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昨年末に「イブニング」で最終回を迎えた「瑠璃と料理の王様と」。

「おせん」にも通じますが、料理だけでなく器の楽しみ方、ひいては日々の生活への美意識についても教えてくれる作品で、読むたびに心がシャキッとするようでした。




今回は3巻に登場する、瑠璃ちゃんの玉子かけご飯を再現。

「包丁王子」の異名を持つショウンナカムラと瑠璃が、「半熟玉子」をテーマに料理勝負をするエピソードに登場する料理です。

高級魚の鱧と半熟玉子をあわせた包丁王子のゴージャスな一品に対し、瑠璃が提示したのは土鍋で作る「究極の」玉子かけごはん

玉子かけごはんといえば生卵ですが、瑠璃は土鍋の力で玉子を半熟状態にすることで驚きの料理に仕上げます。

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※【コマ引用】「瑠璃と料理の王様と」(きくち正太/講談社)3巻より

瑠璃シリーズは、きくち正太先生の作品のなかでもレシピが細やかに描かれていて、挑戦しやすいのがうれしいポイント。

実は数年前に作ったもののうまくいかずお蔵入りにしていたのですが、最近あたらしい炊飯用の土鍋を買ったので再挑戦してみたくなったのでした。


(※分量は作品をご確認ください)
まずはご飯を炊きます。作中では土鍋になっていますが、炊飯器でもOKとのこと!

水加減は通常の1割増しで、30分以上浸しておくことも忘れずに。
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土鍋を中強火で火にかけ、吹いたら弱火に。
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土鍋から聞こえるぐつぐつ音が「ちりちり」にかわり、おせんべいのようなおこげの匂いがほんのりしたら火を止め、5分むらします。

(土鍋によってはメーカーが推奨する炊き方もあるので、そっちに従ってもいいかと思います)

用意する卵のうち、ひとつはそのまま取って置き、残りは軽くかき混ぜます。
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ご飯が炊けたら手早くしゃもじで返し、表面を平らにならして(←この工程忘れてボコボコになってしまった…)、中央にくぼみを作っておきます。
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溶き卵を全体に流し入れ、

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くぼみの部分に生卵を落とし入れます。

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このままフタをして5分。
土鍋の蓄熱効果はすごいので、このむらし時間で半熟状態に仕上げるようです。

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といっても、一般的にイメージする半熟玉子のように、白身が真っ白になるほど加熱は進みません。

フタを開けたときも「あれ、ほとんど生だし変化してなくない?」と思うくらいです。

これは瑠璃ちゃんに言わせると「温(あ)ったまった生」の状態。

中央の生卵をつぶしながらご飯全体をかき混ぜると、「生卵かけご飯」でも「卵チャーハン」でもない、まさに「半熟」と言えるご飯と卵の絡み具合になります。

(ただし混ぜすぎて粘り気が出すぎないように注意)
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よく知ってる食材を使った料理のはずなのに、どんな味なのか想像もつかない……というワクワク感。

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豆腐のお味噌汁とたたき胡瓜(作り方は後述)を添えて完成。

高価な食材は何も使っていないのに、どこかエレガントな一汁一菜。

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よそったご飯をよく見ると、全体はふんわりと卵色になりつつ、ところどころ黄身がしっかり絡んでいたりします。

まずはこのままひと口食べてみると、ふわっとした口当たりの良さにまず驚きます。

あかね先輩のセリフどおり、生卵かけごはんにつきものの、透明のぬるぬるした白身がほとんど気にならないのもびっくり(あの部分が苦手で卵かけご飯が食べられない家人も、「これは大丈夫」と申しておりました)。

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さらに味をパワーアップさせるのが、カツオ節。
写真では↑少量ですが、もっとわしっと乗せた方がよさそうです。

上から醤油をたらしてひと口食べれば、クールな川反女史がべらんめぇで取り乱したのもわかる美味しさ。

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今回は余裕がなかったので市販品ですが……作中のように掻き立てのカツオ節なら、さらに贅沢度も風味もアップするはず。

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余った卵かけご飯はラップにくるんで冷凍しておくと、チャーハンを作るときに使えて便利!(親子丼・オムライスに使うのも美味しいかも)


さて、ここからはお味噌汁と漬物のご紹介。
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豆腐が丸いのは、なんとお豆腐屋さんでバケツ売りしている型入れ前の豆腐を、アイスクリームディッシャーですくっているから。

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バケツ売りしている豆腐を探したけど見当たらなかったので、市販の深型の容器で売られている豆腐で代用しました。

小さ目のアイスクリームディッシャーなら、ひとすくい分くらいは丸く成形できます。

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味噌汁に入れて温め、豆腐を崩さないようにしてお椀に入れます。スプーンで上部に小さなくぼみを作り、そこにおろし生姜を乗せたら完成。

シンプルな豆腐の味噌汁なのに、くりんと丸い豆腐と生姜の風味で、まるで料亭で出てくるような上品なお椀に。

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玉子かけご飯を美味しくするもう一品が、このたたき胡瓜。

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きゅうりを塩麹と一緒にビニール袋に入れて一晩漬け、これを洗って袋に戻してたたきます。

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袋から出したら手でちぎり、梅酢、すりゴマであえて完成。
塩麹でパリッと漬かった食感と、梅酢の酸味で玉子かけご飯がさらに進んでしまいます。


最後にタネ明かしされますが、実はこの3品すべて「包丁を使わない」料理になっています。

これ見よがしに包丁のテクニックを誇示しなくても、美味しい料理はできる。

手段が目的化してしまった包丁王子の目を覚まさせたこの献立に、「実は包丁が苦手」な料理王國のNo.2、川反女史もほくそ笑んだようです。

この3巻あたりから、才色兼備・川反さんのチャーミングな面がどんどん出てきて、大好きになってしまうのです。彼女もハマった瑠璃ちゃん特製の豚角煮もいずれ作りたいなー。





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