
「このマンガがすごい2019」オトコ編で1位となり、話題となった石黒正数先生の「天国大魔境」。
当時はまだ1巻しか出ていなくて、その状況で1位をとるというのもすごいんですが、序盤だけにまだまだストーリーに謎が多かったのも事実。
実は私も、1巻以降は積読状態だったんです。
が、周囲から「めちゃくちゃ面白いですよ」と言われてあわてて最新刊の4巻まで読んだら、積読してた自分を呪いたくなるほど、めちゃくちゃ面白かったです……。やはり積読はいけない。重罪。
作品の舞台のひとつは、とある「大災害」が起こってから15年ほど経った日本。
人食いと呼ばれる怪物が跋扈する魔境化した世界で、赤髪の少女・キルコは美しい顔をした謎の少年・マルとともに、「天国」と呼ばれる場所を探して旅を続けている。
一方、並行してもうひとつの世界も描かれます。
さまざまな特殊能力を持つ子供たちが、外界と遮断され管理されている学園風の施設。ここで暮らすトキオは、テスト中に「外の世界」を暗示する謎のメッセージを受け取る。
「天国」と「大魔境」、ふたつの世界はどう関係しているのか。巻が進むごとに解き明かされる事実と、あらたに生まれる謎のバランスが絶妙で、ページを繰る手が止まらなくなります。
キルコとマルが旅する荒廃した世界では、その日の食料を手に入れるのもひと苦労。
かつての経済も流通もストップした世界では、「資源あさり」で廃墟から食料を調達するか、自給自足するしかないよう。
缶詰と雑草を煮たり釣った魚を食べたり、なかなかヘビーな食生活ですが、2巻にちょっと美味しそうな料理が登場しました。
資源あさりで見つけた、おそらく大災害前のものと思われるようかんと乾パン。
これを使ってキルコがこしらえたのが、ヨーパン汁。
名前のとおり「ようかんと乾パンを煮た物」で、マルから「ネーミングセンスがおわってる」とディスられつつも、その味は「売れる」と確信するほどの美味しさ。

※【コマ引用】「天国大魔境」(石黒正数/講談社)2巻より
ふたりが生きるのがあまりにもサバイバルな環境だけに、こんなシンプルな料理でも
「美味しいだろうなあ」
と実感できるシーンです。
作り方(ってほどでもないですが)は動画でもどうぞ。

材料はカンパン、本練ようかん。

こういうフルサイズのようかんって、最近はあんまり見かけないですよね。
近所のスーパーをめぐってようやく見つけました。
しかし作中のようかんは、大災害前の15年以上経っているもの。
キルコも「食えるのか……?」と躊躇するほどで、ガリっと齧るシーンからも、表面が乾燥してしまっている状態とわかります。

※【コマ引用】「天国大魔境」(石黒正数/講談社)2巻より
さらに調べてみたら、ようかんの表面をあえて糖化させてシャリシャリ感を楽しむ食べ方もあるんだとか。
ちょっと面白そう…と興味が沸いて、自作できるか試してみました。
夏場なので冷蔵庫で乾燥させてみます。

せっかくの美味しいようかんをいじめているようでちょっと心苦しい…(あと衛生的にどうかと思うのでマネしないほうがいいかも)。
しかし……数週間ラップなしで放置してみても、ようかんはツヤツヤのまま。

YouTubeでいただいたコメントによると、和菓子屋さんで売られている昔ながらのようかんなら乾燥するのでは……とのこと(情報ありがたや)。
うーん、冬場にまた試してみよう。

さて気を取り直して、ようかんを薄くスライス。

小鍋に入れて水をひたひたに注ぎます。
(このあと加水しながら煮るので適当でOK)
家のなかで調理してもあんまり気分が出ないので、屋外でやってみる(暑い)。

鍋を火にかけ、ようかんを溶かしていきます。
カンパン缶のなかに氷砂糖が入っていたので、なんとなく一緒に煮てみる。
(なぜ氷砂糖が入ってるんだろう……と謎だったのですが、調べたら「カンパンは口のなかの水分が奪われるので、氷砂糖をなめて唾液が出やすくする」ためなんだそう。へ~!)
カンパンを入れてさっと煮たら、ひとまず最初の試食。

カンパンのサクサク感と、さらっとしたお汁粉の相性が楽しめるスイーツ。
正直想像どおりの味ですが、あんな過酷な生活をするキルコとマルなら、これは絶品と感じるのもよくわかる。
作中のコマを見るとドロッとした形状だったので、もっと煮込んだバージョンも試してみます。
しかしさすが防災食品。
カンパンがなかなかやわらかく煮えません。
加水しつつ30分以上煮込んで、ようやくお麩のような形状になりました。

汁粉もカンパンもドロドロです。

カンパンがふわふわのお麩のようになって、「よう噛んで」食べなくても大丈夫。
こちらのほうがお汁粉感は出たかもしれない。
(ちなみにしばらく置いて冷えると、水ようかんのようになります)
食べるシーンがなにかとインパクトのある「大魔境」側と比べて、トキオたちが暮らす「天国」側の食事は、無機質であまり印象に残らないのも示唆的です。
ふたつの世界が邂逅するとき、何が起きるのか。
これからますます面白くなる予感しかありません。
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