
食器を見たり集めるのが、わりと好きなほう。
引き出物向きのコンサバな食器をデパートでぶらぶら眺めるのも好きだし、陶器市やショップを冷やかしたり、100均で掘り出し物を見つけるのも楽しい。
以前住んでいたところのキッチンはかなり狭かったので、食器は最低限しか持てなかったんですが、去年引っ越して多少スペースにゆとりが出たので、少しずつ増やしてます。
で、ふと「漫画のなかでは、どんな食器が描かれてるのか」と気になって手持ちの本を調べてみたら、意外とあるわあるわ。そのなかから一部紹介してみます。

※【コマ引用】「数寄者やねん」(尾家行展/神江里見/講談社)より
まずは日本一の目利き、乱次郎の活躍を描いた「数寄者やねん」から。
いかにも劇画ッ!というタッチの絵とストーリーで、昔のモーニングはこんな渋いマンガも連載しとったんですねえ。
上下巻に分かれていますが、上巻は器の話が中心になっていて、どれも読み応えあります(「へうげもの」ファンは、あわせて読むと面白いかも)。
第8話の織部焼きの話は、器と料理の関係を考えるのになかなか興味深いです。
店の火災で骨董の織部焼きを失って以来、料理を出しても「客の箸の進みが以前より悪い」と悩む、老舗料亭の女将。周囲は思い過ごしだとたしなめるが、乱次郎が持ち込んだ作家の織部焼きと比べると、その差は歴然で……。
全く同じ料理でも、器が変われば無意識に味覚にも影響を与える、ということがよくわかるエピソードです。

※【コマ引用】「放浪の家政婦さん」(小池田マヤ/祥伝社)より
小池田マヤ先生の「放浪の家政婦さん」にも、骨董の和食器に盛りつけられた料理が登場します。
ただし、主人公・里の使い方はかなりフリーダム。
でっかいおにぎり、きゅうりのふじっ子昆布あえ、かぼちゃのあべかわ、みたいな素朴な家庭料理に普段使いする一方で、来客用の気合いの入ったイタリアンも和骨董に盛りつけちゃう。
和洋中と料理を選ばないし、そば猪口ひとつとっても「何盛りつけよう」と想像が広がるのが和食器の魅力ですよね。

※【コマ引用】「大阪豆ゴハン」(サラ・イイネス/講談社)1巻より
骨董の贅沢すぎる使い方、といえばサラ・イイネス先生の「大阪豆ゴハン」もハズせません。
資産家のボンで美術商の大清水さん(「オーシミッサン」と発音すべし)は、売り物の九谷焼でチキンラーメンを作って部下に注意されるし、安村家の松林は自分の部屋が茶室!という環境なので、茶釜でインスタントラーメンを友人に振る舞うというイージーなセレブぶり。

※【コマ引用】「大阪豆ゴハン」(サラ・イイネス/講談社)1巻より
「大阪豆ゴハン」は家族で食卓を囲んでるシーンがたびたび出てきますが、食器の並び方とか会話とか食べ方とかどれも味があって、つい目が釘付けになってしまう漫画のひとつ。
やっぱサラ先生のセンスがいいんでしょうね。

※【コマ引用」「Heaven?」(佐々木倫子/小学館)1巻より
さりげないセンスにふと目が止まる漫画といえば、佐々木倫子先生。
「Heaven?」はフレンチレストランが舞台で、「サービス」がテーマになっている作品。なので料理や食器は脇役なんですが、この脇役たちがすごく素敵なんです。
オーナーの黒須嬢の好みなのか、全体が落ち着いたシノワ系でまとめられてて、食後に出てくるコーヒーカップも、毎回中華風デザイン。
実際にウェッジウッドとかジノリとかで、こういうの出してるメーカーってあるのかなあ。あったら欲しいなあ。
佐々木先生は、食器やインテリアだけじゃなくて、女性キャラのファッションもすごく好みだったりします。「Heaven?」の黒須嬢はもちろん、「動物のお医者さん」の菱沼さん、「チャンネルはそのまま!」の雪丸嬢など、読むたびに「この服どこで売ってるのーー」ともだえるのは、私だけでしょうか……。

※【コマ引用】「西洋骨董洋菓子店」(よしながふみ/新書館)1巻より
漫画のなかのブルジョワな食器紹介、最後はやっぱりこれでしょうか。
よしながふみ先生の「西洋骨董洋菓子店」。 一流パティシエが作る絶品ケーキ、イートイン可能、営業時間は深夜2:30まで、店員は全員イケメン。「こんな店が実際にあったら、毎日通うよ……!」と、全女子が願うケーキ店「アンティーク」。
イートインで出される食器は、お冷やのグラスからティーカップにいたるまで、すべて本物のアンティーク。 第1話で、たまたま店に立ち寄った女性教師が、まじまじとカップを眺め、心から幸せそうにケーキとお茶を味わうシーンは、こっちにまで幸福感が伝わってきます。
デザートって、デザートそのものはもちろん、食器、空間、時間、雰囲気、その他全部含めて味わって満足するものなんだなー。

※【コマ引用】「西洋骨董洋菓子店」(よしながふみ/新書館)1巻より
個人的に一番食べたいのは「秋のチョコレートパルフェ アンティーク風」。
鹿の絵が描かれたアンティークグラスに、チョコレートとさつまいものアイス、マロングラッセ入りのブラウニーがもりもり。
ファミレスのパフェにしか馴染みがない私にとって、こんな高貴な見た目のパフェ、もったいなくて食べられないかもしれない……。
ながながと書いてしまった食器の話、次回は庶民編でまとめてみようと思います。
コメント
コメント一覧 (2)
(朝目新聞さんからリンク貼っていただいた件はびっくりしました)
沈婦人のシリーズはもっと色々試してみたいんですが、いかんせん私の料理スキルが追いつかずもどかしいです;
あと、Heavenのティーカップ情報ありがとうございます!!
うわーー、まさにこのカップです[絵文字:i-189] マンガのイメージどおりの素敵なデザインにうっとり……。そして値段の部分を見て、ブルジョワ価格ぶりにショックを受けましたw 一桁間違ってるとか……ないですよね……ハハハ。
庶民派から凝ったお料理まで、こちらで再現されたレシピはどれも美味しそうで、夜中に見てしまったことを後悔しています。
(個人的には「沈婦人・・・」レシピ再現にかなりびっくりしました。)
今は遡って順に記事を拝読しています。
というわけで、今更なコメントなのですが、こちらの記事にある「Heaven?」紹介画像右上のコマのティーカップ、持ち手の唐子から察するに、ハンガリーのブランド「ヘレンド」のシノワズリというシリーズのものではないでしょうか。
参考:http://www.herend.co.jp/product/cupselection/chinoiserie/index.html
お値段のほうはなかなかにブルジョワ価格のようです。
もし購入された際にはぜひ再現されたお料理とともに拝見できますことを楽しみにお待ち申し上げています。