2021年のマンガ大賞ノミネート時に一気読みした「SPY×FAMILY」にハマってしまったので、勢いで再現。5巻に登場するヨルさんの手作りシチューです。
舞台は東西冷戦を思わせる架空の世界。
西国の諜報員として活動するロイドは、変装の達人。東国の政治家の不穏な動きを探るために、「子持ちの父」として名門校に潜入するミッションを受ける。
まずは名門校の受験を突破するため、孤児院から少女・アーニャを引き取り、偶然知り合った事務員のヨルと結婚する。しかし実はアーニャは他人の心を読める超能力者で、ヨルは東国の殺し屋。互いの正体を隠したまま、彼らの「家族」としての生活が始まる……というストーリー。
全員が何らかの能力者というヒーローものであり、現代的な疑似家族ものであり、学園モノとしても楽しめるのが本作の魅力。なにより「スパイもの」としてもきっちり面白い!(読んでいると往年のスパイ映画のBGMが脳内に流れちゃいます)
さて、マンガのヒロインの料理の腕前といえば、「めちゃくちゃ美味い」と「めちゃくちゃ不味い」どちらかに振り切れるのが定石ですが、ヨルさんは……後者。作るものみな謎の物体と化す、期待を裏切らない飯マズ描写は必見です。
自分の腕に危機感を覚え、後輩・カミラの家で料理を教わることになったヨル。失敗続きのあと、母親の料理のことを思い出し、その味を(カミラに手取り足取り教えられながら)再現したのが、このシチューです。
※【コマ引用】「SPY×FAMILY」(遠藤達哉/集英社)5巻より
作中に描かれたシーンからその特徴をまとめると、
・シチューみたいなもの(カミラによれば「カンタンな南部シチューだと思う」)
・目玉焼きが乗っている
・パプリカパウダーを入れる
・味の決め手はサワークリーム
パプリカパウダーをたっぷり入れるシチュー料理といえば、ハンガリー料理の「グヤーシュ」が有名です。
でもグヤーシュに目玉焼きは乗ってなかったよなあ……と思って調べてみたところ、手がかりになりそうな料理を発見しました。
グヤーシュはハンガリーだけでなく東欧・中欧にかけて様々なバリエーションがあるようで、オーストリアのグヤーシュに、目玉焼きの乗ったタイプがあったのです(Herrengulasch、Fiakergulasch等と呼ばれているよう)。
これぞイメージにぴったりー!と勝手に興奮して、再現してみることにしました。
↑作り方は動画でもどうぞ。
材料:(4人前)
・仔牛肉 300g(なければシチュー用の牛肉や豚肉でOK) ・玉ねぎ 1個 ・トマト 2個 ・ニンジン 1/2本 ・セロリ 1/3本 ・マッシュルーム 5~6個 ・にんにく 1かけ ・ソーセージ 4本 ・パプリカパウダー 大さじ2 ・マジョラム 小さじ1/2 ・キャラウェイシード 小さじ1/2 ・コンソメキューブ 1個(水300~400ccで溶いておく) ・トマトペースト 大さじ1 ・サワークリーム 大さじ1.5 ・オリーブ油 適量 ・塩、コショウ 適量 (トッピング用) ・じゃがいも 人数分 ・卵 人数分
作り方:
トマトは湯むきし、ザルで裏ごししておく。
(作中でヨルさんが生トマトを買ってるので合わせましたが、面倒ならトマト缶でもOK)
玉ねぎ、ニンジン、セロリ、にんにくはみじん切り。
マッシュルームはスライスしておく。
ソーセージは小口切りにしておく。
仔牛肉はひと口大に切り、塩コショウ、ワインをひと回しして馴染ませる。表面に小麦粉を振ってさらに揉みこむ。
フライパンにオリーブオイルを熱し、仔牛肉を表面に焼き色がつくように炒める。
厚手の鍋にオリーブオイルを熱し、みじん切りした玉ねぎをきつね色になるまで炒める。
ニンジン、セロリ、にんにくを加えて炒め、パプリカパウダーを入れて馴染ませる。
焼いた仔牛肉、裏ごししたトマトを加え、キャラウェイシード、マジョラムを加える。
コンソメを溶かした水、マッシュルーム、ソーセージ、トマトペーストを加える。
煮立ったら弱火にしてアクをとり、フタをして1時間ほど煮込む(焦げないよう途中で鍋底をかき混ぜましょう)。
1時間煮込んだら、仕上げにサワークリームを加えて完成。
トマトクリームっぽいマイルドな見た目になります。
ここからは付け合わせの準備(シチューを煮込んでいる間に作っておく)。
じゃがいもは丸ごと柔らかくなるまで茹で、皮をむいておく。
フライパンにバターを熱し、目玉焼きを焼く。
シチュー皿に茹でたジャガイモ、シチュー、目玉焼きをトッピングして完成!
