カラスヤサトシ先生のカレー愛と探究心が詰まった「びっくりカレー」シリーズは、名店の食べ歩きだけでなく、地域性によるカレーの違いやスパイスの知識など、多岐に渡るテーマが楽しめるグルメエッセイ。
※【コマ引用】「カラスヤサトシのびっくりカレー おかわりっ!!」(新書館/カラスヤサトシ)より
もしも再び鎖国して、スパイスの輸入が途絶えてえしまったら、日本のカレーはどうなってしまうのか? そんな疑問をふと抱いたカラスヤ先生が考案したのが、「日本独自のスパイス」だけで作った「和カレー」。
「日本に“スパイス”なんてあったっけ?」と疑問に思う人も多いかもしれませんが、 そもそもスパイスの定義は「食品の調理のために用いる芳香性と刺激性を持った植物」……だそう(全日本スパイス協会のサイトより)。
つまり、一般的にイメージするようなコショウやクミンといったエスニックな香辛料だけではなく、西洋ハーブや日本の「薬味」も含まれるようなのです。
ネギやシソも「スパイス」になる、と言われると、目からウロコな気持ち。この「和カレー」は日本のカレー文化に一石投じる壮大な実験、と言えなくもありません(?)。
材料:
※レシピは巻末の「和カレーレシピ対談」にカラスヤ先生の手書きメモが掲載されているので、そちらを参考にします(分量はコミックをご確認ください)。
みょうが、白ネギ、大葉、梅干し、しょうが、ししとう、青唐辛子、しいたけ、辛味大根、りんご、山椒、ゴマ、ねりがらし、ねりわさび、かつおぶし、ゆずこしょう、かんずり、一味、赤唐辛子、ウコン……と、考えうる「日本の香辛料、薬味」を総動員。
これを見てカレーの材料とは誰も思うまい。
作り方:
サラダ油を熱した鍋で玉ねぎをいため、しんなりしたらにんにく、鶏肉(今回は手羽元)、にんじんを入れて炒めます(作中レシピではじゃがいもも投入していますが、煮崩れそうなので今回は後で)。
ここは、ごくふつうのカレーの工程ですね。
さてここから和スパイス投入祭り。 まずはみじん切りしたみょうが、白ネギ、大葉、梅干し、しょうがという「なんか全員豆腐にのってそうな」メンバーをドサッと。
続いて細切りしたししとう、青唐辛子、しいたけを投入。 さらに山椒、ゴマ、桜エビ、青のり、かつおぶし、細かく刻んだみかんの皮を投入。
これらを炒めていくうちに、むせかえるような香りが立ちこめてきます。この感じ、「スパイスっぽい」と言えなくもありません。ひとつひとつはおなじみの食材なのに、未知のケミストリーが鍋のなかで起こってる予感……。
ちなみにカオスな材料のように見えますが、大葉は「クミンと匂いの成分が似ている」という話によるもので、梅干しやしいたけはカラスヤ先生が取材で食べたカレー店で実際に遭遇したものだそう。
「美味しんぼ」のカレー回にも、本場インドのカレーでも梅干しやかつおぶしに似た食材を使う、というエピソードがありましたね。
ひたひたの水を注ぎ、煮立ってアクが浮いてきたら取り除きます。
ここからさらに闇鍋化が加速していきます。 ねりがらし、ねりわさび、かつおぶし、辛味大根・リンゴ・にんにく・しょうがのすりおろしを加えて煮立たせます。 このあたりでジャガイモも入れる。
かんずり、ゆずごしょう、一味、赤唐辛子を少量ずつ投入。(かんずりはゆずごしょうの赤唐辛子版) カラスヤ先生が「和製レッドカレーペーストとグリーンカレーペースト」と名づけたほど、重宝するスパイスのようです。
カレーらしいとろみをつけるのは、水で溶いた本葛(片栗粉でもOKのよう)。さらに醤油で味を調えます。
醤油が入ると色も茶色っぽくなって、ようやくカレーっぽさが芽生えてくるのですが、どうしても「肉じゃが」感から脱却できません。そこで登場するのが粉末うこん(沖縄産)。
