※【コマ引用】「エスパー魔美」(藤子・F・ 不二雄/小学館)3巻より
誰にでも、思い出深い藤子不二雄作品というのがある。
わたしの場合はオバケのQ太郎、ドラえもん、そしてエスパー魔美。実家に単行本が揃っていたので、子供のころから繰り返し読んだ作品たち。
児童向けの他の2作品と違い、主人公が中学生という設定の「エスパー魔美」は、ハッピーエンドと言い難いエピソードもいくつかあり、世の中の白黒つかなさを教えてくれた作品のひとつだったように思う。大人になって読み返して、色あせない理由もそこらへんにあるのかもしれない。
そんなエスパー魔美に、ちょっと不思議な料理が登場していたのを覚えている人はいるでしょうか。
「のぞかれた魔女」のエピソードに出てくる、魔美のパパの好物・たくあんの煮物。
といっても作中の描写としてはほんの少し。
魔美の家を訪れた高畑さんとのやりとりで、
関西圏のご近所エリアで生きてきたのに、そんな料理があるとは全然知らなかった。
食べ物はさらっと抽象的に描く印象のF先生作品で、この料理は妙に具体的なのも気になる。もしかして、先生ご本人にとっても思い出深い故郷の料理だったりしたのだろうか。
「昔のたくあん」という古たくあんの市販品が手に入ったので、これで再現してみることにしました。
長年謎だったたくあんの煮物、できました。
食べた感想:
藤子先生の出身の富山県では、だし醤油ではなく酒粕で煮るたくあん煮の情報もいくつか見つかったので、パパの好物はそっちの可能性もありそう。
といっても作中の描写としてはほんの少し。
魔美の家を訪れた高畑さんとのやりとりで、
「なんだい、このものすごいにおいは?」というシーンがあったり、魔美家を敵視するお隣の陰木さんが「毒ガス」と表現して玄関で倒れたり、料理そのもの(鍋の中身)は描かれていないものの、なかなかのインパクト。
「タクアンを煮てるのよ。パパったらへんなものが大好きなんだから。」
どうやら世の中にはたくあんを煮る料理があるらしい、というのはその時初めて知ったものの、WikipediaもQ&Aサイトもない時代にそれ以上知る術もなく。大人になって読み返し、気になってネットで調べたら、意外なことがわかった。
たくあんの煮物は、京都や滋賀、北陸エリアのお惣菜だったのだ。
古漬けのたくあんを塩抜きして煮たもので、「贅沢煮」とも言われるらしい。藤子先生の出身地は富山県だけど、案の定、富山でも「いりこぐ・いりごき」という名前で呼ばれているのだとか。
古漬けのたくあんを塩抜きして煮たもので、「贅沢煮」とも言われるらしい。藤子先生の出身地は富山県だけど、案の定、富山でも「いりこぐ・いりごき」という名前で呼ばれているのだとか。
関西圏のご近所エリアで生きてきたのに、そんな料理があるとは全然知らなかった。
食べ物はさらっと抽象的に描く印象のF先生作品で、この料理は妙に具体的なのも気になる。もしかして、先生ご本人にとっても思い出深い故郷の料理だったりしたのだろうか。
「昔のたくあん」という古たくあんの市販品が手に入ったので、これで再現してみることにしました。
切ったついでに、ひとつつまみ食いしてみる。
生きてます!と乳酸菌がたからかに主張してくる、発酵の酸味。祖母が漬けていたたくあんも、古くなるとこういう味がしていた。市販品のせいか、塩気は抑えてあるので、塩抜きにそれほど時間はかからなさそう。
これを、20分ほど茹でて塩抜きします。
茹でている間、確かにガスっぽい独特の匂いがする。市販品のたくあんだからか、人が倒れるほど強烈ではないのが御の字。
塩抜きしたたくあん(ゆでたあと味を見て、まだ塩気がきついなら水にさらしておく)を鍋に戻し、ひたひたの出汁、しょうゆ、みりん、酒、唐辛子(これはお好み)を入れ、フタをして柔らかくなるまで煮る。
