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去年トコロテン雑煮を再現したら楽しかったので、また作りたいと思っていた「ぷりぷり県」の料理。今回は3つの郷土料理に挑戦してみました。

ぷりぷり県出身の新入社員・つとむと同僚たちがやってきたのは、東京でぷりぷり県の郷土料理が味わえる店「ぷ州」。

入店すると
いらっしょいましー
と方言で迎える従業員たち。
彼らもみんな「産地直送」で、他県の人間はひとりもいないという。そのこだわりに、愛郷心あふれるつとむも納得の表情。

最初につとむがオーダーしたのが「部員煮」。

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※【コマ引用】「ぷりぷり県」(吉田戦車/小学館)1巻より

巨大な四角い麩にひき肉やうどんを詰めて、煮たものです。
安くてボリュームたっぷりで、運動部員なんかがよく食べます。

運動部員がよく食べるから「部員煮」。
郷土料理には謎ネーミングな料理が多いですが、この「歴史めっちゃ浅そう」な由来が味わい深いです(調べたらリアルでも新潟に「スキー汁」という郷土料理があるみたいで、ぷりぷりみを感じました)。

一方で、「麩にひき肉、うどんを詰めて煮たもの」という説明だけ聞くと、実在しても不思議じゃないほど美味しそう。リアルに作れそうじゃないですか。

ただネックとなるのが「巨大な四角い麩」。
ご当地麩は数あれど、こんな麩は実在するのでしょうか。

調べてみると、イメージに近い麩が見つかりました。

東海地方のご当地麩「角麩」です。
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取り寄せてみました。生麩の一種のようです。

パッケージに書かれた牛や豚の絵と「すきやきの友」というキャッチコピーがよいですね。ちゃんと四角くて、B6判の単行本くらいある大きさも申し分なし。

さて、この果たして「部員煮」は再現できるのでしょうか。

作り方:
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鍋に湯をわかして角麩をさっと茹で、ざるにあけて冷ましておきます。

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麩ではさむ肉ダネを作ります。
ゆでうどん(1/2玉分)を細かく刻み、豚ひき肉(100gくらい)、刻んだニラ(1/2束)、しょうゆ、塩コショウ、日本酒と一緒に混ぜます。

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角麩を半分に切り、肉ダネを乗せてもう1枚ではさみます。

が、角麩は生麩のわりに案外硬いようで、肉ダネをはさむと麩の表面が割れてしまいちょっとあせる。

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油をひいたフライパンで両面に軽く焼き目をつけ、だしをひたひたより少な目にそそいでみりん、しょうゆで味付け。

落とし蓋をして、途中で裏返しながら(くずれそうなら煮汁を上からかけながら)20~30分程度煮込んで完成。

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思った以上に郷土料理にありそうなビジュアル。

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食べた感想:
角麩はもちもち感は弱めで、生麩というより「ちくわぶ」に似た食感です。
肉ダネに甘辛いタレがからんで、完全食としてはもちろんおかずにもなりそうなボリューミーな食べごたえ。これは確かに運動部員が喜びそうながっつり和食。

無事再現できて満足…したはずだったのですが、どうやら「生麩」は家でも手作りできるらしい、という情報を得ました。手作りならもっと理想の部員煮になるかも…とうずうずしてしまい、再チャレンジすることに。

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生麩に必要なグルテンを作るには、強力粉を水で揉みだす方法もありますが(美味しんぼで富井副部長が作ってた代用ガムと同じですね)、今回は手抜きで市販のグルテン粉を使います。

グルテン粉100gと白玉粉40gをフードプロセッサーで混ぜる。

グルテン粉は「小麦たんぱく」という名前でも売ってます。私は↓を使いました(麦芽糖が入っているせいか、やや茶色いです)



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これに少しずつ水を加え、生地としてまとめます。
まとめてすぐはぼそぼそした状態ですが…

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ラップにくるんで1~2時間ほど置くと、なめらかな形状になります。

