
今や漫画の一大ジャンルになった料理漫画。 レシピ本級の実用性、役に立つ薀蓄、食にさまざまな角度で切り込んだ作品が増え、料理好きにも漫画好きにもうれしい状況になっています。
そんな恵まれた時代こそ読み返したいのが、ビッグ錠&牛次郎コンビ。
「包丁人味平」に続き、二作目の料理モノとなったのが「スーパーくいしん坊」。80年代の作品らしい明るくカラっとしたノリが特徴の、愛すべき作品です。
イロモノ的な側面で語られることが多いですが、数年前に作った「水なしスープの特製カレー」が意外においしく、荒唐無稽なようで実は料理のメソッドに(たまに)忠実な点に驚いたのでした。
そんな同作には、ほかにも気になる料理がありました。

※【コマ引用】「スーパーくいしん坊」(ビッグ錠/牛次郎/講談社)3巻より
主人公・香介の通う学校で毎年恒例となっている、生徒参加の交流会。そこに出る夕食は地元の食堂「長寿庵」の丼物が定番。
しかし生徒から「丼物は飽きた、今年は手軽に食べられるハンバーガーがいい」と要望が出て、学校側もこれを承認。すでに50人分の仕込みを終えていた長寿庵の主人は困り果てます。
そんな窮地を救うため、香介が考案したのが「三丼フライ」。 タイ焼きからヒントを得て、アツアツの状態で手軽に食べられるようにした「ハンバーガーに負けない」丼モノ。

※【コマ引用】「スーパーくいしん坊」(ビッグ錠/牛次郎/講談社)3巻より
作り方は、カツと天ぷらと鳥肉と玉ねぎを卵とじした具をピラフで包んで揚げる、というもの。カツ丼・天丼・親子丼、3つの味を一度に楽しめるから「三丼フライ」というわけです。
「実際にウマいかは知らねえ、でもイカしてるだろこのアイデア」
という作者の天の声が聞こえてきそうな強引さにシビれます。
「揚げ物をご飯で包んで揚げる」文字にすると簡単そうだけど、果たしてほんとにこんな料理可能なんだろうか、と数年来気になっていたのです。
実用的なレシピも大好きだけど、こういう「やってみないとわからん」グレーゾーンを攻めてくる料理ほどワクワクする。

作り方:
まずはピラフ作りから。ピラフといっても具なしのバターライスみたいな感じ。 みじん切りした玉ねぎをバターでいため、米を加えて半透明になるまで炒める。
コンソメスープで炊飯し、炊き上がったらパセリと塩コショウを入れて混ぜる。

具材の親子丼のアタマ、天ぷら、トンカツを準備。 親子丼のアタマは、鶏肉と玉ねぎを薄めためんつゆで煮て、卵でとじたもの。卵とじする前に片栗粉でトロみをつけて、汁もれしにくいようにしました。
トンカツは豚ヒレを一口サイズにして揚げます(天ぷらは力尽きたので市販品……)。

炊き上がったピラフで土台をつくり、その上に天ぷら、親子丼のアタマ、トンカツを並べます。 漫画だと各具材の間隔がもうちょっと空いてますが、想定以上に巨大になりそうなのでそこは断念。

上からピラフをのせて具材を包む。
ここからコロモをつけて揚げるのですが、まとめるにはライスコロッケのようにご飯をぎゅぎゅっと固める必要があり、結果的にこんもりしたオムライスみたいな物体に仕上がってしまった。いいのかこれで。
固める時は、手に小麦粉をつけるとご飯粒がくっつきません。


ライスが崩れないよう慎重に注意しながら、とき卵とパン粉をつけ、油で揚げます。中の具に生モノはないので、表面だけカラっと揚がればOK。
ここでふと疑問に思ったのが、「ご飯をくるむコロモは果たして本当にパン粉でいいのか?」という点。 漫画を見返すと、コロモが白っぽく描かれているし、天ぷらという線もありえるかも……。


