「きのう何食べた?」11巻の巻末予告ページで、次巻に登場するメニューとして描かれた「すき焼き」。
シロさんちのすき焼き、どんなものなのか激しく気になる……! と首を長くして待っておりました。クリスマスイブに発売された「週刊モーニング」に掲載されたので、早速再現。
(※ネタバレを避けたい単行本待ちの方は、すっ飛ばしていただければm_ _m)
※【コマ引用】週刊「Dモーニング」2016年12月24日発売号より「きのう何食べた?」(よしながふみ/講談社)より
「何食べ」は「週刊モーニング」月イチ連載ですが、毎年12月の掲載分はクリスマスor年末年始をテーマにした献立になるので、「今年は何かなー」といつもに増して楽しみなのです。昨年は歳末のお手軽モツ鍋、その前の年はおせち&ぜんざいでした。
そして2015年はすき焼きです。
作中で使われていたのは、デパ地下の和牛……というわけで、いいお肉を仕入れなければ。お財布が痛むことを覚悟して近所の精肉店へ。
しかしさすがパーリーシーズン、そこそこいい値段のすき焼き肉は完売していて、ショーケースに残っていたのは最高ランクの山形牛のみ。定価よりお安くなっているとはいえ、予算オーバーです。
しばらく苦渋の表情をしていたら、店のお姉さんが「……味は保障します」と力強いひと声をくれたので、ようやく決心がつきました。280gほど購入。キエーー(清水の舞台から飛んだ音)。
作り方:(※詳しい分量は作品をご確認ください)
まずは割り下の準備から。
容器に水、5cm角に切っただし昆布、酒、しょうゆ、砂糖を入れて混ぜておきます。
私は関西出身者で割り下にあまり馴染みがなく、市販品を買うことが多かったんですが、意外と簡単に作れちゃうものなんですね。
しらたきは熱湯でさっと茹で、水気を切ってから「井」の字に包丁を入れてカットしておく。
そのほかの材料としては、焼き豆腐(8等分)、春菊(3~4cm長さに)、生しいたけ(軸ごと縦半分に)。
そして今回の隠れた主役は、なんといってもネギ。たっぷり2本分、斜め切りにします。
ケンジにネギモリモリをリクエストされたシロさんの
「えー2本も!!」→「しかし俺もねぎは超好きだ!」の流れが妙にツボです。
今回のポイントその2は、すき焼き鍋のかわりにフライパンで作るところ。確かに2人分なら頻繁に具材を足したりしないし、これで充分かも。
熱したフライパンに牛脂を入れて溶かし、一度火を止めて、しらたきとしいたけ、焼き豆腐をフライパンに並べます。
しらたきに含まれる石灰が肉を硬くしてしまうため、しらたきは肉からなるべく遠くになるように配置。今回は焼き豆腐で「壁」を作って、しらたきの進撃を阻む陣形を組んでみました。
割り下を全部注ぎ、再度火にかけます(鍋が小さいことに気付いたので、ここで大きなフライパンに移し替えました)。
割り下が沸いたら、肉とネギと春菊を同じタイミングで鍋に並べます。
ちなみにネギはクタクタになったほうがお好みなら、最初の段階で入れたほうがよさそうです。
フタをして数分煮込みます。肉が煮えたら完成。
テーブルに白いご飯と生卵をセッティングして……
シロさんの実家で、すき焼きと必ずセットで出てきたという白菜の漬物も(市販品でOKのようですが、今回はたまたま家で漬けてたもの)。甘辛味に飽きたとき、しょっぱすっぱい味が箸休めとしてぴったりです。
家すき焼きって、この時以来かもしれない……。いくつになってもテンション上がりますね。
溶き卵に長ネギと肉をたっぷり絡ませていただきます。
食べた感想:
うまい、うますぎる。と十万石まんじゅうのCMみたいな感想しか出てきません。シロさんの「甘いと旨いは同じ語源」という豆知識のとおり、肉を甘くして食べる、というよく考えると不思議な食べ方がなぜこんなに美味なのか。文明開化してくれてマジ感謝、日本。
泉昌之の名作「かっこいいスキヤキ」に代表されるように、かつてのすき焼きという食べ物の背景には「牛肉への憧憬」がありました。すき焼きが登場すれば、肉をめぐる一触即発のバトルが始まる……という展開は、マンガ飯でも定番のシーン。
しかし肉に餓えていた若者も、中年になるとほどほどで満足するもの。そしてその周辺の、味がしみた具材に箸が進むという。
今回のいい肉を少なめに、野菜&豆腐たっぷりという構成は、まさに大人のためのすき焼き。
さて、宴はこれだけで終わりません。
ケンジがシロさんに教える、すき焼きの煮汁を使った〆の一品が待っています。
残った煮汁を半分くらい取り分けて火にかけ、ここにあらたに溶き卵を加え、フライパンをゆすりながら半熟状に火を通します。
これを軽くよそったご飯の上にのせれば、〆の卵どんぶりの完成。
ふわふわの卵に、肉の風味が染みこんだ甘辛のたれが絡んで、なんともいえない美味しさ。
〆もいいけれど、翌朝の朝食にもぴったりでした。
※【コマ引用】週刊「Dモーニング」2016年12月24日発売号より「きのう何食べた?」(よしながふみ/講談社)より
兄弟も多く、裕福ではなかったケンジの実家ではすき焼きのシメに、この卵どんぶりが定番だったそう。
シロさんちの白菜の話といい、すき焼きを目の前にすると、なぜか人は自分の家のことを語りたくなりますよね。
大人になって高級店で仲居さんにいい肉を焼いてもらえる身分になっても、幼い頃のすき焼きの記憶は上書きされない。すき焼きは永遠に「ハレの日の家庭料理」の代表なんだろうな。
本年の更新はこれで最後になります。
ブログのやめられないところは、どんなに個人的な趣味全開で突っ走っても、「私もこれ気になってました!」と同調してくださる方がいる点で、それを励みに今年も続けられました。
作りっぱなしで記事にできていない料理がまだまだあるのが心残りですが、来年もなるべくコンスタントに更新できればと思います。皆様も、どうぞよいお年をお過ごしください。
コメント
コメント一覧 (14)
ご両親、ナイスな一言ですねw>「とうとうばれたか」
でも確かに、久々に作って「すき焼きってお金がかかるんだ…」と実感したので、ご両親の気持ちもよくわかります^^;
わーー、お得に手に入れた高級肉で食べるすき焼き、まさに勝利の味!
