
以前「パンの耳パイ」を紹介した「アオイホノオ」、実はほかにもずっと気になっていたメニューがありました。
富田林のタイエーの「サンディ」のお好み焼き。 「サンディ」は主人公・ホノオがあこがれる年上女子・トンコ先輩のバイト先で、1巻冒頭から登場するまさに「行きつけ」の店。
お好み焼きや、焼きそば、タコ焼きなど粉モノがメインのいわゆるスナックフード店です。 今はフードコートに置き換わっているかもしれませんが、昔はスーパーには大体こういった、個人なのかチェーンなのかわからない、庶民的なお好み焼き店が入ってた記憶があります。
買い物途中のおばちゃんや部活帰りの学生がふらっと寄って、小腹を満たして帰っていくような。味もこだわりなんて大げさなもんはなく、そこそこ美味しくて、そこそこ満足を得られるような。
私のお好み焼き観の原点はこういう店で、そのせいか最近の素材にこだわりまくったゴージャスなお好み焼きを見ると、何だかこそばゆく感じてしまうのです。お前は結局ソース味ちゃうんか、と。

※【コマ引用】「アオイホノオ」(島本和彦/小学館)6巻より
サンディのお好み焼きは、まさに「あのころ」のノスタルジックなお好み焼きそのもの。 6巻では、ホノオがトンコさんと、そしてサンディと運命の出会いをするシーンが詳細に描かれます。
大阪に上京し初めての外食、一目ぼれしたトンコさんの呼び込みに導かれ、「お好み焼きAセット」を注文したホノオ。 しかしその圧倒的なビジュアルにおののきます。
「何だこれは!! 薄いお好み焼きの上にソースがベッタリとかかっていて……その上に山になっているマヨネーズは!?」

※【コマ引用】「アオイホノオ」(島本和彦/小学館)6巻より
「これは…人に出していい食べ物なのか!?」
そこまで!?Σ(・口・) という気もしますが、「お好み焼きにマヨネーズ」が今ほどポピュラーではなかった時代には、真っ当な感想かもしれません。
古きよき粉モノに思いをはせつつ、再現してみます。

作り方:
……といっても普通のお好み焼きを作るだけなのですが。 無理やり特徴を妄想すると、素材には一切こだわらない、気合も入っていない、あくまでもソースとマヨネーズが主役の古き良きチープなチェーン店のお好み焼きを目指します。
ということで材料はお好み焼き粉(市販)、卵、キャベツ、豚バラ、天かす、切りいか、紅ショウガ(具はお好みで)。

1.お好み焼き粉、卵、水をよく混ぜておく。


2.キャベツをフードプロセッサーに軽くかけてみじん切りにし、天かす、切りいか、紅ショウガとともに(1)のボウルに加えてさっくり混ぜる。

3.フライパンを熱してタネを楕円状に流し、フライ返しで形を整える。上に豚バラを並べて弱火で裏がキツネ色になるまで焼く。裏面も同様に。
お好み焼きを焼く際は、「ふんわり焼きあげるために、コテで押さえつけないこと」という注意書きがありますが、今回は「薄く」がミッションなので、バッシバシ上から押さえつけます。


4.ソースをたっぷり塗る(ソースはぜひ関西の至宝、「どろソース」で!辛めでうまいです)。


青のり、かつおぶし、紅ショウガをトッピングし、いよいよ今回のメインとなるマヨネーズの盛り付け。 しかしここで予期せぬ事態が……。
マヨネーズをどう絞っても、マンガのようなキレイな「とぐろフォルム」が出せないのです。熱に弱いようで、お好み焼きの上ですぐにでろでろに溶けてしまう。

なんか迷って大量に盛りすぎちゃった例。 マヨネーズのメーカーを変えてみても、お好み焼きを冷やしてみてもうまくいかぬ。

絞り方を変えてみたけど、これじゃウ○コ……。
マヨネーズの盛りはビジュアル面でこの再現の要。どうやったら美しいとぐろのマヨネーズが実現できるの……。アタマの中もブラウザの検索履歴も「マヨネーズ とぐろ」のキーワードで埋まる日々の中、一筋の光となる情報を見つけました。
「ドライアイスとアルコールで作る、-70度の凍結液のなかでマヨネーズを絞り出すと、カチコチになる」というものです。

科学実験では薬局で売っているエタノールとドライアイスで作るのが一般的みたいですが、今回は食用目的なので、デイリーポータルZ様の記事を参考に、世界最強のアルコール度数(96度)をほこる蒸留酒「スピリタス」を使うことに。


耐熱容器にドライアイスを入れ、冷凍庫でよく冷やしておいたスピリタスを静かに注ぎ、割りばしなどで混ぜます。これでマイナス70度の凍結液が完成。 (度数高いスピリタスは火気厳禁なので、周囲の環境に注意を)

この凍結液のなかに、マヨネーズをぐるぐると絞りいれます。確かに絞り出した瞬間からバッキバキになってる!すごい!