というわけで、ついでに天ぷら版も作ってみることにした。同じように固めたライスの上から天ぷらのコロモをかけて揚げます(もはや天ぷらの工程と思えない雑さ)。

揚がった2つの三丼フライ。どちらもワラジくらいの大きさで、無駄に迫力があります。

上にたくあんをのせ、アルミホイルで包み、しばらく置いてからいただきます。 カツ版三丼フライ。

天ぷら版三丼フライ。

手に持って食べるとこんな感じ。ハンバーガーよりナウいか?と問われると、ナウくなる未来がいずれ来るかもしれない、としか言えない。

見苦しくて恐縮ですが、断面図です。



※【コマ引用】「スーパーくいしん坊」(ビッグ錠/牛次郎/講談社)より
_人人 人人 人人 人人 人人 人人 人人_
> フライのなかにまたフライがはいってる <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
……という状況は、再現してみてもやっぱりビックリです。なんだろうこの非現実感。
個人的には天ぷら版より、カツ版のほうがライスコロッケ風で好みかも。巨大ゆえに食べ続けるとちょっと味が単調になってきますが。
そして育ちざかりの中学生には「揚げ物オン揚げ物」はそれほど苦ではないかもしれませんが、胃薬がお友達状態のアラフォーの自分にはなかなかキツいものがあります。
カロリーもメロンクーヘン級のスゴいことになってそう。色んな点で中年にはやさしくないメニューです。
それよりこのめんどくさい工程の料理を50人分作るって相当大変だったと思う。長寿庵のおっちゃんも、普通にハンバーガー作った方がよかったのでは、と今回は身もふたもない結論になりました……。
コメント
コメント一覧 (14)
感動男さん
素人なもので、見た目は不格好になってしまいましたが^^;
ありがとうございます!
やれば、できるもんなんすね!
驚き!
実写映画化ですね。
おおなるほど、確かに蕎麦屋という設定を考えたら天ぷらの衣の可能性も高いですね!
(両方のコロモで再現しているのでご覧ください^^)
やり直し!
もったいないお言葉ありがとうございます、
リアルタイムで読まれていた方にご覧いただけてうれしいです^^
バッター液は思いつきませんでした…!天ぷらとまた違った食感になりそうですね。
タワーリングカレーと火の玉チャーハン、いつか作れるようになるといいのですが@@;(料理スキル以外のいろんなものが必要になりそうw)
わー、アイス弁当…!あの容器の型をどうにかすれば、いけそうな気がしちゃいますね!
来年の夏、目指しますw
あの三丼フライを再現するなんて
ここまできたらタワーリングカレーも火の玉チャーハンも作れるんじゃないですか?
あと香介はバッターを使ってでフライを作ったんじゃないですかね?
あくまで想像ですけど
アラフォー月マガ世代の自分は本当に感動しました
しかもこれを本当につくってしまうとは・・・すご過ぎです。
次はこれも大変だけど夏だし「アイス弁当」を期待してしまいますね。
もちろん食後は凍らせた麦茶でw
なんと、スーパーくいしん坊ご存知だったんですね!
ほんとに胃もたれがしんどくて、2日にわけて食べました(^^;
昔の料理マンガの冒険っぷりはいま読み直してもやっぱすごい…。
むかしの料理マンガの、こういう勢い重視なところ、いいですよねw
銀の匙、まだ途中で最新巻まで追いつけてなかったのですが、そんなおいしそうなメニューが…!
楽しみにして読みます(^^
おお、やっぱりパン粉でよかったのですね!
(確かに味もパン粉のほうがおいしかったですw)
「そんなのありなんだ!」となる展開が毎回楽しいので、
ぜひ機会があったらご一読ください〜(^^
覚えているのは餃子、冷やし中華、臨海学校?のバーベキュー、ラーメン対決です。
今回の三丼フライは読んだ事がありませんが、相変わらずミスター味っ子並みの奇抜な料理をおみまいしてきますね~(笑)
これ完食出来るのは20代前半迄だろうなァ(笑)
包丁人味平では抑えられてた、荒唐無稽な非現実的な部分がwww
まあ、連載されてた時代が時代ですから、こんなのも寛容に受入れられてたのでしょうねw
しかし… ちょっと無理があり過ぎな感がしますw
そういえば…
「銀のスプーン」はお見かけしましたが、「銀の匙」はいかがでしょうか
10巻の巻末に載っていた、エゾノー・ホットドッグの家庭用レシピを試してみましたが、中高年に近いせいか、こうしたシンプルメニューが美味しく感じられました
「花のズボラ飯」も、「サンレッド」に通じる、なかなか素晴らしいレシピでしたし、「ワカコ酒」の揚げたこ焼きもお薦めですw
この作品は読んだことがなかったのですが、「フライの中にフライ」ということは
てんぷらではなくパン粉の衣なのかなーと思いました。
すごいアイディアですねw