私の近所のスーパーは、閉店間際でも肉はなかなか半額売りしてくれないので、うらやますぃ…!
(魚と違って、お肉って多少鮮度が落ちてもモーマンタイですもんね)
うれしいお言葉ありがとうございます!
わたし自身、マンネリになってた家事を楽しくしたいと始めた趣味だったので、楽しんでいただけて感激です。
今年も好きな漫画への愛を勝手に公開して楽しんでいこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします^^
おおー、私も大阪出身なもので、実家のすき焼きのシメはやっぱりうどんでした!
割り下ではなく砂糖&醤油で味付けするので、タレも濃い甘辛でおいしいですよね。
懐かしくて食べたくなってきました…。
すき焼きは、どうしても予算と質のバランスを考えさせられますね^^;
初日に肉、翌日に野菜という計画的食べ方、おいしそう!
こちらこそ、昨年は楽しいコメントをいただきありがとうございました。
今年もぼちぼちがんばりますので、よろしくお願いします^^
まさに「食の軍師」をイメージしながら書きました!
わかっていただけて、握手を求めたいくらいうれしいですw
「何食べ」のあの豪華ステーキも、いつか再現できるといいな~(予算がとれたら^^;)
大根入りのすき焼き、おいしそうです…!
牛肉×大根の煮物は鉄板だし、絶品でしょうね。やってみたい…(´ρ`)
確かに育てるのに時間がかかるので、肉よりもある意味貴重品ですねw
なんて親だ((+_+))
前日の夜、閉店間際にデパートに行き、
半額のすき焼き肉を狙いうち。1/2の閉店間際は、半額肉の宝庫でした。
半額の黒毛和牛で食べるすき焼きの、旨いこと旨いこと!!
6巻のステーキの回で出てきたアナンダマイドとやらが
脳内を駆け巡ったのは言うまでもありません。
今年も更新を楽しみにしています!
旧年中もとてもお世話になりました&ありがとうございました。
家事苦手なわたしがマンガ飯に出会い数年、本当に美味しそうなものは自作してみる&試すことの素晴らしさを知りました(笑)
その中でもマンガ食堂さんの存在はもうもう言葉で語れるものではありません!!
いつも
うっわー!これやってくれちゃう!!っていうジャストミートで(*^_^*)
この1年も楽しみにしております。
甘いタレにうどんがよくあいます。
自分は300gは欲しいトコですね
故にお肉の質は程々になる訳ですが……豪州産も最近は質が上がってきましたけど
初日は肉をがっつり、翌日よく染みこんだ野菜を食べる感じです
卵とじ丼は似たようなのを作った感じはありますが、その時は肉を喰い切り野菜メインです
しかし肉の旨味を吸い込んでるので全く物足りないって事はありませんね
シロさん家ではコンロをかけず、そのまま冷める前に食いきって残りの汁でシメをする様で
コンロで弱火でクタクタ煮るのが個人的に好きなんでどーしてかなぁとは思いました
本年も管理人様には楽しい話題を頂戴いたしました
来年もよろしくおねがいします!
マンガ食堂さんの更新、来年も楽しみです!
良いお年をお迎え下さい。
ステーキといいローストビーフといい、何食べの牛肉のご馳走はとても
食べたい!という気持ちにさせられ危険です。
余談ですが豆腐の陣形に食の軍師が浮かびました(笑)
お雑煮ほどではないにせよすき焼きもかなり家庭・地域の特色がでる料理ですよね。
変わったところではうちの親の実家あたりでは白菜ではなく大根を入れます。
下ゆでしてからじっくり煮込んでとろとろになった大根はたまりません。
ネギと並んで後半は取り合いでしたw 肉はすぐ煮えるけれどネギと大根はじっくり育てないとならないので……。