遠洋漁業の漁師たちが船上でかっこんで食べる捌きたての大トロ丼は、町の寿司屋の味とは比べ物にならない、と何かで読んだことがある。
青森のリンゴ農家には、傷物ゆえに出荷できないけれど糖度が抜群に高い「農家しか食べられないリンゴ」があるという(これは「美味しんぼ」だったかな)。
そんな「食の最前線」にいる人々だけに許された味は、流通がどれほど発達してもスーパーではきっと手に入らない。単なる一消費者の自分は指をくわえて眺めるしかなく、これほど贅沢な食の世界もないと思う。
※【コマ引用】「リトル・フォレスト」(五十嵐大介/講談社)2巻より
五十嵐大介先生の「リトル・フォレスト」には、そんな宝物のような山村の食材がゴロゴロと登場します。だから再現するには敷居が高いメニューも少なくありません。
春先のエピソードに出てくる「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」もそのひとつ。 ありあわせの季節の野菜を使って作った、いち子の特製パスタ。
※【コマ引用】「リトル・フォレスト」(五十嵐大介/講談社)2巻より
塩マスとノビルは通販などで何とか手に入ったのですが、問題はこの「白菜の蕾菜」。 作中によると、冬の間畑で放っておいた白菜が、春先に茎を伸ばして蕾をつけたものだそう。いわば白菜のオマケ的な存在で、調べた限りではコレを市販しているところは皆無。
農家で食べているところもあるようなのですが……。 菜の花に似ているそうなので、代用しようかなー、と諦めかけていたところ、実家の祖母が白菜を作っていたのを思い出して連絡してみた。
すると「4月になれば採れるかも」とのことで、無事送ってもらえたのでした(ありがたや)。 ちなみに近所にも蕾菜ファンはいるらしく、「本体の白菜より好き」という声もあるとか……。
これがその白菜の蕾菜。ほんとに菜の花にそっくりで、ところどころに黄色い花も見えます。
こちらは取り寄せたノビル。辛みのあるネギ、といった味。根っこの部分はらっきょう or エシャロットっぽくもある。
ノビルはざく切りに。蕾菜は洗っておく。
塩マスはグリルで焼いて、身をほぐしておく。
パスタ用に湯をわかし、鍋に菜箸を渡して皿を温めておく。これも作中にあったシーンだけど、この丁寧な描写が毎度好き。
フライパンに油を入れて熱し、ざく切りしたノビルをさっと炒め、塩マスのほぐし身、パスタの茹で汁を加えてよくなじませ、ソースを作る(お好みでしょうゆを足してもいいかも)。
パスタはゆであがり1分前くらいに蕾菜を加える。パスタ&蕾菜の湯を切って、フライパンのソースとよくあえ、塩コショウ。 温めておいたさらに盛る(MOCO様風にここで追いオリーブしても)。
食べた感想:
ノビルのピリっとした辛さに、焼きマスの塩気。春の山の味がそのまま詰まったようなパスタでした。
白菜の蕾菜は、苦みのない菜の花、といった味で、これはファンがいるのもわかる。どうして市販されないんだろう!(でも白菜を収穫せずにそのままにしないと採れないんだから、やっぱり大量生産するには効率悪いのかな…)
「リトル・フォレスト」の作りたいけど作れないシリーズといえば、あずきスコーン&マフィンもそのひとつ。 もちろん普通の小豆で作ってもいいんだけど、完熟前の「未熟な小豆」で作るそれはどんな味なのか、気になって気になって……!
※いただいたコメントへの返信、またも遅れ気味で申し訳ありません。。。 ひとつひとつ大変励みになっております。ありがとうございます。
コメント
コメント一覧 (16)
おおお、秋田では「ふくたち」という名前なんですね!
「ふく」はやっぱり「福」なのかしら……。なんか縁起がよさそうで、いい響きですね。
道の駅でも売られてるなんて、うらやましい!
ほんとに、秋田なら簡単に材料が手に入っちゃうかもですね。
(そしてこういう、都会では簡単に手に入らないものがまだまだあることに、変な話ですがちょっとほっとします)
ぜひ機会があればお試しください!
こちらこそ先日はありがとうございました!
蕾菜、食べるのが長年の夢だったので、祖母さまさまです^^;
でもほんとに菜の花にそっくりだったので、普段は代用していいかもしれません。
五十嵐先生の作品は、どの料理もさらっと登場するのが素敵ですよね。
ほんとに日常的に料理されてるんだろうなー、と推測してしまいます。
「おせん」のノビルの鍋、あれもおいしそうでしたね!
来年くらいに試してみたいな~。
ラジオ、おかげさまでなんとか無事に終わりました!