前も何かで書いたけど、世界名作劇場世代のせいか、シチュー料理というだけで「フィクションのご飯」感があって、テンションが上がってしまう。
目玉焼きはヨルさん感を出すためにあえてこんがり焦がしてみたけど、逆に美味しそうだな。
食べた感想:
トマトベースのシチューですが、仕上げのサワークリームのおかげでまろやか!
仔牛肉、ソーセージと具もごろごろ入っていて、食べごたえ抜群。パプリカパウダーは唐辛子から辛みを抜いたような風味はするものの、クセがないので誰でも食べやすいと思います。目玉焼きと一緒に食べるとさらに幸せ。
作中でも最初おびえていたロイド、アーニャが「おいしい!」と絶賛したこの料理。
普段の料理はロイドの担当ですが、「自分の思い出の味を相手に食べてもらうこと」は、3人の「家族」としての関係を深めるきっかけになったんだろうな、と思えるシーンでした。
しかしヨルさんのあの壊滅的な料理スキルから、この状態にまで持って行ったカミラさんスゴいのでは……。
さて、上で書いたとおり、オーストリアの「目玉焼き乗せグヤーシュ」の写真を見ると、なぜかタコさんウインナー風のトッピングが乗っているものも多いです。
ヨルとユーリの姉弟が食べた母親のシチュー皿のコマ絵にも、うっすらとタコさんウインナー風のものが描かれているのが見えませんか……?
※【コマ引用】「SPY×FAMILY」(遠藤達哉/集英社)5巻より
気になったので、母の味バージョンとして再現してみることにしました。
ソーセージは切り込みを入れてタコさん風に(しかしオーストリアではなんて呼んでるんでしょうねこれ)して焼く。
それからこちらは茹でじゃがいもではなく、ちょっとひと手間かけたじゃがいも団子(ポテトダンプリング)を付け合わせにしてみます(個人的に食べてみたかった)。
やわらかく茹でたジャガイモを皮をむいてマッシャーでつぶし、塩とナツメグ、溶き卵、小麦粉を入れてよく混ぜ合わせ、ボール状にまとめます。
沸騰したお湯に入れ、浮き上がってきたらフタをして10分。
(形が崩れてしまったので、お湯に入れる前に表面にも小麦粉をはたいたほうがよかったかも)
きれいに焼いた目玉焼き、タコさんウインナーを添えて完成。ちょっとお子様向け感が出たかも?
もちもちのポテトダンプリングとシチューの相性はばっちりで、ご飯やパン以外の付け合わせとして覚えておくと活躍してくれそうです。
コメント
コメント一覧 (8)
薫さん
嬉しいお言葉ありがとうございます!ぜひお試しください~~
いい作品描くのに鳴かず飛ばずでしょんぼりしながら応援してたけど、この作品でいきなり大ヒットで訳が分からないデビュー当時からの古参ファンです。
この作品に料理シーンなんてあったっけと思って見てみればそういえばありましたね、お料理回。カミラさんのツンデレっぷりが微笑ましい。
シチューというだけでわくわくする気持ち、分かります。
世界名作劇場で「白以外のシチューもある」と知りました。シチューが茶色いだけで異国情緒。
麻さん
おおお、デビュー当時からのファンとは…!それは胸アツですよね。アニメ化もするそうで楽しみです。
カミラさん、初期はいじわる姉さんだったのに、だんだんめっちゃいい人になっててにまにましちゃいますw
シチューは永遠に「世界名作劇場」感ある食べ物ですよね。ホワイトシチュー、ビーフシチュー以外のシチューはすべて異国情緒感じます。
なんていうかあの「グーラーシュ文化圏」のシチューってなんかこんな感じになりますが、喩えて言うなら「味噌汁が地方によって違う」感じなのかもですね。
「どの辺寄りなんだろう?」って考えながら作られてる感じがこれぞマンガ飯。
余談ですがタコさんウィンナーを考案されNHKのきょうの料理で披露された尚道子さんは琉球王国王族の末裔で、料理に鉄人の審査員でいらした岸朝子さんのお姉さん…っていうトリビアが、タコさんウィンナーから壮大に広がる感じで好きですw 東欧にも広がってるタコさん…!胸熱です。
あんこさん
グヤーシュ=味噌汁説、自分のなかですごくしっくりきましたw
そしてタコさんウインナーにそんなトリビアが…!
東欧のタコさんウインナーにもどんな背景があるのか気になります(というか、「タコ」と認識しているのかも気になりますw)。
ボルシチにしろ、ビーフストロガノフにしろサワークリームで味付けをきめますので
同時にどっかりと蒸したポテトが鎮座してたりソーセージが入ってる辺り、東西の境界線に相応しいなぁと
対立しあってる文化圏の料理文化が入り混じっている感じで微笑ましさと寂寥感を覚えました
まーむさん
東欧っぽい料理が登場するところが、リアルに東西冷戦の世界を想起させてくれますね。
グヤーシュにこんなに種類があるなんて、調べてみて初めて知りました。
アニメ化するそうなので、この料理がどんなビジュアルで出てくるのか楽しみです!