再現料理の記事で紹介しづらいおすすめマンガを紹介する「最近おもしろかったマンガ」というコーナーを、ブログの下のほうにこっそり置いていたのですが、更新作業にわりと手間がかかる仕様でおっつかなくなってきたので、1ページでまとめてみることにします。&ごくたまに御本をお送りいただくこともあるのですが、なかなか機会がなかったのでこちらでご紹介させていただきますmm 来年も面白いマンガに出会えますように!

(※最近読んだ順です)




「BEASTARS」の板垣巴留先生の、動物ではなく人間キャラによる学園モノ。「ボタボタ」に収録されていた「白ヒゲとボイン」の短編を膨らませたストーリー。「ボタボタ」もそうだったけど、設定がぶっとんでてどう転んでいくのか予測不能だけど、少年漫画らしいワクワク感も健在。巴留先生のキャラは動物だけでなく人間もセクシーだなあ。




「赤ちゃん本部長」「2DK」などで知られる竹内先生の「イケメンに会いに行く」エッセイシリーズ最新作。私は今作が初めてだったのですが、面白くて全シリーズ読んでしまった。アイドルとか握手会とか縁遠い世界だったけど、めちゃめちゃ楽しそうでうらやましい。今後アイドルにハマる日が来たら、臆さず流れに身を任せよう……。


ファッション!! 1 (文春e-book)
はるな 檸檬
文藝春秋
2021-09-22


ファッションを愛する男・開(かい)の前に現れた、新人デザイナー・ジャン。開は東京コレクションに挑戦するジャンをサポートするために奮闘するが、事態は思わぬ方向へ……。小さなショーでも莫大なお金がかかる、といったファッション業界の裏側も興味深いけれど、サイコパス的な人物に振り回される事件前夜ならではの、不穏な空気から目が離せない。




巨大組織・布袋組の組長には、美しい双子の息子がいる。従来のヤクザの伝統を重んじる琳と、サブカルをシノギにする革新的な塁。後継者にふさわしいのはどちらか。その選択を任された新人の塩田は、ふたりの抗争に巻き込まれていく。流麗な絵と、クセの強い変態キャラたちのギャップ。こういうぶっ飛んだヤクザ漫画が読みたかったんじゃ~~!!と叫びたいほど楽しい。




楳図かずお先生を思わせる端正な絵と、関西弁のギャップがツボに入るホラーギャグ漫画。ホラーシーンで入る「HEY!!」、オチの「THANK YOU!!」の英語など、独特のノリが好きです。あとスイカちゃんがかわいい。


悪いのはあなたです 1 (文春e-book)
ふせでぃ
文藝春秋
2021-09-30


【ご恵贈いただきました】
派遣切りにあった29歳のリコは、駅でヒールを折った際に助けられたイケメンと、一夜の関係を持つが……。かわいい女子とインモラルな恋愛の組み合わせは、昔の太田出版っぽさがあってドキドキしながら読んでしまう。「悪い」キャラしか出てこない男女関係のなかで、冒頭のシーンにつながる結末が気になる。




羽生生純先生といえば映画化もされた「恋の門」が有名ですが、実はこれが初めて読む作品。沖縄を舞台に、かつての人気漫画家と彼に再度作品を描かせたい編集者が、暴力の世界に身を投じていく。全5巻、最後まで読む手が止められないほど面白い。



鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟
卯月妙子
太田出版
2021-09-18


「人間仮免許」の卯月先生が20代で体験した精神病棟の入院生活。退院後にその体験をマンガに描き起こそうとするものの、ネームが進まない。「主観」で書けるブログにはいくらでもアウトプットできるのに。「漫画で描く時は、自分自身すら『第三者』として捉えなければ描けない」と気づき、それが出来ないことに絶望するシーンは胸が詰まると同時に、創作論として圧倒的だった。企画から20年近くを経て出版されたことに敬意しかない。




彼氏が欲しい女子高生・ショーコは、想像したものを透明な物体として実体化できる能力を持つクラスメイト・スイに出会う。ちょっと不思議な能力を持つ少女の友情物語…と思いきや、不穏な方向に転がっていく2巻から目が離せない。




元俳優のヒロトは、縁のあった老婦人から譲られた一軒家で暮らしている。そこで同居することになったのは、美大生になるため上京してきたいとこのなつみ。自由な大人と、新しい世界に一歩踏み出す少女の同居生活は、ゆるゆるキラキラしていて眩しい。ヒロトの友人・ヒデキがウザいのに憎めないキャラで好きです。



今夜すきやきだよ (バンチコミックス)
谷口菜津子
新潮社
2021-09-09


稼げるけど料理のできない女と、稼げないけど料理のできる女、補い合うふたりの理想のルームシェア生活。が、そこで閉じるユートピアに終わらない展開がほろ苦くも前向きで好きです。谷口先生の食べ物愛にあふれた絵も見ていて幸せ。



ネオ・キャット (FEEL COMICS)
青化
祥伝社
2021-09-08


スタイリッシュなのに癒やされる新感覚猫マンガ。独特のシュールな雰囲気がクセになります。猫のお顔がかわいいというより個性的なのもなんかいいのです。




【ご恵贈いただきました】
余命数年の宣告を受けた大学生・一花が、同じく病を抱える大学教師・萬木に恋をする。全力で気持ちをぶつける一花にとまどいながら、諦念とともにただ死を待つ萬木の心に変化が芽生えていく。カップルの両方が死を間近にしながらお互いを思って生きようとする設定が切ない。





川辺でただダベる男子高校生、瀬戸と内海の会話劇。やりとりが絶妙で飽きずに読み進めてしまう。最終巻はまさかの展開。話題になったアニメ「オッド・タクシー」の脚本も此元先生だったんですね。これも周囲からおすすめされるのでいずれ見てみたいな。