(緊張して楽しむレベルまでいけたか疑問ですが・・・@@;)
ノビル、このパスタの再現で初めて出会った野菜だったのですが、お気に入りになりました。
春の野菜って、山菜をはじめ個性が強いのが面白いですね~。
しょうゆチャーシュー、おばあさまにまで好評だったなんて、
東海林先生のいちファンとしてうれしいです。
こちらこそうれしいご報告ありがとうございました!
今年の冬に秋田に引っ越してきて、私自身、初めて知ったのですが、
近くにある旦那の実家で貰ったり、
農産品直売所(道の駅など)で売っていたり。
のびるも、秋田では見るものなので、
このレシピ、秋田だと簡単にできちゃうメニューかも、と思いました。
あぁ美味しそう。
楽しみにしてた「リトル・フォレスト」ネタに興奮しました。
しかも、白菜の蕾菜〜、ゲットされたんですね! 流石です……
原作では「ありあわせなんだけど」って感じでさらりと出てきますけど、
いつもどこでも作れるわけでもない一期一会のメニューですね。
春野菜と鱒のうまみ、想像しただけでよだれが(´¬`)
野蒜も……「おせん」の野蒜と油揚げのお鍋といい、気になる野菜です。
頑張ってというか、楽しんできてくださいね!
このパスタも、サッパリしていておいしそう!
新鮮な野蒜のパスタなんて、
スゴイ贅沢ですね!
チャーシューは、母にも大好評でした。
圧力鍋で煮て、柔らかくすると、
祖母も食べやすかったそうです。
どうもありがとうございました。
おおお、まるまるさん、Digだけでなくこちらの番組もお好きだったんですね!
しかしファンの方が多い番組なんですね、今更ですが緊張してきてしまいました・・・。
明日収録なのですが、ちゃんと話せるようリラックスしてのぞみたいと思います!
(といいつつこんな時間まで起きている・・・)
はじめまして、コメントありがとうございます!
やっぱりお料理好きの方は、料理漫画もお好きなんですね。
(ラズウェル先生は、モーニングで連載しているウナギ漫画の「う」が好きで読んでおります~)
しかし子供のころからいろいろ再現していらっしゃって、すごい!
私は料理デビュー自体遅かったので、悪戦苦闘することが多く、「もっと早く料理始めてれば・・・」と後悔することもたびたびですTT
今後もぼちぼち続けていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします!
はじめまして、コメントありがとうございます!
おおお、やっぱり最高においしいものなのですね>傷もののリンゴ
リンゴだけでなくほかの作物もそう、というのが興味深いです。
動物からのおすそ分け、という感じもしてなんともすてき。
さらにあこがれが募ってしまいました・・・。貴重なお話ありがとうございます!
はじめまして、コメントありがとうございます!
安住さんのラジオ、ファンの方が多いようで「出るんですね!」というコメントいくつかいただけてびっくり&うれしいです。
明日ちょうど収録なのですが、緊張しないように臨みたいと思います・・・。
しかしローピンの記事、お役にたてたようでうれしいです。
(雪国で・・・というのが、作中のエピソードにそっくりですね!)
ヴァンプ将軍レシピ、ほんとに簡単でどれもおいしいので、うちでも大助かりです。
あんな嫁がほしい!w
ほんわか、ご覧いただいてありがとうございます!
実は録画してるのですが、自分ではまだ見れておらず・・・。
時間あるときに、酔った勢いで見てみたいと思いますw
私、靴屋さん同様、にち10のファンで、毎週MDにダビングしています。
ダビングしたのをすぐ聴いてしまうのが勿体無くて
本放送より2週遅れくらいで聞いている、ちょっと変なリスナーです。
それにしても、生あづみんに生ゆみたん! 凄くうらやましい!
明日も録音準備万端です。 そして生で本放送を聞く覚悟です。
以前Digの時にもコメントしたように、私は基本、TBSラジオのリスナーなので
今回のにち10出演は嬉しいです。
ノビルパワーで無事に生放送を乗り切れますことを祈っています。
祖父母が長野の林檎農家だったので傷もの林檎を休憩時間に良く食べました。
どの作物もそうですが、野生動物(林檎の場合は鳥)がかじったものが最高に美味いです。もちろん市場には出回りません。
今回はいつもpodcastで聞いています「安住紳一郎の日曜天国」次回予告にて梅本さんのお名前がでたので、思わずコメントを書いてしまいました。
私は日曜天国の大ファンでして、このブログを知ってからゲストコーナーに「いつか出るのではないか」とぼんやり思っていたのです。それがこんなに早く実現するとは、夢のようです!podcastでは毎回ゲストコーナーが配信されるわけではないのですが、とっても楽しみにしています。
P.S
ヴァンプ将軍レシピはとても簡単かつ、美味しくて大ファンになりました。素晴らしいレシピとマンガを紹介してくださってありがとうございます^^