フィーヤン連載時にご紹介した、おかざき真里先生の「かしましめし」単行本が9月に発売されました。
包まないギョーザがとても美味しくて、その後何回かリピートしたほどだったのですが、単行本化されたら真っ先に作りたかったのが第2話のエスニックメニューです。
・バターチキンカレー
・エビと春雨のタイ風煮
・簡単ナン
の3品。
※【コマ引用】「かしましめし」(おかざき真里/祥伝社)1巻より
「かしましめし」は、美大の同級生である千春、ナカムラ、英治の男女3人の「集い飯」がコンセプト。レシピの内容も分量も少人数の集まりにぴったりなものが多いです。
私はコミュ障なので、無条件で肯定される「みんなで食べると美味しいね教」はどうも苦手なのですが、この作品のように、それぞれの事情を抱えた3人が集い、お互いに干渉しすぎず、食べて飲む時間で一瞬生き返り、それぞれの生活に戻っていくさまは、とてもリアリティーがあって共感します。
「私たちは何度も生き返る。小さく小さく、くりかえし生まれ変わる」
という冒頭のモノローグのとおり、25mプールを永遠に往復しているかのような日常では、「息つぎ」の瞬間がないと溺れてしまう。
※【コマ引用】「かしましめし」(おかざき真里/祥伝社)1巻より
第2話のエスニックパーティーの発端となったのは、英治が作るバターチキンカレー。
数日前から食べたくなり、前夜からいそいそと仕込んで作った特製カレー。
辛いものが苦手でも、バターチキンカレーだけは好き、という人も多いですよね。インドカレー界のアイドル的存在ですが、レシピを見ると想像以上に簡単です。
(※分量は作品を参照してください)
鶏手羽元はプレーンヨーグルトに一晩漬けこんでおく。
(骨に沿って肉に切り込みを入れておくと、あとで食べやすいです)
深めのフライパンに、みじん切りした玉ねぎはバターとにんにくで、色づくまで炒める。
漬けこんでいた鶏肉をヨーグルトごとフライパンに入れ、カットトマト、生クリーム、カレーパウダー、バターを入れてフタをし、20分以上煮込む(バターの総量にちょっと戦慄します…でもこれが美味しさのもと)。仕上げに塩で味を調え、物足りなければニンニクも追加。
英治にならって、トッピングに「ナスとズッキーニのにんにく揚げ焼き」も用意。
英治の食卓っぽく。ひとり暮らしの食事のおともは、今やテレビではなくスマホなのですね。
バター、生クリーム、ヨーグルト、とたっぷりの乳製品とスパイスの組み合わせがなんとも美味しい。前日から仕込んだチキンも、骨からするりと肉がはずれるほどのやわらかさ。
ルーを使うカレーと同じくらい手軽なのに、本格的な味にびっくり。
カレー欲が満たされた英治ですが、「戻ってこない彼氏」が原因で、おなかは満ちても心はぽっかり空いたままだったよう。
千春とナカムラに
「美味しいカレー作った 食べへん?」
と連絡を入れ、千春も安売りのエビを買いすぎて持て余していたため、急きょ3人で集うことになります。
来たるカレーのために、まずは手作りのナンを用意する千春。
ボウルに強力粉と塩を入れ、ドライイーストを溶いたぬるま湯を少しずつ加えて混ぜ、こねていきます(千春は優雅な表情でこねていますが、私はパンこねるのがめっちゃ苦手で、毎回憤怒の表情で台所に粉をまき散らしながらの作業になってしまう……)。
生地がなめらかになったらジップロックに入れ、暖かい場所で発酵させます。
その間に、エビ料理を。
エビは頭付きを使います。有頭エビって高いんだよな~、と心配してたら、デパ地下でアルゼンチンエビが10尾980円だった!
殻のまま背中に包丁を入れて背ワタを抜き、スライスしたニンニク・しょうがと一緒に油でさっと炒める。
土鍋に豚バラを敷き、水でもどして食べやすくカットした春雨をのせ、
上に炒めたエビ、スープ(鶏がらなど)とオイスターソースをあわせたものをそそぎ、フタをして中火で10分待ちます。
パン生地が2倍に膨らんだら生地を4~6等分して丸め、縦に引き伸ばしてナン状に整えます(個人的には均一に伸ばさず、厚みに差が出るよう、手でラフに仕上げるのが好きです)。
薄く油を敷いたフライパンで両面を焼いたらできあがり。
そうしているうちに、エビも仕上がりました。汁気が煮詰まったら、香菜をたっぷり散らして完成です。
タイとインド、一見バラバラだけど「ビールに合うエスニック」としての一体感がある。
エビと春雨のタイ風煮。
「タイ風」とついていますが、中華圏の海鮮屋台で出てきそうな雰囲気もあります。
味も見た目を裏切りません。
英治のセリフどおり、エビから出るうまみを全部春雨が吸っていて、一見すると豪華な「エビ料理」に見えるけど、実質は春雨が主役!といえる味。この春雨だけ永遠に食べていたい……。ご飯にも合いそう。
2日目のバターチキンカレーは、よりマイルドになっていてやはり美味。
ご飯もいいけど、やっぱりナンも。
厚みのあるもっちりした部分と、薄くパリパリした部分のランダムな食感が楽しい。
いずれもビールに合う味で、ひたすら食べる、呑む、食べる、呑むのエンドレス。
「美味しいものは一人で食べても美味しい派」だけど、スパイスや辛さで軽く狂騒状態になるエスニックは、複数人で食べると、刺激も加わってより美味しくなるのは否定できないな、と思う。
コメント
コメント一覧 (6)
食べるシーンのワクワクした官能的な描写と、事情を抱えた主人公たちの日常の対比が鮮やかですよね。
料理漫画でも、おかざき先生のエッセンスが詰まった作品だなあと思いました。
きゃー、おかざき真里先生のファンロード時代、私も覚えてます!!
個性的な絵と文学的な作風で、読み切りとかすごく印象に残っていました。
わー、読み直したくなってきた…。
インドカレーって、手間がかかりそうで案外簡単なものも多くて、一度ハマるとルーで作るカレーに戻れなくなっちゃいますね。
わー、共感していただけてうれしいです!
(お恥ずかしいですがこういう人間です…)
ひとりで食べる幸せ・豊かさってありますよね。
孤独のグルメのおかげで、以前より市民権を得つつあるのがありがたいです(五郎さんありがとう)。
何つうか・・・主要の登場人物が3人ともキツイ立場で読んでてちょっと苦しい。美味しそうな料理を作って美味しそうに食べるところが唯一の救いですね。
おかざき真理さんとかのそういった女性漫画家の方の類いの作品って、人の心の奥底をこそげ取るように描くのが本当に上手いなあといつも思います。
おっと食の感想が殆どなく終わってしまったすみません(汗
そしてバターチキンカレー美味しそう。
インドカレー系は意外と簡単に出来るのも多くていいですよね。
テレビ出演お疲れ様でした。
そういやハクメイとミコチではカレー系見たことないな。
けっこうスパイス出てるのに。
この文を寝転びながら読んだとき「え?わたし疲れてる?マンガ食堂にアクセスしてるつもりが似たような間違ったページを読んじゃってる?」と、起き上がって確認して2度見しました。
わたしも「みんなで食べると美味しいね教」は苦手、というか苦痛で、みんなで豪華なもの食べるよりも、ひとりでおにぎりをゆっくり食べたいみたいな・・・。
でも、まさか梅本さんが、そんな感じだとは思いませんでした。
で、なんか今までよりも好きになりました。
いつも記事とは関係ないコメントでごめんなさい。