チョコレートに魅せられた男、ジャン=ルイを主人公にした短編集。
本業はやり手の弁護士、ショコラトリーでケーキ4つとショコラ13個を一人でたいらげるほどの甘党にもかかわらず、痩身を維持する美中年。パリを舞台に、彼とショコラとさまざまな男女が織りなす8つのエピソードがつむがれます。
ちなみにコミックの装丁も、高級ショコラのパッケージのように美しいのです。中のページもチョコレート色のインクで刷られているという徹底ぶり。
最近は電子書籍を買う機会も増えましたが、凝った装丁の本はやっぱり手元に置いておきたくなってしまう。
※【コマ引用】「その男、甘党につき」(えすとえむ/太田出版)より
蠱惑的でありながら、稚気に富む。相反するショコラの魅力がよく表れているのが、「ヌテラのクレープ」のエピソード。
パリの街角で、迷子の少女・ユナと出会ったジャン=ルイ。幼いながらレディーの風格漂う彼女は女優志望で、砂糖たっぷりのショコラは母親から禁止されている。
ルイは彼女を庶民的なカフェにエスコートしてクレープを注文し、これまた庶民が愛する「ヌテラ」をたっぷりと塗って食します。
「そんなのチョコレート味の脂肪のかたまりじゃない」
ユナは露骨に嫌悪感を表しますが、ルイは
「その通り だって今日はマルディ・グラだ」と一言。
「マルディ・グラ」とは謝肉祭の最終日。明くる日からの長い断食に備え、人々が最後に食欲を爆発させる日。フランスではこのマルディ・グラにクレープを食べる習慣があるようです。
その意味をふまえると、ショコラを頑なに拒否していたユナが、ルイの誘惑に負けてスプーンたっぷりのヌテラをうっとりと口に含むのは当然の成り行きなのかもしれない。
ちなみにこちらがそのヌテラ(写真撮り忘れたので以前撮ったやつ)。日本でも輸入食品店や大き目のスーパーで売ってますね。
ヤマザキマリ先生の「ヌテッラのティラミス」でイタリア人のすさまじいヌテラ愛が紹介されてましたが、フランスも負けてないようで、街角のクレープ店ではだいたいトッピング用のヌテラの大瓶がドーーンと置かれてるようです。(クレープ自体も日本と異なり、この話のようにシンプルな食べ方が主流みたいですね)
「nutella crepe」で画像検索したら、ヌテラ版のミルクレープみたいなのも出てきたけど、さすがにカロリー的にドクターストップをかけたいレベルだった……。
さて少女が陥落した庶民的なヌテラのクレープ、どんな味なんでしょうか。
作り方: ※辻調理師さんのサイトのレシピを参考にしています。
ボウルにふるった薄力粉、卵、砂糖を入れてなめらかになるまでよく混ぜる。
フライパンにバターを入れて熱し、キツネ色になるまで溶かす。これをボウルに加えてよく混ぜる。
牛乳を少しずつ加えて混ぜ、なめらかな生地になるよう一度漉す。ラップをして一時間冷蔵庫で休ませる。
溶かしバターを作ったフライパンをキッチンペーパーで軽くぬぐい、中弱火でクレープ生地を焼く。お玉1杯分より少な目の量を流し、生地の端が乾いたら裏返す。裏面はさっとでOK。
焼けたクレープを折りたたんでお皿に盛り付ける。 クレープにヌテラをたっぷりとのせて完成。
食べた感想:
焼き立てのなめらかなクレープ生地にヌテラをたっぷりからませて食べると、大人も子供も国境も超えて愛されるおいしさだと実感。そしてクレープ自体の味を楽しむには、これくらいシンプルなトッピングのほうがいいのかも。
ちなみにヌテラは純粋なチョコレートではなく、ヘーゼルナッツペーストにカカオを混ぜた「チョコ・スプレッド」。
一流ショコラトリーから庶民の味まで、「ショコラに貴賤はない」とばかりの守備範囲をみせる、ジャン=ルイのショコラ愛にも脱帽です。
えすとえむ先生は、「うどんとフェティッシュ」というスゴい取り合わせのテーマの名作「うどんの女」もありますが、こちらもおすすめ。
コメント
コメント一覧 (12)
はじめまして、書籍版をご覧いただいたのこと、ありがとうございます!
