「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子)のライラックのパイ

「キャンディ・キャンディ」を初めて読んだのは、確か小学生のころ。私はリアルタイム世代ではなかったけど、祖母が買ってくれた漫画を夢中になって読んだのを覚えている。



が、古本だったせいか最終巻だけ抜けていた。
「テリーとキャンディのその後、その後は…!」と子供心に悶絶したけどどうにもならず、2人の結末やアルバートさんの正体を知ったのは大人になってからだった。

名作の名作たるゆえんは、読み返すたびにすぐその世界に没入できてしまうところ。
今回も久々に文庫を開いて、完全に「テリーとアンソニーどっち派問題」が自分のなかで再燃したし(レット・バトラーvs.アシュリーから続く女子の永久命題)、「アニーの性格は正直ヒドくないか」とか「キャンディ、ポニーの家に帰省しすぎ問題」とか、誰かと語りつくしたい。ひと晩かけて。

「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子/中公文庫)1巻より
※【コマ引用】「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子/中公文庫)1巻より

そんな「キャンディ・キャンディ」に、ずっと気になっていた食べ物がある。
ラガン家でこき使われるキャンディが、厳しい大おば様のために作ったパイ。焼きたてのパイの上にライラックの花びらを散らした「ザ・女殺し」(=ガーリー)なビジュアルのスイーツだ。

ずっと疑問だったのが、このパイの中身。アメリカの定番といえばアップルパイだけど、ライラックが咲く季節とリンゴの旬は噛みあわない。

調べているうちに、ヒントになる情報を見つけた。
キャンディの故郷のポニーの丘や、ラガン家のあるレイクウッドの場所と思われるのは、ミシガン湖の周辺(※こちらのすんばらしいサイトによると、所在地については諸説あるようです)。
そしてミシガンの名産といえば、チェリー。
そうか、チェリーパイ! これもアメリカの定番だ。こういうのは自分のなかで勝手に合点がいけばいいので、心スッキリとチェリーパイをベースに再現することに。


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ライラックは国内では4月から5月にかけて出回る。切り花は通販ではあまり見かけないので、小まめに生花店を覗いてようやく手に入れた。

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チェリーはずばり、ミシガン産の水煮缶。カルディで発見。

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作り方:(※参考の分量は23cmのパイ皿1枚分)
チェリー缶は煮汁と果実にわけておく。

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まず煮汁に砂糖(100g)、水でといたコーンスターチ(10g)を加えてとろみがつくまで火にかける。
チェリーの実とキルシュ酒を入れて火を通し、冷ましておく。

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アメリカのパイ生地は練りパイ。折りパイみたいに気をつかわなくていいからラクだ。
薄力粉(300g)に塩(5g)、よく冷やしたショートニング(150g)を加え、スケッパーなどでショートニングを細かく切るように混ぜて粉となじませる。氷水(100cc)を少しずつ加え、生地をまとめたら冷蔵庫で1時間ほど寝かせる。

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冷やしておいた生地は、本体(2/3)と装飾用(1/3)に分け、それぞれめん棒で伸ばす。

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装飾用に分けた生地の一部で細い三つ編みを作り、パイ皿(薄くバターを塗っておく)の側面に貼りつける。

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パイ皿より一回り大きく伸ばした生地をかぶせ、冷ましておいたチェリーを加える。

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装飾用の細く切ったパイ生地を格子状に並べ、フチをととのえたら、表面に卵液を塗る。
190度に予熱したオーブンで50~60分ほど様子を見つつ焼く。

こんな感じに焼けました。
ライラックで飾り付け

冷ましてから、ライラックの花で飾り付け。
ライラックで飾り付け

けっこう楽しい。

「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子)のライラックのパイ
近くに顔をよせると、チェリーとライラックの甘い香りが漂ってくる。
大おば様も破顔一笑までいかなくても、片頬を上げるくらいのことはしてくれるんじゃないだろうか(武士か)。

「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子)のライラックのパイ
なんか食べ物というよりイメージ写真みたいだな。

「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子)のライラックのパイ
パイ皿に苦労して貼りつけた三つ編みの飾りつけは、ほとんど目立たなくてあんまり意味がなかった……。

「キャンディ・キャンディ」(いがらしゆみこ/水木杏子)のライラックのパイ

食べた感想:
せっかく飾ったライラックだけど、さすがに食べるときは横に寄せつつ……。
今回はサワーチェリーを使ったせいか、酸味が強くてプラムに似た印象。
ショートニングでさっくり軽めの仕上がりになったけど、濃厚なパイにするならバターで作ってもよさそう。

「ツインピークス」とか「赤毛のアン」とか、チェリーパイが出てくる作品はやけに多い。
それだけ北米でメジャーなスイーツなのだろうけど、日本人にはそこまでなじみがないので、食べる時はやっぱり「物語」を食べているような、特別な非日常感を味わえる。

バビーズのチェリーパイが本場に近い味らしいので、今度答え合わせとして食べにいってみようかな。

動画もどうぞ。(途中でカメラに粉がかかったみたいで、画面がぼんやりしてます…)



▼コミックは現在は絶版のため、中古本のみ
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