「マツコの知らない世界」に再び出演させていただきました。
今回も心の平穏のためリアルタイムでは見ない予定なので(前回分とあわせ老後に見ます…)、こちらは収録時の記憶をもとにした備忘録になります。
(野球中継延長してるよ、と教えてもらったので、あわててタイマーをずらすなど)
(野球中継延長してるよ、と教えてもらったので、あわててタイマーをずらすなど)
放送内容と違う部分があるかも&かなり長文になりますが、お許しください。
今回のラインアップについて
テーマが「リベンジ」となっていたものの、「なぜアグレッシブな料理ばかりなのか」と不思議に思った方もいるかもしれません^^;
メニュー選定では、まずマツコさんの苦手な食材が使われている料理は省かれました。
スタッフさんにヒアリングすると、お好きなものはご飯、卵、あんこ等々……で、NGなものは牛肉・豚肉(ひき肉はOK)、内臓・ジビエ、甲殻類、貝類、イカ・タコ、パクチー、魚卵(明太子なら多少はOK)等。
ここで対象となる料理がかなり絞られ、さらに
・マンガ飯らしいユニークさ(普通の調理法の料理はここでアウトに…)
・作品の許諾
・全体の構成バランス
などの諸条件も加えられ、最終的にリストのなかで選ばれたのが今回のラインアップでした。
懸念しているのは、ご紹介したマンガ飯が「マツコさんに不評」の切り口の印象だけで広まってしまうことです。料理は好みもありますし、そもそもマンガ飯の魅力は、おのおのが好きな作品の世界に能動的に関われる、二次創作的な楽しさにあると思っています。興味をもった方はぜひ一度、作品とあわせてご自身で再現を楽しんでみてください。
ここからは各チャプターの補足・裏話など。
グルメ漫画の歴史について
今回はマンガ飯だけでなく、近年のグルメ漫画の隆盛についても触れたい意図があり、解説多めの構成となったようです。私は一読者としてグルメ漫画をわりと読むほうですが、専門で研究はしてないため、放送で話した数値や分析は、あくまでも番組調べということでご容赦ください。
グルメ漫画史については、南信長さんの「マンガの食卓」、杉村啓さんの「グルメ漫画50年史」が詳しいので、ご興味のある方はこちらをぜひ。
「ドカコック」(渡辺保裕)の横浜ド開港ロードカレー
https://mangashokudo.net/blog-entry-211.html
常にテンション低めキャラの自分のプレゼンで、あの激アツな世界観が伝えられたか、正直不安ですが、近年のグルメ漫画のなかでも特に愛している作品なので、ようやくご紹介できてうれしい。
料理でいえば「ドカ盛りコロッケ丼」あたりのほうが、マツコさんに喜んでいただけたのでは……と思いますが、やはり番組側としては「マンガ飯らしさ」を優先したかったようで、調理法が個性的なこのシウマイカレーが選ばれたようです。
渡辺先生は最新作で球場グルメ漫画「球場三食」を描いていらっしゃいますが、こちらも野球愛の熱量がハンパなくて面白いです。
料理でいえば「ドカ盛りコロッケ丼」あたりのほうが、マツコさんに喜んでいただけたのでは……と思いますが、やはり番組側としては「マンガ飯らしさ」を優先したかったようで、調理法が個性的なこのシウマイカレーが選ばれたようです。
渡辺先生は最新作で球場グルメ漫画「球場三食」を描いていらっしゃいますが、こちらも野球愛の熱量がハンパなくて面白いです。
≫「ドカコック」の再現料理一覧はこちら
「コンビニお嬢さま」(松本明澄)のわらび餅フォンデュ団子
ブログ記事が間に合わなかったので、インスタでアップしていた写真を。
美麗なタッチの絵とシュールな設定が、最近読んだなかでもヒットだった料理漫画。
コンビニ食材のアレンジ料理という、懐かしの「OH!MYコンブ」のリトルグルメに通じる創意工夫の楽しさにあふれた作品です。
