初夏、スーパーに青梅がいっせいに並ぶと、世の料理好きは「今年もきたぜ……」とソワソワしてしまうものですが、あの興奮は何なんですかね。梅仕事って、たいてい面倒くさいもんばっかりなのに。
梅は、海街diaryシリーズのなかでもたびたび印象的に描かれます。 1巻ではキツーい梅酒を飲んで異母妹のすずが初めて三姉妹の前で本音をぶちまけ、2巻では庭の梅をみんなで収穫しするシーンも。
香田家では毎年梅酒を仕込むのが恒例のようですが、おばあちゃんのビンテージものや三姉妹用とならび、すずのためのノンアルコール用も作られます。まるで梅酒が家族の系譜をうつすかのように。
香田家の姉妹たちもけっしてマメなタイプじゃないのに梅仕事を欠かさないのは、食いしん坊だから、という理由だけではないのかもしれません。
※【コマ引用】「海街diary」6巻(吉田秋生/小学館)より
甘露煮は、すずが香田家に来て2度目の夏を迎える6巻で登場する、あたらしい梅メニュー。
大船のおばちゃんに作り方を教えてもらったレシピにすずがトライしていたところ、「意中の男を狙い撃ちしたい」ヨコシマな思惑の佳乃姉が便乗し、ふたりで共同作業した一品。
手間がかかるだけあり、山猫亭のマスターと将志のお母さんもベタぼめした絶品。コマに描かれた、宝石みたいにつややかで丸い梅にそそられます。
7月中旬ともなると、都内のスーパーでは青梅はとっくに終わってしまっているので、青森から通販で取り寄せしました。ネット通販バンザーイ。
梅はキズのついているものは取り除き、なるべく実が固くしまっているものを選ぶ。優しく洗って楊枝でヘタをとり、消毒した針で小さな穴をあける。1つにつき20個くらい。
※【コマ引用】「海街diary」6巻(吉田秋生/小学館)より
針仕事なので、手元にはご注意を。心満載で梅仕事にはげむ佳乃姉のこの邪悪な表情、この巻のアカデミー女優賞をあげたいくらい。
穴をあけた梅はぬるめのお湯で2、3回茹でこぼしてアクを抜く。
「茹でこぼす」というと、ぐらぐら沸騰させる感じを想像しちゃいますが、甘露煮の作り方を調べたところ、これは絶対NGのよう(梅の皮が破けてしまうそう)。
水から弱火にかけ、鍋底に梅があたらないように手でゆっくりかき混ぜながら、じっくり温度が上がるのを待ちます。
熱めの風呂くらいの温度になったら梅をとりだし、鍋にもう一度水を張って再度弱火にかけます。これを3回繰り返してアク抜き完了。コンロにつきっきりになるので、けっこう体力使います。
アク抜きした梅500gに対し、砂糖400g、水800ccを鍋に入れて、キッチンペーパーで落としぶたをし、弱火で火にかける(砂糖は2回に分けて加えたほうが味が染みやすいそう)。
梅が煮えてくると、グリーンオリーブのようなキレイな色合いに変化します。ここでも鍋が沸騰しないようにコンロに要注意を(最後、うっかり目をはなしたおかげで、何粒か皮が裂けてしまったorz)。
そのまま冷ましたあと、消毒したビンを用意し、梅を一粒ずつ静かにうつします。 シロップは再沸騰させ、冷ましてからビンへ。 冷蔵庫で2~3日漬けてからがベスト……のようですが、がまんできないので一粒味見。
皮の周辺はまだちょっと酸味が残っていますが、中心の果肉は甘くてフレッシュで、フルーツのコンポートのよう。梅って、果物だったんだな……と気づかされました。
市販の甘い梅はあまり好きじゃなかったのだけど、自家製だと甘さもスッキリして、おいしさに開眼したかも。シロップごとソーダで割ってもおいしいし、アイスクリームに添えてもうまし。
甘露煮の作り方を調べていて心に響いたのが、「エグみもまた青梅のおいしさ」という解説。アクが残りすぎるのは当然NGだし、だからといってを完全に抜いて口当たりがよすぎるのもダメ。
まるで人生訓のように深いスイーツですな……。
コメント
コメント一覧 (2)
ほんとに、コンポートみたいな感じです。
今回は青梅ですが、熟した黄梅ならほんとに杏子みたいになりそう~。
>梅酒を漬けたあとの梅
わー、あれ、そのまま食べてもイケるんですね!
5年くらい漬けっぱなしの梅があって、シワシワの状態なんですが、今度食べてみようかしらw
>アジフライ
あれも超あこがれメニューですよね!
詳しいレシピがないので、味を想像するしかないのがもどかしいです^^;
湘南の現地で新鮮なものを食べたら、海猫食堂気分が味わえるかな…。
坂下課長の過去、気になりますね。ほんとに佳乃姉は彼を落とせるのかも気になりますw
甘露煮じゃありませんが、昔梅酒を漬けた後の梅が好きでした。
しかも果肉が残ってトロリと柔らかいのではなく、果肉から水分が出きってしまったシワシワゴリゴリの梅が好きでしたね。歯ごたえが良くて(笑)
海猫食堂(二ノ宮さん)のアジフライ、是非とも食べてみたいです!
この梅の甘露煮が掲載された巻は登場人物の何人かが人生の岐路に立たされていますね。
帰路とはあまり関係ないですが、中でも一番気になるのが坂下課長の過去のことだったり。
まだ6が発行されたばかりですが、もう次が待ち遠しいです(笑)