
レストランが舞台の作品が好きです。
映画だと「ディナー・ラッシュ」「リストランテの夜」、漫画だと佐々木倫子先生の「Heaven?」、オノ・ナツメ先生の「リストランテ・パラディーゾ」があるし、「バンビ~ノ!」の戦場のような厨房シーンは今読んでもめちゃくちゃカッコいい。
最近読んだ「Artiste」も、レストランものの名作になりそうな漫画です。
「料理は芸術か」はたびたび議論になる話題ですが、タイトルの「Artiste」はフランス語で「芸術家」という意味。文字通り本作は「芸術家」としてのプロの料理人の世界を描く作品です。
主人公・ジルベールはパリのレストランで働く青年。一流ホテルの厨房出身でありながら、今の店では皿洗いと雑用係。
彼は実は「動物級の味覚と嗅覚」を持つ天才なのですが、幼いころから周囲にその特殊能力を気味悪がられ、職場でもトラブルを起こし、今ではすっかり「コミュ障」に。心の底では料理の前線に戻りたいと思いつつ、染み付いた臆病さゆえに踏み出せずにいます。
しかし、ずかずかとコミュニケーションをとってくる職場の新人・マルコの自由奔放さや、彼の才能を見抜いた同僚たちの応援を受け、臆病だった彼の心は徐々に開いていきます。
新しくオープンする予定のレストランに引き抜かれ、料理人復帰することになったジルベール(しかも花形のソース担当として)。
新生活のため、たまたま探し当てた物件は「芸術家専門」の格安アパルトマン。
以前は仕事と家の往復だけで、自炊もろくにしていない状態でしたが、部屋に備え付けられたキッチンを見て思わず心がうずきます。しかも「誰かのために料理を作りたい」という純粋な気待ちとともに。
日本でもおなじみの軽食ですが、ソースから丁寧に作り、焼きあがったオーブンをおそるおそる開けるシーンは、「料理人のリハビリ」のよう。
(ちなみにアパルトマンで飼われているネコの名前も「クロックムッシュ」)


材料はパン・ド・ミ、グリュイエールチーズ、ロースハム。それからベシャメルソース用にバター(30g)、小麦粉(30g)、牛乳(500cc)、ナツメグ、塩(※分量は参考まで)。
パン・ド・ミは自宅にあるパナ製のホームベーカリーのレシピで焼いたのですが、ようはフランス版の食パン。皮が美味しいバゲットと対照的に、中身が美味しいから「パン・ド・ミ(中身のパン)」と呼ばれているようです。
鍋にバターを入れて弱火で溶かします。


いったん鍋を火からおろして小麦粉を入れ(このほうがダマになりにくい)、木べらでツヤが出るまでよく混ぜます。


コンロに戻して弱火にかけ、牛乳を少しずつ加えてなめらかになるまで混ぜます。
粉っぽさがなくなったら、ナツメグ、塩で味付け。


仕上げにシノワで漉したら完成(うちは粉ふるいで漉しました)。
残りのベシャメルソースはグラタンやシチューなどに使えるので冷凍してどうぞ。


クロックムッシュはパンを2枚使って、間にソースや具をはさむものも多いですが、作中では厚切りのパン1枚を使っているのでそれにならいます。
4枚切りのパン・ド・ミにベシャメルソースをたっぷりと厚く塗ります。
続いてロースハム(奮発してブロックタイプのハムを買ってしまった)を薄切り。


パンの上に乗せ、続いてグリュイエールチーズも乗せます。
200度に予熱したオーブンでじっくり20分。

うおおおお(歓声)。
焼きたての熱いうちにいただきます。



食べた感想:
グリュイエールチーズは、チーズフォンデュにも使われるだけあり濃厚な味で、シンプルなトーストにぴったり。優しい味のベシャメルソースと相まって、まるでパンの上で食べるグラタンのよう。
それからオーブンでじっくり焼く効果なのかわからないけれど、パンがやたらと美味しいのです。耳がサクサクしていて、バターの香りがふんわり立ちのぼって、たまらん……。思わず2日連続で作ってしまったほど。
新しい環境で料理人としての再スタートをきったジルベールですが、店に集められたのは一癖も二癖もある同僚シェフたち。
臆病な彼が、不器用に一歩ずつ人間関係を築いていく過程は、お仕事漫画としてもグッとくる作品です。
コメント
コメント一覧 (8)
わー、フランス本国でも出版されてるんですね!
なんと感慨深い…。
ちゃんとその国の文化にあわせて翻訳されているのもすごいですね。
フランスの人はどんな感想持ったのか気になります。
簡単料理から凝り凝り料理まで再現を名目に体験できるのが、マンガ飯のいいところかもしれませんね。
プライベートの私の料理は、いまだにヴァンプ将軍にも全然かなわないレベルですが…orz
あっちの人からすると、日本のおにぎりとか丼ぶりのような軽食感覚なんでしょうかね~。ビールとあわせる、という発想がなかったので次やってみたいです…!
「ガンダルヴァ」恥ずかしながら初めて知りました…!
1巻読んでみたのですが、これはいい意味で変態性高くてすごい内容ですねw
匂いに対する概念が変わりそう…面白かったです!
「フランス人にとって料理人が芸術家なのは当たり前」という理由で
「un chef d' exception」(抜群のシェフ・Google翻訳)という副題がつけられたそうです。
うーむ流石やでフランス人。
しっかし、
うまそぉ~⤴
クロックムッシュ、めちゃめちゃ美味しそうですね!こんな本格的なやつを一度は食べてみたいです。
GWゴロゴロ過ごしていたんですが梅本さんに読んでもらいたい漫画をふと思い出したので、今回はそれをお伝えしたくてコメント致しました。
もうご存知かもですが、
「ガンダルヴァ」正木秀尚 です。
物凄い嗅覚を持つ主人公なんですが、ラム酒の事や、スペイン料理のコシードなど、美味しそうで気になる物が出てきます。ストーリーも面白いのでぜひ読んでみて下さいね!
(面白いのに一巻のみで終わってしまいましたが…(^^;)
https://www.amazon.co.jp/ガンダルヴァ-1-イブニングKC-正木-秀尚/dp/4063520064