引き上げたマヨネーズは、室温ですぐ溶け始めるので(冷凍庫でも同様)、トッピングする直前まで凍結液のなかに入れておいたほうがいいかも(ってこれ誰の役に立つアドバイスなんだろう)。
計4回くらいトライを重ね、ようやく理想のマヨネーズ盛りのお好み焼きが完成しました!後半、料理というよりほぼプラモデルの世界に……(連日お好み焼き漬けにした家人、スマヌ)。

食べた感想:
昼下がりのスーパーののどかな店内で食べた、チープで懐かしいお好み焼きの味。ソースとマヨネーズが支配する、だからこそ中毒性のあるあの味。私にとってのお好み焼きはやっぱりこういうのだなあ、と再認識。
(ちなみにマヨネーズは、意外とアルコール臭もなくフツーに食べられました)
マヨ盛りに衝撃を受けたホノオも、その後修行のように毎日食べるうちに 「もうこれが今では口に合って口に合って…」 という境地に至ったようです。やっぱり粉モノにはジャンク感、それが一番大事。

こっちは鉄板に盛り付けたバージョン。作中とは違うけど、これはこれで気分が出ますね。
そういえば7月にテレ東でドラマ化すると知り公式サイトを見に行ったら、あまりの忠実キャラ再現ぶりに感動しました。これは、見ないと。
お知らせ 発売中の「ダ・ヴィンチ」7月号の本vs.カレー特集で、漫画のなかに登場するカレーにまつわる南信長さんとの対談を掲載いただきました。機会があれば、ぜひお手に取ってご覧ください。
コメント
コメント一覧 (8)
ゆで卵!!あの電気湯沸かし器で作って、半熟になっちゃうやつですよねw
トンコさんと一緒に食べるところは、どうしようもない青春の焦りとか鬱屈とかも表現されてて、いいシーンだなあと印象に残ってました。
>コーヒーを理科の実験のビーカーで沸かして飲む
マッドサイエンティスト的なキャラがやってたイメージですw やってみたい~!
(でもどうせなら自宅じゃなくて理科室で飲みたい・・・)
秘密コメでいただきましたが、ほんとうにうれしかったので、せめてこちらでお礼の返事させてください。
(お気遣いまでいただきありがとうございましたm__m)
忙しいのを言い訳にして、訪問してくださる方に甘えていたな、と反省しました。
あいかわらずなかなか更新できず心苦しいですが、覗いてくださる方のために今後も無理せず続けていきます!^^
料理だけでなく、もはや理科実験の域まで達していますね!
「アオイホノオ」はおそばや、うどんを食べているシーンも、美味しそうですよね。
ゆで卵を食べる時の擬音も「はもっ ぐじゅる」みたいな面白いものだったと思います。(手元にないので確認できませんが…)
美大出ではないけれど、ものつくりを志す人間としては、あの漫画は「あるある」すぎて、恥ずかしくもあり愛おしくもあります。
実験つながりで、ギャグ漫画系でありがちな、コーヒーを理科の実験のビーカーで沸かして飲む、というのもいつか再現して欲しいですw
ブログを拝読させていただいている側も勿論ですが、ブログを立ち上げている方々だって一人の人間だし、ちゃんとプライベートがあるのですから、ブログが滞ってしまう事もあると思います。
ですから私は記事が上がるまで楽しみにしていますし、返信もお気になさらないで下さい。
そういった当然の事を理解しようともせず、偏った考えで心無いコメントをされる方の事は気にせず受け流しちゃって下さい。
これからも変わらずこのブログを応援しております。
※あのようなコメントにどうにも我慢ならず思わず書き込みをしてしまいましたが、このコメントのせいでここが荒れる元にもなりかねないので、秘密コメントにさせていただく事をどうぞお許しください。勿論返信はしていただかなくても大丈夫ですよ。
では、長々とすみませんでした。失礼いたします。
数年前から会社員の仕事が多忙になり、平日は帰って寝るだけのことも多く、コメント欄への返信がほとんどできていませんでした。
いつかきちんとお返ししないと…と思いつつ、皆様に甘えてズルズル先延ばししている状態でした。
今後は週末だけでも、できるかぎり返信しようと思います(それも難しくなる場合は残念ですがコメント欄自体、閉じたほうがいいのかもしれません)。
もうご覧にならないと思いますが、大事なことに気づかせていただきありがとうございました。
(ちなみに残ったスピリタスはレモンチェッロ作りにでも使う予定です)
>ユベアさん
三世さんともども、ものすごく久々のレスになってしまい申し訳ありません。いつもいただくコメント、励みにしていました。
島本和彦先生、読むとめっちゃ元気が出るのでおすすめです!
「燃えよペン」「吼えろペン」あたりは漫画業界の裏話的にもおもしろいです。
柳樂君、シリアスな役のイメージが強かったので、今回のホノオ役がどんな風になるのか、怖いような楽しみなような^^;
ま、頑張ってくれ
二度と応援もしないよ
本当に感服すると同時に感動すら覚えます!
島本和彦さんの作品は物凄く熱血漢漂う作品だというのは存じ上げているのですが、まだ読んだことがありません。
この機会に一度拝読してみたいなァ。
ドラマはテレ東系列で、地方に住む私は近いうちに放映してほしいなと心ひそかに願っております。
ちなみに、柳樂君本当に大人になった&痩せましたね~。
島本和彦と聞いて、こめんとしないわけに・・・は・・・・?
いやあの
マヨネーズの形を再現するためだけにスピリタス買って来るってどうなの?
そんな馬鹿さ加減がちゃんと残ってて愉快痛快
のこたスピリタスはちゃんと飲もうね、ストレートで!