カレーの基本スパイスであるターメリックと同じだけに、うこんが入ると一気にカレーらしさが引き上げられました。 想像してたよりカレーっぽい!(見た目)
食べた感想:
スパイスというより「薬膳」っぽさを感じる仕上がりで、和食でもなく、かといってエスニックでもない不思議な料理。
そしてめちゃくちゃ辛い! ドバドバいろんな材料を入れているうちに、唐辛子の総量が上がったのでしょうか。野菜の甘みも溶け込んでいるので、甘さと激辛が交互に押し寄せてきます。
と思うかも、という説明が作中にありますが、ものすごく的を射ている表現でした。もしいきなり平安時代にタイムスリップして そこで助けられた豪族の家でふるまわれた食事の中にこれがあったら 「わっ……スゲー これカレーや!」
もし万が一鎖国しても、日本のカレーは大丈夫……かもしれない(あえていうなら、クミンだけは許してほしい)。
実験終了後はカラスヤ先生にならって、市販ルーを投入してみましたが、和のスパイスのおかげか何だか味に奥行きのあるおいしいカレーに仕上がりました。
コメント
コメント一覧 (6)
確かに食い意地の張った身としては、鎖国しても食べ物の輸入だけは許してほしいですw
黒コショウ、江戸時代は七味よりも先に普及してたんですねー、びっくり。
今度から試しにうどんにかけて食べてみようかしら……。
鎖国はしても、食材の行き来はしたほうがいいと思います
長崎の卓袱料理(日本料理+中華+オランダ)だって鎖国時代に出来たものですから
しかし、カレー見たく香辛料で全てが決まる料理で香辛料の制限がかかるとこのような奇天烈なものになるのか
漢方を使った……とかになったら薬膳になるのかなぁ?
あ、それとまかないくんで知りましたが黒胡椒は江戸時代に入ってきてますね
当初は饂飩に粉末化したのをふりかけてたそうで
それから唐辛子の普及と七味の開発により、割高な輸入物の胡椒より国内で完結生産ができる七味か一味に取って代わられたそうな
カラスヤ先生、食モノに限らず、こういう「ふと思いついた」系の実験レポが面白くて好きですw
黒コショウって意外と日本に早くから根付いてたんですね~!
なんとなくイメージで、最近入ってきたものだと思っていました;
わー、なんと詳細なかんずり情報!
ビンの残り、どう使おうかなあ、と思っていたところだったので助かります~。
冷しゃぶとあわせるとか思いもよりませんでした。(おいしそう!)
しかし1キロはスゴいw
「雷」ってこの商品でしょうか?
和風のタバスコっぽい感じでおいしそう(´u`) 見つけたら試してみます!
http://kanzuri.shop-pro.jp/?pid=2663162
食わず嫌いにしていた作者さんですが結構面白そうな内容だ☆
日本で昔から使われている薬味や香辛料(あえて和名でw)でカレーを作るなんて着眼点がすごいですね!
見た目的には確かにカレーだし。斬新だ和カレー!!
ちなみに黒胡椒とかも日本では古くからすでに使われてたみたいですから、もしいつか再チャレンジする機会があれば材料に加えてみてもいいかもですね☆
umebonさんのマンガ飯に対する探究心には頭が下がります。
そして私がスパイスの中で最も愛する「かんずり」の登場に
コメを書かずにいられなくなりました。
特に今の季節、豚の冷しゃぶに付けたり、
冬ならば、おでん、豚汁にもつけます。
特に豚肉との相性最高です。スルメに混ぜておつまみにもいけます。
私は以前、新潟の新井にある道の駅で、1キロ入りを購入し
お店の人を驚愕させたことがあるんです。
かんずりを作っている会社から出している「雷」という
液体のスパイスはタバスコのように酸っぱくなく
コクが有り、和洋中、何でも合う最高のスパイスです。
「雷」は赤と緑がありますが、赤がオススメです。
機会があれば是非お試し下さい。