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かつては日本の働く女性のメジャーな職業で、日常的な存在だったという「女中さん」。彼女たちの仕事とその生活を丁寧に描いたのが、長田佳奈先生の「うちの小さな女中さん」です。



時代は昭和初期。翻訳家として活躍する蓮見夫人の元に、彼女の叔父の紹介でやってきたのは、ハナと名乗る14歳の小さな女中さん。

当初聞いていたよりも幼い女中がやってきたことに戸惑う蓮見夫人でしたが、度がつくほど真面目で純粋なハナに、次第に妹のような愛情を抱いていきます。

戦前の小説を読むと「女中さん」が普通に出てくるけれど、アニメや漫画でイギリスのメイド文化が人気なことと比較すると、意外にもこれまであまりスポットが当たってこなかった存在かもしれません。

長田佳奈先生は、過去作の大正時代を舞台にしたオムニバス「こうふく画報」も素晴らしかったのですが、今作でもたくさんの資料をベースにした生活シーンが圧巻です。蓮見夫人が住む、いわゆる「文化住宅」と呼ばれるモダンな和洋折衷のお家、四季折々の家庭の仕事……。

そして何よりハナちゃんのかわいさ。普段が無表情なだけに、瓦斯(ガス)コンロや百貨店のクリームソーダなどを初めて体験した時の、隠せない驚きや喜びの顔はインパクト大で、読み終わるころには目が離せなくなるキャラクターになっているはず。

女中さん、という厨ごとと切り離せないテーマだけに、美味しそうなシーンもたくさん登場します。

今回再現するのは、2巻「洋食はじめ」のエピソードに登場する、牛肉ライスカレー

台所の引き出しから発掘された洋食のレシピ本をきっかけに、ハナちゃんと蓮見夫人が二人で台所に立って作るメニューです。
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※【コマ引用】「うちのちいさな女中さん」(長田佳奈/コアミックス)2巻より

蓮見夫人も子どもの頃に食べて、すっかり魅了されたというライスカレー。初めて作る洋食に、ハナちゃんも最初はとまどいつつも興味津々。


作り方はS&Bの赤缶を使った昭和のクラシックなカレーですが、何より、「ビーフカレー」ではなくて「牛肉ライスカレー」という言い回しが、食欲をそそります。

完成したライスカレーを二人で食べるシーンの、セリフなし、表情のやりとりだけで進むコマも必見。


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材料(2~3人分):※分量は想像なので参考まで

・牛肉(カレー用、もしくは塊肉を買って大き目にカット) 150~200g
 ※煮込み時間が少ないので、ここは奮発していいお肉を使うのがおすすめです
・玉ねぎ 中1個
・にんじん 1/3本
・じゃがいも 中1個
・バター 15g×2個
・S&Bカレー粉 大さじ1
・小麦粉 大さじ1.5
・だし 計450cc
・ウスターソース
・しょうゆ

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玉ねぎはくし切りにします。
分量の2/3(ルウ用)は薄切りに、1/3(具材用)は大き目のくし切りするのがおすすめ。

にんじんとじゃがいもは、1cm程度のさいの目切りにしておきます。

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フライパンにバター(15g)を熱し、玉ねぎの2/3(薄切りにしたもの)を加えて、弱火でじっくりきつね色になるまで炒めます。

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ここにカレー粉と小麦粉を入れてさらに炒め、だし(100ccくらい)を少しずつ加えて、もったりしたルウ状になるまでよく混ぜます。

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ルウが仕上がったら火を止めておきます。

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別の厚手の鍋にバター(15g)を入れ、牛肉を表面が色づくまで炒めます。
にんじん、じゃがいも、玉ねぎを加えて油がまわるまで炒めます。


だし(350cc)を加えて煮込みます。アクが出てきたら除いておきます。

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野菜が煮えたら、ルウを加えて混ぜ、弱火で30分煮込みます。

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全体にとろみがついたら、しょうゆとウスターソースを加えて味を調えます。
しょうゆとウスターソースは大さじ2ずつ加えて、味見をしながら調整してください。


ご飯と一緒に盛りつけて、牛肉ライスカレーの完成。
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もっと昭和っぽい黄色いカレーになるかと思いきや、仕上げに加えたウスターソースと醤油のおかげか、深い色に仕上がりました。

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ごろごろ牛肉がなんとも贅沢(奮発して国産牛使ったので、何気に材料費がすごいカレーになってしもうた…)。

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食べた感想:
小学校の調理実習ではじめて作った時のものを思わせる、シンプルなカレー。大き目の牛肉をゴロゴロと入れたので、贅沢なご馳走メニューっぽくなりました(そしてやっぱり高い国産牛だと、煮込み時間が短くても肉がやわらかくてうまい…)。

欧風カレーにスパイスカレー、令和の私たちのカレー舌もすっかり肥えてしまったけれど、やっぱり原点はこの「ライスカレー」なんだ、と気づく味。

素朴だけれどしっかり美味しくて、ハナちゃんの驚きと感激がわかる再現となりました。

カレーやオムライス、コロッケは今や家庭料理として一般的になったけれど、なかにはほぼ根付かなかったキテレツな洋食レシピも当時はあったようで……。エピソードの最後にちらりと登場した「干物のポテト詰め」「カステラのゼリー」、いったいどんな味なのか気になります。




長田先生は大正時代を舞台にしたオムニバス「こうふく画報」もおすすめです。




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