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これを2等分して四角く伸ばし…たかったのですが、グルテンの塊だけにスゴい弾力で思うような形に伸ばせません。

ひとまず適当な形に伸ばしてクッキングシートの上に乗せ、

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沸騰したお湯で茹でます。
シートからはがれて2~3分茹でたら、氷水にとって冷やします。

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端を切って四角く整えます(切れ端はバターで焼いて醤油で食べるとおいしいよ!)。
もう1枚を同じようにして、うどん入りひき肉をのせてはさみます。

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あとはさっきと同様に両面を焼いて甘辛く煮て完成。

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オリジナルの麩で、より部員煮っぽくなったのではないでしょうか(自己満足)。

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割るとこんな感じ。

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食感は、角麩よりももちもちしてるかな~くらい。白玉粉の配分をもっと多めにしてもよかったかも。
そしてお腹にたまります。めっちゃ腹持ちいいです。


満足したところで、作中のほかの「ぷ州」メニューも再現してみました。

まずはタコカツ。その名の通り、タコをまるごとフライにした料理のようです。
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※【コマ引用】「ぷりぷり県」(吉田戦車/小学館)1巻より

同僚たちには好評だったものの、つとむはひと口食べてこのタコカツは産地直送ではないと見抜き激怒。実はタコではなく、調理した従業員のヤス吉が「産地直送」ではなかった…というオチでした。

このタコカツ、外側はさっくり、かむともちもち…と描写された食感がリアルで妙に美味しそうなのです。

小ぶりのイイダコなら丸ごと揚げられるのでは……と思い立ちました。
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イイダコです。塩もみしてしばらくおき、流水でよく洗います。

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熱湯で茹でます。茹でると足がくるくるして、すでにかわいい。ミュータント…というかサイズ的にシルバニアファミリー感あります。

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全体に小麦粉をまぶして卵液→パン粉の順に衣をつけます。

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油で揚げて完成(はねるので注意)。

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見たことありそうで、案外なかったタコの丸揚げ。

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揚げたてをかぶりつくと、外はサクサク、中はジューシーで予想以上に美味しい! ソースで食べてもいけます。


さて、最後は問題の「暗黒星人」。
つとむが説明しようとしたところ、よし子先輩が「言わないで!」と止めたり、数あるぷりぷり県の郷土料理のなかでも最も謎に包まれた存在ですが、エピソードの最後のコマにそのビジュアルがさらりと描かれています。

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※【コマ引用】「ぷりぷり県」(吉田戦車/小学館)1巻より

なんか黒くて屹立したビジュアルの物体……それが暗黒星人。
もうこれはこの通りに作るしかない。
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黒い食材総動員作戦です。
細切りこんぶとひじきを水でもどしておく。

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天ぷら衣に黒ゴマ、食紅の黒(あれば黒ねりゴマでも)を入れて混ぜます。

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水気を切った細切りこんぶとひじきを混ぜ合わせ、頭・腕・胴体・脚のパーツごとに具を分け、天ぷら衣をつけて揚げていきます。腕や脚など細いパーツはクッキングシートに乗せて揚げるとやりやすいです。

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頭や胴体は適当に形づくって揚げます。
揚げたパーツを組み合わせてクリーチャーっぽいものを作り…(接合にはご飯粒の力も借りました)

無理矢理立たせたら完成です。
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ご飯粒の上に立たせようと思ったらうまくいかないので、刺身のつまで下半身をごまかして「暗黒星人、雲海にそびゆ」風にしました(マッシュポテトとかで立たせたほうが安定したかもしれない)。

キッチンで奮闘してるところに家人が帰宅し
何してんの?
と聞かれ
暗黒星人を立たせたくて…
と正直に答えたら微妙な空気になりました。

この出来ではつとむに「てめえ他県の人間だな!」とダメ出しをくらいそうなので、いずれ改良したい(昆布を人型に切って揚げるだけでもよかったかもしれない)。

味は普通に海藻の天ぷらっぽくて美味しかったです。


ぷりぷり県(1)
吉田戦車
小学館
2015-03-30



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