演劇なら「ひとり芝居」はメジャーな形態ですが、「登場人物が一人だけの連載マンガ」は珍しいのではないでしょうか(短編ならありそうだけど)。
「吾輩の部屋である」は、家賃4.8万円の1Kアパートに住む大学院生・鍵山哲郎が主人公の、ひとり暮らしシチュエーションコメディ。
やたらと落下するスポンジ置きの吸盤、はじっこだけペロンとめくれるカーペット……IoTとか人工知能とか人類の技術は確実に進歩しているっぽいのに、なぜかいまだに我々を襲ってくる日常のしょうもないエラーの数々……。そんな諸問題と真剣に戦う哲郎の物語。
哲郎は理系なので、発想は一応ロジカルなのですが(吸盤を熱湯に漬けて形状を戻す方法は早速真似してみた)、料理にもその一端が見えます。
※【コマ引用】「吾輩の部屋である」(田岡りき/小学館)1巻より
学会用の資料作成を深夜に終え、小腹が空いた哲郎。
テレビで流れるグルメ番組の高級ラーメンを見て、インスタントラーメンで「究極のラーメン」を作ろうと思い立ちます。
※【コマ引用】「吾輩の部屋である」(田岡りき/小学館)1巻より
すかさず
「インスタントラーメンで…?」
とツッコミを入れるのは、部屋の炊飯器(※上図)。
そう、この漫画、登場人物が主人公しかいないので、会話相手は部屋のなかの家電製品や家具が担うのです。天才の発想か。
この無機物たちとのサイレントなボケとツッコミのやり取りが、味わい深くてたまりません。
材料:
塩ラーメン(作中の絵からすると、サ●ポロ一番が近そう)、ちくわ、もやし、冷凍ねぎ
……ご覧のとおり、こやつらで「究極のラーメン」は無謀では……と最初から不安を感じますが、哲郎は、チャーシューさえない状況を
「蛋白質さえ摂取できれば、脂質はむしろ害悪だ」
と独自理論で押し切ります。
換気扇さんからもツッコミされていますが、材料を油でいためている時点でその理論は崩壊しているのですが……。
鍋にお湯を沸かし、インスタント麺をほぐしたあと、さらにサラダ油を加えます。
※【コマ引用】「吾輩の部屋である」(田岡りき/小学館)1巻より
「油入れてんじゃねーか」
全家電がツッコミ。
インスタント麺は乾燥しているので「店のラーメンに近づけるには油が必要」というのが哲郎理論ですが、真偽のほどはわかりません。
最後の火を止めてスープを加たら、どんぶりに盛り付け、炒めた具材をのせて完成。
いかにもありあわせで作った感が、なんかいい。
食べた感想:
予想どおり「究極のラーメン」と謳うには地味すぎますが、ちくわは低カロリーで高蛋白質だし、野菜はたっぷり入っているし、夜食としては全然アリな一品。
ちなみに同じ1巻の17話にも、冷蔵庫の余り物でいきあたりばったりの謎料理を作るエピソードがありますが、これは「料理失敗あるある」としてリアルすぎて、さすがに食欲をそそられませんでした……。
コメント
コメント一覧 (6)
おすすめいただいた「巨娘」、こないだ購入しました!木村紺さん、神戸在住しか読んだことなかったので、読むのが楽しみです。
私もブログを通しておすすめの作品を教えていただいたり、「あれ読んだよ」と言っていただけたりするのが、何より楽しみです。
今後もぼちぼち続けるので、よろしくお願いしますmm
そのまま食べるとただの「ちくわラーメン」ですが、マンガを読んでからだと「哲郎が食べていたあのラーメン」になるので、美味しく感じる…のが、漫画飯の素敵なところかもw
誤字のご指摘ありがとうございました!(お恥ずかしい…)
訂正いたします。
お節介なんてとんでもないです、助かりました。
一人暮らしが長いと、この「家具との会話」もなんとなく理解出来るなぁと思いながら読ませて頂きました。
再現料理も楽しみなのですが、時折私が知らない漫画のお話が出てくるのも楽しみの1つです。(西村しのぶさんの作品との出会いはこのブログがきっかけでした…!)
そして僭越ながら読んで頂きたい作品がありまして…。
木村紺さんの「巨娘」という作品です。現在good!アフタヌーンで不定期連載されている漫画ですが、主人公が身長181センチの焼き鳥屋の店長です。絵柄や書き方が独特で、人によっては多少読みにくさを感じると思いますが、1話完結型でスッキリする話ばかりです。主人公の仕事柄、飲食店業界あるあるや焼き鳥をはじめとする美味しそうな料理や食べ物もよく出てきます。現在4巻まで出ているので機会があれば…。
長々とすみませんでした。
最後に、いつもブログの更新を楽しみにしています。最近はメディアに出てくるのもよく見え、「よく見てるブログの作者さんが出てて嬉しいけど、この人めっちゃ忙しくないか!?(゜〇゜;)」と勝手な心配をしています。
お身体にお気を付けて、楽しい再現料理ライフをお送り下さい!
前は、『囲炉裏の灰に埋めて調理がしたい!囲炉裏を、もてっ❕』ってどこのkingだよ❗っと思ったら、今度は、肉抜きのインスタントラーメン。守備範囲広すぎ〰❗