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ずっと読んでいられるほど心地いい漫画。
「HER」「WHITE NOTE PAD」など、大好きな作品が多いヤマシタトモコ先生のフィーヤン連載作。

交通事故で突然両親を亡くした、女子中学生の朝(あさ)。
彼女の後見人になったのは、叔母である槙生(まきお)。
槙生は姉、つまり朝の母親とは険悪で、死後も「全く悲しくない」と言いのけるほど
根深い確執があるよう。
しかし葬儀の場で、朝を前に親戚たちの醜悪な言葉が飛び交う状況をみて
あなたのことを愛せるかどうかはわからない
でもわたしは決してあなたを踏みにじらない
それでよければ明日も明後日もずっとうちに帰ってきなさい
と15歳の少女を引き取る宣言をする。

独身者がひょんなことから子供と共同生活をする、というストーリー自体は漫画で定番のフレームだけど、この作品はその共同生活の描写がとても心地いい。他愛もない会話のやりとり、そして槙生ちゃんの朝への態度。

身内のウェットな情ではなく、行き場のない15歳の子供に、ひとりの大人として「帰る場所」を提供する。年端もない少女を導く、不器用な槙生ちゃんの一見突き放しているかのようでまっすぐな言葉の数々に、読み手の心も撃ち抜かれる。

ふたりの共同生活は、キッチンのシーンにも鮮やかに描かれます。
第4話の餃子のエピソードもそのひとつ。

古くからの親友・醍醐(だいご)が、突然「子持ち」になった槙生の様子を見に訪ねてきた日のこと。

少女小説家として一匹狼で生きてきた槙生は、人と一緒に暮らすことに慣れていない。親戚の前で啖呵を切って後見人になったものの、家に他人がいることにとまどい、人見知りモードを発動。

朝との距離感をつかみかねている槙生の様子を見てとったのか、醍醐は一緒に料理することを提案します。メニューは、朝のリクエストでギョウザに決定。

では包団(ぱおだん)を結成するぞ!
と醍醐の指南で、餃子づくりがスタート。
ちなみに「包団」とは、ギョウザを包むときに結成する「団体」、だそう。確かに餃子って、人との距離を縮める共同作業にはぴったりかもしれない。

醍醐嬢は料理が得意らしく、3種類の「秘伝のタレ」も伝授してくれます。今回の料理は、このタレが主役といえるかもしれない。

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餃子の材料は、豚ひき肉、白菜、キャベツ、ネギ、しょうが、そして皮。なすは副菜用。
「レンジ用の蒸し器」はタジン型のやつ。懐かしくて思わずネットで買ってしまった。

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白菜はレンジ用蒸し器で2分ほどチンし、粗熱がとれたらみじん切り。ネギとキャベツもそれぞれみじん切りしておく。

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副菜用のナスはヘタをとって同じくレンジ用蒸し器でチンし、水にとっておく。

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ボウルに豚ひき肉と野菜(一応水気は絞ってみた)を入れて粘りが出るまで混ぜ、醤油、ごま油、コショウ、お酒で適当に味つけして包む。

さて、今回のポイントはの3種類の「秘伝のタレ」です。
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【秘伝のタレ①】玉ねぎ入りカンタン酢、醤油、にんにく、しょうが、オイスターソース、砂糖。今回は大人向けのワイン+豆板醤も追加してみました。

残念ながら作中で使っている、玉ねぎ入りの「カンタン酢」は現在廃盤のようで、同じミツカンから出てるビネガーシェフ(たっぷりたまねぎ)で代用することにした。

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【秘伝のタレ②】マスタード、醤油、はちみつ、うめぼし
【秘伝のタレ③】玉ねぎ入りカンタン酢、しそ(刻んだもの)、味噌

餃子が焼けたので、
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3種のタレ+オーソドックスな酢醤油&ラー油、山もり針生姜でいただきます。
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各タレの感想を。
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秘伝のタレ①
中華風の甘辛ダレですが、今回は豆板醤も加えたおかげで、より中華度が増してます。濃厚系タレで、餃子がご飯のおかずとしてパワーアップ。醍醐さんいわく、ごま油を足せばつくりおき系の野菜おかずにも相性よいのだとか。今度やってみよう。

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秘伝のタレ②
マスタードと梅の酸味に、はちみつの甘さ。甘酸っぱいタレと餃子の組み合わせが新鮮。チキンソテーとか、お肉にも合いそう。

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秘伝のタレ③
大葉風味の酢味噌。餃子に味噌?と意外だったけど、神戸のご当地餃子は味噌だれで食べるようですね。個人的にはこのタレが一番好き。残ったタレをゆで野菜につけて食べたら、これも絶品だった。

しかしカンタン酢って便利だなー! めんつゆに続く神アイテムを知ってしまった。

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副菜のなすは、水につけて冷やしたあとに手で適当に割いて、めんつゆとすりごまをかけるだけ。
手軽で美味しい! 食感のきしみが気になる場合は、皮をむいて作ってもいいかも。


作品の第1話は、すでに一緒に暮らして数年たった二人の日常から始まっています。
流れるように献立を決め手際よく料理する朝、それをくつろいで食べる槙生ちゃん。よく見ると、この餃子回で使われていたレンジ用タジン鍋も登場しています。

天涯孤独になった女の子と、孤独を愛する小説家。
ぎこちなかったふたりが、心を許し合う関係になるまでの日々が、今後どうつむがれていくのか楽しみ。



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