がりもうまくいってしまったので、こちらに軍配が上がるかもしれない。

ちなみに棋士の食事については、こんな素敵なデータベースサイトもあるようです。


給食や病院の献立表とかずっと見ていられるタイプなので、このサイトも永遠に見てしまう……。


花四段といっしょ(1) (ソノラマ+コミックス)
増村 十七
朝日新聞出版
2022-06-07



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