長年謎だったたくあんの煮物、できました。
食べた感想:
温かいうちは硬めの煮物のような、切り干し大根のような食感。醤油のきいたたまり漬け風の味つけは、おかずにも酒の肴にもよい感じで、なかなか美味しい。
冷蔵庫で冷やすと、もとのたくあんに近い食感に戻るのも面白い。漬物にした時点で大根の水分はほとんど失われているから、長時間煮込んでも煮崩れたりしないんだろうな。
藤子先生の出身の富山県では、だし醤油ではなく酒粕で煮るたくあん煮の情報もいくつか見つかったので、パパの好物はそっちの可能性もありそう。
余談ですがこれを作るのに久々に全巻読み返して、あらためて高畑さんは藤子作品のイケメンランキングでぶっちぎり優勝だなと思いました。付き合うなら高畑さんだし、娘がいたら婿に来てもらいたいし、男として生まれるなら高畑さんになりたい。パーフェクトヒューマンTKHT。
コメント
コメント一覧 (8)
私も高畑君大好きなので思わずコメントしてしまいました。賢く優しく可愛くて、そこはかとないエロスまで感じます。
ところでこちらは埼玉なのですが祖母は白菜の古漬けを強火で思いっきり炒めていました。臭ッ!ガス漏れ?事件ッ!?という強烈な匂いでした。毛嫌いして一度も食べませんでしたが、昨年祖母が亡くなり、食わず嫌いしないで食べておけば良かったと後悔しています。
沢庵から逸れてしまってごめんなさい。
酢飯さん
はじめまして、コメントいただきありがとうございます!
高畑君に感じるそこはかとないエロス、わかります…!
(たぶん知性にはエロスが宿るんだ…とか思ってます)
白菜の古漬けの炒め、この歳になると美味しそう、と思えますが、若いころはなかなかその魅力もわかりませんよね;(においが強烈ならなおさら…)
古いキムチも炒めると美味しいらしいので、おばあさまの料理も美味しいんだろうなと思います^^
お久しぶりです、コメントありがとうございます~!
高畑さん最強説、わかっていただけてうれしいです!
子供のころ読んで「少女漫画の男子よりもなんか素敵かも…」と思ってたのですが、年齢を経るごとに「これは人類としても至高では…」との思いが強くなりましたw
やはり滋賀県も沢庵を煮る食文化があったのですね。
おばあさまの贅沢煮エピソード、参考になります!
滋賀の鮒ずし、ずっと気になりつつもまだ未体験の味です。
この歳なら絶対美味しいと思えるはず…!と、コメントを拝読して思いを強くしました。
贅沢煮を実際につくられていたんですね!
おばあ様の手作り沢庵(しかも樽で!)だと、余計に美味しそうです。
うちも祖母はもう漬物を作らなくなったので、もっと前に再現しておけばよかったなあ…とちょっと後悔しています。
今回は大好きなエスパー魔美の料理、懐かしい★ほんとに大人になっても色褪せない素敵な作品ですよね。なにより、私も高畑くんが理想のタイプなので、同意見の方に初めて会えて嬉しすぎです!誰にも分かってもらえませんでした(笑)
今回は贅沢煮が登場したので、これはコメントせずにはいられませんでした。
私は滋賀在住ですが、おばあちゃんが秋に漬けて食べきれなかった沢庵を水で塩抜きし、川エビと(滋賀は海がないので、必然的に鯉や川魚、その時一緒にかかる小さなエビなどが食べられていました。)にぼしで炊いてました。
じっさいすごい匂いだし、子供には忌み嫌われる料理なんですが、年取るとふしぎと食べたくなる料理です。滋賀って、鮒ずしとか、鯖そうめんとか、そういう若い時は無理だけど、年齢を経ておいしく思えるものが多いです。
贅沢煮と聞いて懐かしくなりました。
都内に住んでますが滋賀から祖母の手作り沢庵が樽で送られてきたので、最後の方は贅沢煮でした。塩抜きも時間かかるし匂いも独特ですが美味しいですよね🎵 祖母も亡くなり、もうあの酸っぱい沢庵も食べられないのかと寂しいです。