雁須磨子先生の最新作は、大家族もの。8人きょうだいの5番目の螢は、作家の親戚の家に通うことに。そこで知り合った編集者の男は、螢の兄とかつて友人だったようで……。上下巻で完結ですが、あまり深掘りされなかったキャラたちのエピソードももっと読みたいな〜。



奈良へ (トーチコミックス)
大山海
リイド社
2021-06-25


奈良に近いエリアの出身なので、ぶ厚い歴史の上に日常が成り立ち、壁一枚で「異世界」と繋がっているようなこの感じ、なんとなくわかるものがある。暗く乾いた筆致で描かれる奈良の風景に、そういえば笑い飯を生んだのもこの地だったな、と思う。





「一目置かれたい」気持ちが空回りして、クラスで浮いてしまっている主人公。そこに宇宙からの留学生がやってきて……。思春期の人間関係に、規格外の「宇宙人」が入ったときに起こる化学変化。ドロドロなスクールカーストものかと思いきや、ふわふわ・きらきらが散りばめられて最後はみんな愛しくなる。




孤独な中年男性・ナオキが、VRゲームで美少女アバターとして交流を深めた相手と、リアルで出会った先に芽生えた感情は……。メタバースのようなVRが一般化したあと、現実と仮想の自分、どちらがアイデンティティとして先行するんだろう。不思議な、でもワクワクするような未来への想像がかきたてられる。




アラフィフになってしまった伝説のV系バンドが挑む、加齢と老後への戦い。ボーカル・美獣さんの今後の夢が「70歳くらいまで病気一つせず健康に生きた上 ある日寝てる間に苦しまないまま突然死したい」というのがわかりみ強すぎて泣ける……。


ボタボタ
板垣巴留
日本文芸社
2021-04-08


主人公は「汚いもの」に触れると大量出血する特異体質の美女。体質を克服して愛を勝ち取るために、さまざまな男性と出会いを求めるが……。設定とビジュアルのインパクトがすごくて、BEASTARSの「動物モノ作家」のイメージを一発で裏切られました。「SANDA」のベースとなった短編「白ヒゲとボイン」も収録。


向井くんはすごい! 上 (ビームコミックス)
ももせ しゅうへい
KADOKAWA
2021-03-12


イケメンでスポーツもできる向井くんは、ゲイであることを公表している高校生。何かと目立つ彼の周囲には、さまざまな人々がさまざまな思惑を持って集まる。スクールカーストを描きつつ、まるでSNSの縮図を思わせる人間関係は生々しくてヒヤリとする。



愛され洋輔 (バーズコミックス)
いがわ うみこ
幻冬舎コミックス
2018-04-24


いがわうみこ先生、新刊出てないのかな……と思って探したら、あの「洋輔」が単行本になってた!(過去の短編集にも出てきたキャラだったのです) イラっとすること山の如しのイケメン・洋輔のエピソードがたっぷり読めて満足です。






「ウシジマくん」の真鍋先生の最新作の主人公は、アウトロー弁護士。ちょっと戌亥を思わせる飄々としたキャラ。1巻を読むだけでも、今回もめちゃくちゃ取材されているんだろうな、と伝わってくる。




これまで意外とありそうでなかった「地理」をテーマにしたグルメマンガ。なぜその土地でその味が生まれたのか、ご当地グルメの地理的な背景を楽しく学べる。コロナ禍中ということもあり、旅心がくすぐられます。


竜女戦記 1
都留 泰作
平凡社
2020-05-22


ファンタジー世界に三国志とか戦国もののリアルさをぶっこんだ内容でめちゃめちゃ面白い。都留先生のインタビューで「和製ゲーム・オブ・スローンズ」をイメージした、という言葉がありましたが納得。というか、このマンガきっかけでアマプラでゲースロを一気見してハマりました。


転がる姉弟(1)
森つぶみ
ヒーローズ
2021-01-15

シングルファザーの父がシングルマザーと再婚し、「弟」ができた宇佐美。ワクワクする彼女の元にやってきたのは、思っていたのとなんか違う個性的な男の子。新しい家族にとまどいつつ、ゆっくり歩み寄っていくふたりが愛おしい。




第二次世界大戦後、分割占領でドイツのように東西に分裂した日本が舞台。東側の人民食堂で働くエミーリャの裏の顔は、西側への亡命を手助けする脱出請負人。「カレチ」の津久田先生ならではの人間ドラマは一話一話読みごたえあります。細かな設定のおかげで、もしかしたらありえた世界かも…とリアルに感じられる。毎回完売しているエミーリャの食堂のメニューが気になるw





「世界は寒い」で、一丁の銃をめぐる女子高生たちのヒリヒリする関係を描いた高野先生。今作は一転して、ほっとするオフィスコメディです。国民全員が何らかの「異能」を持つ世界。主人公の星野は「積んだ書類を崩さずに置ける」というしょうもない能力のほか、実はレア能力を持っていて……。一見すごい能力が実生活には何のメリットもなかったり、その人が経験で培ったスキルのほうが役に立ったり。身近な会社を舞台に、ちょい足しされたSF要素が楽しい。


喫茶アネモネ 1
柘植 文
東京新聞出版局
2021-03-10


東京新聞で柘植先生が連載してるなんて知らなかった。というか柘植先生の喫茶店マンガなんて最高に決まっとるじゃないですか…!「おせちの残りパフェ」はいつか再現してみたい。




疑いもなく信じていた常識を覆す「真実」に触れたとき、人はどうするのか。魚豊先生特有の理知的なセリフと、圧倒的な感情がほとばしるシーンの対比の素晴らしさ。巻をかさねるたびに面白さの重力も増していくよう。見上げた月に照らされているような構図の表紙も大好き。


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