書籍からブログを見つけていただけることもあるのだな、と感慨深いです。
ご養生中の大変ななか、コメントいただき恐縮です。ヌテラのクレープ、シンプルで美味しかったので、ぜひお試しください!
二次元の食べ物が、3次元になって、食べられるのは魔法のようです。本当に楽しませていただいています。私は病気が治ってきた身なので、これから作ることになります。楽しみです。
※いただいたコメントになかなか返信できない状態が続いており、大変申し訳ありません。
※アダルトやスパム系と判断したコメントについては、承認前に削除させていただきます。ご了承下さい。
はじめまして、コメントありがとうございます!
そうなのです、一か月更新しないなんてザラの状態だったのですが(申し訳ない…)、最近時間の使い方を覚えたのか(?)心を入れ替えぼちぼち更新をしておりますm_ _m
今後も気が向いたときにでも、ご覧いただければうれしいです
≫ぬてら
おおお、粉砂糖という手があったんですね!
しかも砂糖をすりつぶして作れるとは知りませんでした…(いち子なら、市販品じゃなくてそっちでやってそうな気もしますね^^)。
すてきすぎる情報がありがとうございます!
カシューナッツ版もおいしそう…!
手作りティラミスを作りたくで簡単なレシピを探していたのですが、そういえばumebonさんのブログにあった!と思い出し訪れてみれば、再開されていたのですね。
暫く更新をお休みされて自分も伺う事がなくなってしまったので嬉しいです。
ヌテラで思い出したのですが、以前五十嵐先生のぬてらを再現された時、砂糖が溶けなくて舌触りが良くなかったそうで。
普通の砂糖ではなく粉砂糖でやればいけないかなと思いました。
市販だとコーンスターチが入っているので、気になるならば砂糖をすり鉢で細かく擦れば買わずにすみます。
私もヘイゼルナッツはないので代わりにカシューナッツで挑戦してみようと思います。( ´ ▽ ` )ノ
冷えたバターと砂糖!わー、ほんとにシンプルな食べ方ですね。
どんな味なんだろう、日本の「じゃりパン」みたいな感じになるのかしら…試してみたいです。
クロテッドクリームもおいしそう! 確かにあれもハイカロリーですね。
シンプルだからといって、カロリーが抑えられるわけではない、ということでしょうか…(悲)。
ダイエット中とかにヌテラたっぷりクレープをドヤ顔で目の前でほおばられたら、私も憤死するかもしれませんw
たしかにバナナぎっちり詰めて食べるのもおいしそう…!
デコラティブなクレープに慣れた日本人としては、やっぱりあれこれトッピングして楽しみたいですよね。
ヌテラ、ほんとに食べやすいので、油断してたら一瓶空けちゃう勢いですよね^^;
最近、ヘーゼルナッツ味が大好きなことに気付いたので、そのせいかも…。
惣菜系のクレープわたしも好きです…!
(意外と「え~」と拒否反応示す人もいますよね)
年末年始は毎年更新が滞ってしまいがちなので、今のうちに書けるだけ書こうと思ってます^^; ありがとうございます!
>イタリア産ヌテラはイタリアでしか売っていない
えー!そうなんですね@@; 意外に手に入れるのがハードル高そう…。
しかし国境を越えて車を飛ばす、ってウケましたw
島国だとなかなかイメージしづらいですが、「隣の県に行く」くらいの感覚なのかしら…。
生クリームと苺ジャム、クロテッドクリームとジャムも合います。ほらハイカロリー…
クレープにヌテラをたっぷり塗りたくって食べたい。ユナが卒倒しそうなレベルで
食べたくて仕方がない。バナナクレープ大好きな自分としてはハス切りにした
バナナもぎっちり載せたい所……流石にやり過ぎかなとは思いますが
この手の甘味には無粋だとわかりつつも、ついついあれこれ乗せて食べたくなるのが人の業かなぁと
チョコレート好きだったら好まれる味だと思いますが、ただカロリーを考えると毎日は食べ辛い(^▽^;)
クレープなんて久しく作ってないなァ。
ちなみに惣菜系のトッピングが好きです(*´∀`*)
ヌテラ、本当に美味しいですよね〜。コレ、食べたい…
以前にヌテラの記事の時に産地の話がありましたが、イタリア産ヌテラはイタリアでしか売っていないと聞いたことがあります。味が違うのでEU圏の方はイタリアまで車を飛ばすらしいですよ〜。