「おせん」のカレーパン
ひさびさに「おせん」レシピに挑戦(といっても作ったのはまだ暑さの残る9月ごろでした…)。

旬の食材を使った和食の紹介が見どころの「おせん」ですが、たまに登場する焼きそばやハンバーグなど、B級&洋食メニューもひそかに楽しみだったり。

「おせん」(きくち正太/講談社)14巻より
※【コマ引用】「おせん」(きくち正太/講談社)14巻より

14巻に登場するカレーパンもそのひとつ。 華々しく引退を飾ったプロ野球選手と、彼を献身的に支え続けた妻。

節制から解放された夫の第二の人生のために、妻は毎日豪華な料理をテーブルに並べるが、夫の反応はいつもきまって「今日の食事はボクの人生ベスト3」という中途半端なもの。

ある日、妻は夫がコンビニのカレーパンをむさぼるように食べる光景を目撃してしまう。「丹精こめた自分の料理が、たかがカレーパンに負けた」とショックを受けた妻は家出。しかし実は夫にとって、カレーパンは単なる好物以上の意味があり……というあらすじ。

全5話にわたってカレーパンの話が展開されるので、読み終わると頭のなかがカレーパン一色になること間違いなし。台所に立つのを放棄して、近所のパン屋に走りたくなります。

「めしばな刑事タチバナ」でも力説されていたとおり(※9巻)、なんてったってカレーパンは「名店の冷めたカレーパン」よりも「近所の店でタイミングよく買うアツアツのカレーパン」のほうが断然おいしい、というゆるぎない事実がありますから。

でもその理論を突き詰めると、家で作るほんとに出来立ての激熱カレーパンは、史上最高にウマイという結論になります。……ということでやっぱり家に引き返して作りましょう。

「おせん」(きくち正太/講談社)14巻より
※【コマ引用】「おせん」(きくち正太/講談社)14巻より 

中身のカレーは肉でもシーフードでも「お好みで」とのことですが、今回はおせんさんが作っていたチキンカレーを参考にします。

トロみがつくように玉ねぎを大量に使い、コラーゲンたっぷりの鶏の煮出し汁を使う、というもの。

鶏がらと手羽先 鶏がらと手羽先2

コラーゲン
鍋に鶏がら(血や脂はあらかじめ掃除しておく)、手羽先をたっぷり入れて香味野菜とともに水から煮だし、半分程度まで煮詰める。↑ひと晩冷やしたもの。煮こごりができてるのがわかります。コーラゲンさんブラボー!

玉ねぎ大量 玉ねぎスープ状態
玉ねぎ大量(今回は大玉6個)を薄切りにし、サラダ油を入れた鍋でトロトロになるまで炒める。水を一切入れなくても、玉ねぎの水分でスープ(ポタージュ?)状になります。

昔作った「スーパー食いしん坊」の水なしカレーを思い出す。まさか「おせん」で同じ手法に出会うとは……。ビッグ錠先生の正しさがまたも証明されてしまった。

鶏がらスープ投入 鶏肉むしる2

煮込む カレー投入
玉ねぎの鍋に煮詰めた鶏のスープを入れ、ほぐした手羽先&鶏がらの肉もここで投入。しめじ、ニンジンなどほかの野菜を入れてアクをとりながらしばらく煮込みます。

今回は入れなかったけど、ジャガイモを入れると簡単にトロみがつくそう。 あとはお好みのカレールーを入れてしばらく煮込んで完成。

カレー
カレーパンの具に使うのはひと晩寝かせたカレーなので、今夜は普通にライスでいただきます。玉ねぎが大量に入ってるので、かなり甘みのある味。



翌日カレー
翌日からようやくカレーパン作り。ひと晩寝かせたカレーは確かに前日よりもトロみがついて、具として扱いやすそう。

生地 生地4

生地5
強力粉、イースト、卵、塩、砂糖、水を分量どおりキッチリはかり、ボウルのなかでよく混ぜ合わせ、サラダ油を加えて、生地にしっかり弾力が出るように体重をかけながらこねます。

生地があたたかくなり、発酵のかおりがしてきたらパン生地を表面がなめらかになるように裏返しながら丸く整え、ボールに入れてラップをし30度で一時間発酵させる。 (最初にオーブンの発酵機能を使ったら温度が高すぎたようで失敗…。風呂場に置いたらうまくいきました)

一次発酵 一次発酵2 
倍くらいにふくらんだ生地。ホームベーカリーがあればこのへんの工程、もっとラクにできそうだなと毎回思う。

6等分 二次発酵 
生地を等分し(今回はもとのレシピの12個分の半分、6個分の分量で作ってます)、表面を裏返すようにめくって形をととのえ、ふきんの上でころがしながら丸くし、生地同士がくっつかないように並べます。

上からふきんを被せ、20分寝かせる。

カレーをつつむ カレーをつつむ2 
いよいよカレーを包む瞬間。 麺棒で平らにしたパン生地を手のひらにとり、カレーをひとすくい乗せてギョウザの容量でしっかりすき間のないよう包みます。

失敗 
カレーの詰め込みすぎは厳禁! と作中でも解説されていますが、慣れないうちはこの量がほんとに難しい。生地からあふれると、油でベトベトになってもうコントロール不可能に……(左はダメにしてしまった生地orz)。

「ルーを包む」というより「(カレーの)具を包む」感じにしたほうがうまくいくかも。

ベンチタイム 
包み終えたら、ふきんをかぶせてさらにベンチタイム30分。 しかしこの段階での見た目はほとんどギョウザ……ほんとにこれ、カレーパンになるの? と心配になってきます。 

パン粉 
カレーパンの生地に、とき卵、パン粉をつけてスタンバイ。パン粉は細目、粗目で食感の違いも楽しめそう。

揚げる 揚げる2 
165度と低めに熱した油で、片面2分半ずつ、合計5分揚げます。 この段階で生地がブワーッと膨らんで(破裂しないように注意)、「あ、これホントにカレーパンだ!」と感動することに。

「おせん」のカレーパン 
揚がったら、すぐさま冷えたビールを並べてテーブルセッティングを(瓶のエビスがなかったので、残念ながら缶)。

「おせん」のカレーパン アップ 
熱々でサクサク。重さやしつこさがなくて、ひとり3つは一瞬で軽くいけてしまうほどで、6個分しか作らなかったことを早くも後悔。「出来たてカレーパン最強説」は正しかった。

断面図 
切ってみた断面図。揚げたときに生地が膨らむ分、中に空洞ができちゃうのね。 パン屋で買って食べる時、「中のカレーが少ないなあ」と恨めしく思うことが度々あったのですが、こういう理由があったのか……と、自作して初めてわかったのでした。

カレールーたっぷしのカレーパンは人類の夢だけど、至難の業だったのですね。




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