残念ながらマツコさんのお口には合わなかったようですが(そもそも凝ったアレンジ料理が苦手なようで……本作にはもっとシンプルな料理もあるので、そちらを出せばよかった)、せんべい団子は作り方のコツをつかめば美味しいですよ。TBSの調理部さんの再現はさすがでした。
ブラックカレー(「包丁人味平」)について
ビッグ錠先生ご本人の登場というサプライズ展開に、「ビッグ錠先生がテレビに…!!」と一視聴者として感動してしまいました。
そしてまさかの旧ブラックカレー美味しい発言。想定外で頭が真っ白になり、せっかくのセルフパロディである「うんめぇ!」のお言葉に反応できなかったのが、今でも悔やまれます…。
ちなみにブラックカレーの重要なポイントであり、前回伝えられなかった「麻薬的中毒性」について、今回は番組側から「触れてOK」と事前にGOが出ていたのですが、収録の様子からすると、結局スルーになったようです。味平ファンの皆様にとっては、またも不十分な紹介となり申し訳ありません。
新ブラックカレーのコンセプトとしては、
(A)ブラックカレーらしさ(中毒性、色、スパイス構成)の再解釈
- 幻覚・中毒性=ナツメグ、ブラックココア、芥子の実など
- 色=ブラックココア、黒ゴマペースト
- スパイス構成=ブラウンマスタード、ブラウンカルダモン、ニゲラなど黒いスパイスを中心に構成(黒いスパイスを使えばカレーが黒くなるわけではありませんが、「おまじない」として。あと、着色性の強いターメリックは省くなどしました)
(B)味(調理法)の改善
- 焙煎を弱める、インドカレーのレシピを踏襲する
の2軸から練り直し、それぞれ専門家の方にアドバイスをいただきました。
お話を伺った専門家の方々には大変お世話になったので、ここでご紹介させてください。
目黒駅近くのスパイス販売店。古いビルの二階にあるので、夜だとちょっと迷います。
オーナーさんは近隣のインド料理店からアドバイスを求められるほどの「カレーの匠」で、買い物の際もいろいろ相談に乗ってくださいました。
スーパーで売っている小瓶と同じ価格で、4~5倍量のスパイスが手に入るのでお得です。あまり見かけない珍しいスパイスや、インド米、調味料も充実しています。
「東京スパイス番長」メンバーのおひとりで、鎌倉を拠点にスパイスに関する各種活動をされています(あとで会社の同僚のお友だちと判明してびっくりした)。
こちらでもスパイスやインドカレーの調理法について助言いただいたほか、「お土産に」とさっと即席でガラムマサラまで作ってくださいました(これはカレーの仕上げに使わせていただきました)。
そういえば、マツコさんとビッグ錠先生が新ブラックカレーを食べたときの「カレーというよりパスタソースっぽい」という感想は、実はバラッツさんに試食をお願いしたときも、同じ言葉をいただいたのです。もっとこの言葉を真摯に受け止めていれば……スパイスの扱いはやはり一朝一夕とはいかないですね。
ご著書のレシピも、どれも美味しそうです。
残念ながらリベンジに至らなかったブラックカレーですが、ビッグ錠先生がその味のイメージを
「日本に初めてコーラが入ってきたとき、みんな『変な味』と言っていたのに、今や当たり前の味として広まった」
ことに例えられていたのは、目から鱗の思いでした(コーラに例えるシーンは、原作にもありましたね)。
「日本に初めてコーラが入ってきたとき、みんな『変な味』と言っていたのに、今や当たり前の味として広まった」
ことに例えられていたのは、目から鱗の思いでした(コーラに例えるシーンは、原作にもありましたね)。
この深淵なテーマ、やはりブラックカレーは今なお「究極のマンガ飯」だと思います。
「スーパーくいしん坊」(ビッグ錠)の火の玉チャーハン
打ち合わせ時、スタッフさんたちと「ビッグ錠先生といえば、こんな料理もあって……」と火の玉チャーハンの話をした記憶があるのですが、後日「 あの料理、スタジオで再現することになりました」と連絡があったときは「マジ(正気)か」と慄きました。
