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てだれもんら 1 (ビームコミックス)
中野 シズカ
KADOKAWA
2019-09-12


手前ども 手遊びにあらず
憚(はばか)りながら

冒頭のこのモノローグから職人たちのパリッとした矜持にしびれる、中野シズカ先生の「てだれもんら」。

内容をひとことで言うと、
庭師×板前。
職人×ファンタジー。


小さな造園会社で働く庭師の明と、元ヤン(?)の割烹板前のトオル。

別々の世界でプロとして働くふたりは、週末にご飯を一緒に食べて過ごす仲。寡黙な明にトオルはひそかに特別な感情を抱くも、ポーカーフェイスな彼の一挙一動に振り回されがちな日々。

そんなほのぼの職人モノBLと思いきや、もうひとつ仕掛けあるのがユニークなところ。

実は明は、庭に潜む「禍つ怪」を退治する能力を持つ、特別な庭師。
普通の庭師では手に負えない相手たちと日夜人知れず対峙しているのです。

法被に手ぬぐい姿の庭師が、日本庭園を舞台に竹ぼうきでモノノケと派手に戦う……そんな和風ファンタジー要素も見どころです。

あと何より魅力なのが、独特のタッチの絵。
中野先生の作品は、コミック・ビームの短編「庭師の仕事」で初めて読んだのですが(※短編集「にわにはににん」に収録されています)、そのときも漫画の「モノトーンの制約」を逆手にとるような誌面の美しさにびっくりしたのを覚えています。

「てだれもんら」でもその絵の魅力は引き継がれていて、鬱蒼とした夜の庭園、日本家屋、トオルが作る美味しそうな料理の数々……白黒なのに、豊かな色彩を感じてしまうほどで見入ってしまう。

今回は、作中に登場する夏にぴったりの一品を再現してみました。

トオルが小料理屋のまかないに作った、冬瓜と鶏団子と春雨のスープ

冷蔵庫でひと晩冷やし、煮汁を吸った春雨や冬瓜がひんやりと美味しそう。鶏団子はシソ入り、というのも夏らしくてそそられます。
(↓のコマの絵を見ていただいてもわかるとおり、ほんとに料理の絵も独特の美しさ)

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※【コマ引用】「てだれもんら」(中野シズカ/KADOKAWA)1巻より

見た目は元ヤンでも料理の腕は確かで、このまかないも職場の仲間に絶賛されたトオル。
食べさせてあげたいな」と真っ先に思い浮かんだのは、もちろん明の顔だったようです。

かつてルミネの広告に「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」という名コピーがありましたが、料理を作った時に思い出す顔もまたそうなのかも。

しかし和食のプロのトオルと比べ、私はただの素人。
自己流で作るとただの家庭料理っぽくなっちゃいそう……と思い、プロの和食のレシピをいろいろ参考にしつつ再現してみることにしました。

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材料
・ミニ冬瓜 1/4個分
・おくら 4~5本
・乾燥春雨 20~30g(熱湯でもどしておく)
・だし 500cc
・酒 大さじ1
・しょうゆ 大さじ2
・みりん 大さじ2
・塩 小さじ1
・砂糖 小さじ1

<鶏団子の材料>
・鶏ひき肉(ささみなどなるべく脂肪分が入っていないもの) 150~200g
・大葉 7~8枚
・溶き卵 1/2個分
・しょうが 1かけ(すりおろす)
・みりん 大さじ1
・しょうゆ 大さじ1
・塩 少々


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作り方:
冬瓜はわたを取り除き、緑の皮をピーラーで薄く剥く(緑をもっと鮮やかに残したい場合は、ヘラなどでこそぎ落とすほうがよいようです)。

一口大に切り、皮の部分に格子状に細かく切り込みを入れ、塩と重曹をすりこんでおく(これも色をきれいにしたい場合で、やんなくても大丈夫です)。

鍋に湯をわかし、冬瓜を入れて7~8分やわらかくなるまでゆで、ざるにあけて氷水にとり色止めしておく。

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ここからは鶏団子づくり。

↓こちらは、火を通してそぼろにしたひき肉と生のひき肉を半量ずつにして、ふたつの食感を組み合わせた鶏団子のレシピ。なんかプロっぽい!&美味しそうなので参考にさせていただきました。


(参考サイトではもも肉とむね肉をミックスしていますが、今回は冷やして仕上げるので、ささみなどなるべく脂肪が入ってないひき肉の方がおすすめです)

まずは鶏ひき肉の半量(75~100g)をフライパンに入れ、お玉1杯分のだしを入れて、ひき肉をほぐしてから火にかけます。

みりん、しょうゆ(各大さじ1)を加えて、汁気が飛ぶまで煎りつけてそぼろ状にします。

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そぼろ状にした肉はすり鉢に入れ、粗熱がとれるまで冷まします。
冷めたら残りの生のひき肉を加え、溶き卵(1/2個分)、しょうが、みじん切りにしたシソ、塩を入れて練ります。

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鍋にだしを入れて火にかけ、酒、みりん、しょうゆ、砂糖、塩でやや濃いめに味つけをしておきます。

ここに丸めた鶏団子を入れて火を通していきます。
いつもは両手で丸めて作るのですが、トオルがやっていたように片手にタネをとって親指と人差し指の間から絞り出し、スプーンですくって鍋に入れる…というのを試してみたら、早いしちょっと板前っぽさを味わえて楽しかったです。

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鶏団子が煮えたら、粗熱がとれるまで置いておきます。

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器に冬瓜、戻した春雨、鶏団子を入れ、スープをそそいだらラップをしてひと晩冷蔵庫へ。

仕上げに塩茹でしたオクラの細切りを添えて完成。
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暑い日に食べたい、夏らしい冷やし鉢。

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冬瓜はあんまり緑色が残らなかったな…(残念)。

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食べた感想:
冬瓜はもともと大好きな野菜だけど、冷やして食べると独特の風味が増しますね。
とろりとして出汁が染みていて、春雨と一緒にいくらでも箸が進みます。
鶏団子はたっぷり入ったシソがさわやかで美味しい! シソ入りは夏の定番にしたいかも。肉だねにお豆腐を加えても良いかもしれない。

冷やすと味がぼんやりしがちなので、いつもより濃いめに味つけするのがおすすめです。
こういう冷たい煮物は、暑い日に外から帰ってきて、体に熱がこもってるうちに食べると最高に美味しいですね。
(逆にずっとクーラーのついた部屋にいる日は体が冷えすぎるので、温めて食べるほうがいいかも。冬瓜は体冷えるしね…。)


ちなみにこの冬瓜料理、お店用ではこんな盛り付けの美しい冷やし鉢として供されているようです。

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※【コマ引用】「てだれもんら」(中野シズカ/KADOKAWA)1巻より

ドーンと大皿で作ってみんなで食べるまかないと、お客に出す一品のギャップ。そんな職人仕事の風景をのぞき見るのも楽しい。


本作にはほかにも美味しそうな料理がたくさん登場しますが、一番気になったのは、明が「庭の怪」退治で手に入れた松露(しょうろ)を使ってトオルが作ったお吸物。

松露は「日本のトリュフ」とも呼ばれているキノコですが、なかなか一般には出回らないようです。手に入ったら作ってみたいな~。

てだれもんら 1 (ビームコミックス)
中野 シズカ
KADOKAWA
2019-09-12


にわにはににん (ビームコミックス)
中野 シズカ
KADOKAWA
2018-09-12



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