P1010796

夏になると読み返したくなる漫画はいくつかあるけれど、この作品もそのひとつ(という書き出しなので夏の間に公開したかったけどすっかり秋ですね…)。

全6巻、と雁須磨子先生作品のなかで一番の長編となった「つなぐと星座になるように」。

主人公は、地方からスーツケースひとつで上京した瑠加。
彼女が東京に来た理由は、金を返さないまま失踪した恋人・憲章を探すため。
この憲章という男、金にルーズ&浮気性&ちゃらんぽらんという三重苦を抱えた超絶イケメンなのですが、どうやら現在東京にいるらしいという消息をつかんだのです。

東京で暮らす姉・水美を頼って家を訪ねると、そこにいたのは同棲中の姉の恋人。
顔は似ても似つかないけれど、憲章と体型の似た「黒田」というその男に、瑠加はほのかに心惹かれます。

お金も仕事も友達もないなか、身ひとつで上京してきたふつうの女の子が、不思議の国・東京でさまざまな人と知り合ううちに、いつのまにか夜空の星座のように人間関係がつながりあっていく。ほかの雁須磨子作品と同じく、この面白さをなんと説明したらよいのか……と筆力のない自分はもどかしいのだけど、とにかく面白いから女子は読め(直球)。

たびたび読み返したくなるのは、ゆるやかなストーリーに対して、描写のひとつひとつが鮮烈だからかもしれない。

例えば物語の冒頭のシーン。

照りつける夏の日差しのなか慣れない東京を歩きまわり、ようやくたどり着いた姉の家。
仕事で不在の姉の部屋は、クーラーのリモコンさえ探せないほど絶望的に散らかっている。
そんな様子を見かねて、自分の部屋を使っていいという姉の恋人。
彼のベッドに横になり、男の部屋だ、と感じる。元カレと同じ整髪料の匂いのせいだ。


この解像度の高い描写よ……。
こんなシチュエーション体験したことないし、これからも遭遇しないと思うのだけど、読むバーチャルリアリティかってくらいに、夏の空気、瑠加の感覚が伝わってくるのです。

テレビ制作会社で働く姉・水美は、ほとんど家に帰ってこないほど多忙。料理好きの瑠加は居候のお礼として、たびたび食事を作ります。さらりとしか描かれないんですけど、これがどれも美味しそう。

4巻で疲れ果てて帰宅した水美のために作ったのが、冬瓜とひき肉のはちみつ煮と、バイト先のタイ料理店の店長に教えてもらったエビとパインのチャーハン

koma
※【コマ引用】「つなぐと星座になるように」(雁須磨子/講談社)4巻より

激務のあと泥のように眠り、お風呂に入ってサッパリしたあとこんなメニューが用意されてたら…と想像したら、社会人は泣いてしまう。

ところでこの水美というキャラクター、飾り気がなくて天然で仕事もできる好感度maxなお姉さんですが、物語が進むにつれてある意味作中で一番鬼畜で怖ろしい女なのでは…と、判明していくのも見どころです。


P1010712P1010716
作り方:(分量は参考まで)
冬瓜(800gくらい)は皮をむいてワタを取り除き、ひと口大に切っておく。
なんで夏に出回るのに「冬」瓜なのかねー、と思ってたのですが、丸ごとの状態なら冬まで保存できるから、ということらしい。

P1010720
水から一度下茹でしてザルにあけておく。

P1010721P1010728
鍋を熱して鶏ひき肉(200g)、酒を入れてそぼろ状になるように炒め、チューブ生姜を加える。

P1010732P1010740
出汁(2カップ)、はちみつ(大さじ1)、しょうゆ(小さじ2~3)、塩(適量)を加えて煮立たせ、下茹でした冬瓜を加えて落し蓋をし、しばらく煮る。
仕上げに水溶き片栗粉を加えてとろみとつけて完成。


P1010742
次はエビとパインのチャーハン。
エビは背ワタをむいて酒を揉みこんでおく。ピーマンとパプリカ、玉ねぎ、ハム、ニンニクはみじん切り。生パイナップルはひと口サイズに切っておく。

P1010745P1010750
フライパンに油をいれて熱し、ニンニク、玉ねぎを炒めてエビ、パイナップルを入れる。
エビの色が変わったらハム、パプリカ、ピーマンを加えて炒める。最後にご飯を入れて具材を絡ませるように炒め、ナンプラーと塩コショウで味付け。

P1010769
和食の煮物とタイ料理、ジャンルはバラバラだけどどちらも夏っぽいので案外違和感ない組み合わせの献立。

P1010783
水美が「この大根おいしー」と無邪気に勘違いしてましたが、確かに冬瓜の煮物って「大根の煮物」の夏バージョンって感じがする。暑い時期は大根だとちょっと重たいけど、冬瓜ならするするいくらでも食べられる。

P1010827
出来立ても美味しいけど、冷蔵庫で冷やしたのも最高。

P1010834
エビとパインのチャーハン。パクチーものっけてみた。
本格的すぎず、ご家庭にあるふつうの材料でできるタイチャーハン、くらいのイメージで作ったけど、そんな仕上がりになった気がする。

「つなぐと星座に~」は20代を中心にした恋愛群像劇ですが、同じ筆で40代のリアルも描けてしまうのが雁須磨子先生の恐ろしさであります。同年代の皆様(もちろんお若いお嬢さんにも)には最新作の「あした死ぬには、」もおすすめです。 



あした死ぬには、 1
雁 須磨子
太田出版
2019-06-13



▽読者登録するとLINEで更新通知が届きます


▽Twitter(@pootan)はこちら


▽Instagram(@mangashokudo)はこちら
instagram_bn

▽YouTubeはこちら