「あたりまえのぜひたく。」(きくち正太)のきくち家特製中華茶碗蒸し

「おせん」シリーズを完結させたきくち正太先生の新作は、幻冬舎のWEBサイトの連載をまとめた「あたりまえのぜひたく。」。きくち家の日常の料理事情を描いたグルメエッセイ漫画です。

あたりまえのぜひたく。 (一般書籍)
きくち正太
幻冬舎コミックス
2017-08-01



七輪や骨董を普段づかいするなど、作品世界そのままの美学にあふれたきくち家の食卓。

とくに仕事場のアシスタントさんたちのまかないを含め、一手に引き受けるきくち先生の奥様の手腕は、これまでもたびたび後書きなどで描かれていましたが、本作を読むとあらためてスゴいです。

「一升庵のおせんさん」は奥様がモデルになってる部分が大きいんじゃないかしら…と思ってしまうくらい。

「あたりまえのぜひたく。」(きくち正太/幻冬舎)より
※【コマ引用】「あたりまえのぜひたく。」(きくち正太/幻冬舎)より

道具にこだわるものの、「電子レンジは持っていない」というきくち家が、「不便じゃないですか?」という周囲の声に対しアンサーとして提示するのが、25年モノの直径40センチの巨大中華鍋と中華蒸篭(せいろ)。

この2つの道具さえあれば、焼く、炒める、煮る、揚げる、蒸す、温める、なんでもひととおりできる、というのです。

そのひとつが、ふわふわトロトロの中華茶碗蒸し。大きな調理器具にあわせ、直径27センチの大鉢でドーンと5~6人分提供するなんとも豪快な料理です。

ここは同じサイズの鍋や蒸篭を用意してチャレンジしたいところですが、今回は作中のレシピの1/2程度にスケールダウンして、手持ちの道具で再現してみることにします。


鶏がらスープ 
作り方:
まずは茶碗蒸しのキモとなる鶏がらスープを作ります。

作中では詳しく描かれていないのでここは自己流で。 余分な脂と内臓を取り除いた鶏がらをネギ(青い部分)とショウガと一緒に水から煮て、アクをとったら圧力鍋に10分ほどかける(圧力鍋がない場合も、しっかり煮だしたほうがおいしい)。

必要な分だけ塩で味をつけ、常温に冷ましておく。

豚バラとねぎを炒める 
茶碗蒸しの具は超シンプル。 1cm角程度に切ったしゃぶしゃぶ用の豚バラ肉とネギのみじん切りをざっと炒め、醤油で味をつけたもの。

鶏がらスープ+たまご 漉す 
割りほぐした卵と常温にした鶏がらスープを混ぜ、漉します。

そそぐ 蒸す 
具材を入れた丼鉢に漉した卵液を静かに注ぎ、蒸し器にかけます。

原作レシピは「蓋をして最初は強火で5分、その後は中火で20分から25分」蒸す段取りとなっていますが、サイズダウンして作る場合は火加減が強すぎたようで、卵液が沸騰して食感が悪い仕上がりになってしまいました……。

分量を半分にした場合は、蒸し時間も半分程度でいいかと思います。

蒸しあがり 
これは二度目の挑戦の成功作。竹串を刺して、中から透明なスープが出てくればOK。ちょうどいい感じに蒸しあがりました。 細ねぎを薬味に添えて、丼鉢のまま豪快に食卓へ。

すくう2

小鉢 
食べた感想: 
フルフルの食感のあと、口のなかに鶏がらのスープがあふれだして、作中の言葉を借りるなら「鶏のスープなのか卵なのか分からない」状態。これはもう「茶碗蒸しの形をした飲み物」と言ってもいいかも。

豚バラと白ネギを炒めた具がいいアクセントになって、和食の茶碗蒸しとはまた別の、濃厚なおいしさになっています。作中の半分ほどのサイズとはいえ、3~4人前くらいの分量でも2人でぺろっと平らげられました。

しかし高い材料なんて何ひとつ使っていないのに、このゴージャス感は何なのだろう。 必要な部分にこだわる、手間をかける、といった美学さえあれば、お金をかけなくても至福の味に出会える。まさに本のタイトルどおりのレシピでありました。

あたりまえのぜひたく。 (一般書籍)
きくち正太
幻冬舎コミックス
2017-08-01



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