ゆで卵の丸かじり (文春文庫)
東海林 さだお
文藝春秋
2014-07-10


久々に東海林さだお先生の「丸かじり」シリーズより。

わたしは文春文庫派なのですが(でもたまに我慢できず、先に出る朝日新聞出版のも手に取っちゃう)、最新刊の「ゆで卵の丸かじり」に、久々にさだお先生らしいチャレンジ精神がいかんなく発揮される回があったのです。

かつて
口にかっぱえびせんは何本入るのか
スイカを丸ごとむいて食べてみる
おかずなしで丼めし山盛り完食
など、非常にどうでもいいのにワクワクしてしまう、ミニマムかつエクストリームな挑戦を成し遂げてきたさだお先生。

文庫最新刊の「決行! 炭酸水!」のエピソードでは、炭酸水の秘めたる可能性に目をつけます。

常軌を逸した猛暑が当たり前となった日本の夏、永谷園が売り出す「冷やし茶漬け」とハイボールブームで注目を浴びる炭酸水を見て、「冷たい炭酸水をそそいだお茶漬け」を思いつくのです。

さらには、ソーメンや味噌汁も水のかわりに炭酸水を使うとどうなるのか? と好奇心はエスカレート。

こんなことされてるけど、御年76歳ですよ(現在)! 漫画界とエッセー界の重鎮にしてこの子供のような好奇心、脱帽です。


茶漬け 
炭酸茶漬け: 
まずはコレから。 エッセイの最初に梅干し茶漬けについて触れてる箇所があったので、今回はそれで。

……というのは言い訳で、さすがにシャケとかタラコとか明太トンコツとかは炭酸でかっこみたくないな……という、日和った部分もあります。 

茶碗にご飯をよそってお茶漬けの素、梅干しをのせ、上から炭酸水をどばどば。泡立ってる……。 

茶漬け2 

――アッというまにかっこんで、旨い、と叫び、ゲフッとげっぷ。

という本文のとおり、炭酸がシュワシュワいっているうちに、ガーッとかきこみます。

口のなかに冷たい炭酸の刺激とご飯粒、梅の酸味が一気に入ってきて、「なんだかわからないけど、うまかった」という不思議な食後感。普通のお茶漬けのしみじみ感とは真逆のおいしさ。 

ちなみにご飯は少な目で、冷ごはんにしたほうがさっぱりしておすすめ(熱々だと炭酸水がぬるくなっていまいち)。 梅以外だと、わさびや海苔味も合いそう。

「炭酸料理、いいかも!」とはずみがつき、ほかに紹介されてたメニューも試してみます。 まずはソーメン。いつものセットに、炭酸水のボトルがまぎれこむ違和感。 

そうめん 
希釈タイプのめんつゆを、炭酸水で割ります。炭酸水をたっぷり目にして、「薄め」に仕上げるのがコツだそう。

そうめん3
麺を入れるとさらにシュワシュワ。お茶漬けより、見た目は涼やかでおいしそう。 

ソーメンをひたしたあとは、そのままつゆと一緒にすすりこむように食べるのがベストだそう。「つける」のではなく、つゆも一緒に「飲む」イメージ。 

そうめん4 
感想。最初の一口は「お、アリかも」と思うのですが、炭酸で割るとつゆに苦さが出てしまうようで、食べ進めると「普通のつゆ」に戻りたくなってしまう……(使う炭酸水やめんつゆによるのかも)。 

ただお茶漬けと同じく、普段心安らかに食べているソーメンが、炭酸ですすると「激しい食べ物」になるのが面白い。

最後の挑戦は「味噌汁」。 
一番不安な感じですが、「意外にも一番よかった」とさだお先生が太鼓判を押してるので、先入観は捨てることに。 だし入りの生みそを容器に入れて少量の水でとき、炭酸水をそそぎます。 

みそ汁 
激しく泡立っていて、コーヒー牛乳っぽくも見える。

思い切ってゴクゴクいくと、コップで飲んだせいか「炭酸ドリンクなのに……しょっぱい」という状況に、味覚が混乱していくのがわかります。 

炭酸水ブームで「甘くない炭酸」には慣れたはずなのに、「しょっぱい炭酸」に人類の舌はまだ追いついていないのかもしれない……。 

私はお茶漬けが一番おいしかったけど、さだお先生は味噌汁がベストとおっしゃっているので、人によって好みは違うかも。

「食の常識をくつがえす」ひとり遊び、手軽にできるのでご興味ある方は夏の間にいかがでしょう。


イベントのお知らせ: 
枡野浩一×梅本ゆうこ×MoF 「大学生が企画!文学を味わう“ノベライス” ?『僕は運動おんち』のミルクサイダーと『こころ』のカステラを味わおう」 
8月22日(金)20:00~、下北沢のブックカフェ「B&B」で開催するイベントです。
学生さんが主催する 「文学と食」にまつわる企画をお手伝いさせていただきました(文学に縁もゆかりもない人間なのにアレですが…)。 

お笑い分野でも活躍されている歌人・枡野浩一さんもご出演されるので、ファンの方はぜひ! 

▽詳細とチケットのお申込みはこちら http://bookandbeer.com/blog/event/20140822_bt/

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