放送でも話が出るかと思いますが、当日の本番前のリハーサルでは大惨事となりまして……。
再現の手順としては、
・食材を入れた鉄球(中華鍋をカスタマイズしたもの)をワイヤーに吊るす
・手動でねじって回転させる
・コンロに着火する
というフローですが、事前に「20回ねじれば2分半ほど鉄球が回ります」と説明を受けていました。
しかしリハーサル時、現場から「どうせなら、もっと勢いをつけてみようよ」という声が出て、ワイヤーをMAXまでねじったところ、鉄球がものすごいスピードで回転し、縦→横回転になったところで、隙間から生卵をまとったご飯粒が散弾銃のように飛び散る地獄絵図に。
本番前のスタジオのセットや床、その場にいた全員の服が卵かけご飯まみれになる事態となりました……(翌日の着替え持ってたので助かった)。
本番前のスタジオのセットや床、その場にいた全員の服が卵かけご飯まみれになる事態となりました……(翌日の着替え持ってたので助かった)。
これが
こうなりました(一生忘れない光景だと思う)。
原作では鍋のフチをご飯粒で糊付けして固めるので、そこまで再現できれていればご飯粒もこぼれず、回転数も上げられたと思うのですが、おそらく番組側では、最後に鉄球がパカッと開く挙動を優先したかったのだと思います。
しかしあれくらいの速度でもちゃんとチャーハンが仕上がった点からすると、「火の玉チャーハン」はリアルで十分適用できる調理法なのではないでしょうか。
数年前にビッグ錠先生の講演会に参加したことがあり、そのなかで先生が創作のポイントを
「ウソのなかに、ほんの少し『真実』を混ぜること」
とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、やはり(大事なところでは)嘘をつかないレジェンドです。
そのほか登場した(かもしれない)マンガ飯
収録時にマツコさんに説明したり、スタッフに写真データをお渡しした(ので、紹介された可能性がある)マンガ飯をまとめました。
もしちらりと気になった作品があれば、こちらからどうぞ。
1.「サチのお寺ごはん」(かねもりあやみ / 久住昌之 / 青江覚峰)のお麩じゃが(ブログ公開前)
2.「オリオリスープ」(綿貫芳子)のエスニック風スープカレーうどん
3.「山と食欲と私」(信濃川日出雄)の炊きたてご飯のオイルサーディン丼(それどこ連載)
4.「人魚姫のごめんねごはん」(野田宏/若松卓宏)の鰹男のたたき
5.「3月のライオン」(羽海野チカ)のふくふくダルマ
6.「きのう何食べた?」(よしながふみ)の豚バラ、キャベツにら、春雨のモツ鍋風
7.「クッキングパパ」(うえやまとち)のタジンカレー
8.「クッキングパパ」(うえやまとち)のド迫力の激アツトンカツ
9. 「セケンノハテマデ」(サライネス) の喫茶「ビストル」のシカ肉サンドイッチ
10.「美味しんぼ」(雁屋哲/花咲アキラ)のタマネギの釜飯
11.「美味しんぼ」(雁屋哲/花咲アキラ)の中国風フライドチキン
12. 「ラーメン大好き小泉さん」(鳴見なる)の特製なんちゃってイタリアンラーメン ほか
13.「めしばな刑事タチバナ」(坂戸佐兵衛/旅井とり)の魚肉ソーセージのアマトリチャーナ風辛口パスタ.
14「空挺ドラゴンズ」(桑原太矩)の龍の尾身ステーキサンド
最後に
今回嬉しかったのはマツコさんが収録の終盤で、「再現することの楽しさ」について理解を示してくれた瞬間があったこと。それから、ビッグ錠先生が新作の構想について触れてくださったこと。これはファンにはたまらない発言でした。
と、個人的に貴重な体験ができたのですが、やはり準備に負荷もかかりますし、「テレビ受けすること」と「伝えたいこと」とのギャップに疲弊することも度々ありました。それも含めて、「まな板に乗る」くらいの気持ちでいく必要があるのかもしれません(いや、さすがにもう出ませんがw)。