
料理漫画の元祖といえる「包丁人味平」ですが、実は料理対決らしい対決が登場するのは「点心礼勝負編」からです。
それ以前はキャベツの千切りとか、氷で白鳥彫るとか、アイスクリーム揚げまくるとか、なんというか力技すぎる戦いが繰り広げられていたのですが、包丁貴族こと団英彦との勝負で、初めてちゃんとした料理が登場します。
味平側の料理「味平ライス」は以前記事にして以来、たまに家で作ってたのですが、そのたびに食卓で話題にのぼるのが
「味平がチャーハンで、団英彦が豚ヒレのソテーなんだよね」
「そもそもチャーハンとステーキが同じ土俵に立つシチュエーションってすごいな」
「しかもステーキが負けるって、超下剋上だよな」
「英彦って実はたいしたことないんじゃ……鼻でかいし(関係ない)」
という問題でした。

※【コマ引用】「包丁人味平」(牛次郎/ビッグ錠)文庫版5巻より
こちらがその英彦の「ヒレソテーベーコン巻」。 「肉の宝分け」勝負で手に入れた最高の肉を惜しげもなく使い、包丁貴族の技術の粋で調理された一品。
これが味平のくず肉チャーハンに負けるってどういうことなの……! やっぱ英彦の実力、たいしたことないんでしょうか。 真実を確かめてみるべく、再現してみることにしました。


作り方:ヒレ肉はスジを取ってから2~3cmの厚さに切り、タコ糸で縛って丸く形を整え、常温に戻しておきます。

この間に付け合せ作り。 「ホーレン草のバターソテー」「ニンジンの甘煮」「ポテトのシャトーぎりからあげ」の3品です。
ただなんとなく作るだけでは、ヨーロッパ帰りの英彦の技術を再現できなさそうなので、ちょっと前に買った辻調理師のフランス料理の基礎本にならってみることに。基本的な付け合せの作り方も網羅されてて、私のような素人にはありがたい本。

ホーレン草のバターソテー:
ほうれん草は固めにゆでて水にさらし、水気をよく絞る。 ざく切りしてバターを熱したフライパンに投入し、香りづけにニンニクを刺したフォークで炒め、塩コショウで味付け。

ニンジンの甘煮:
ニンジンはシャトー切りする。 小鍋に水とコンソメ、砂糖、バターを入れて熱し、ニンジンを入れて落とし蓋で煮る。汁気がなくなってきたら、鍋をまわすようにして照りをつけて仕上げる。

ポテトのシャトーぎりからあげ:
ポテトはニンジンと同様にシャトー切りし、水気をよくふいて油で揚げる。最初は低温でじっくり火をとおし、次は高温で二度揚げし、仕上げに塩をふる。


ヒレ肉のタコ糸を外してベーコンを巻き、塩コショウして金串に刺してフライパンでソテー。 熱しておいたステーキ皿に、ヒレ肉と付け合せ、クレソンを盛り合わせて完成。


サイドメニューの「冷凍サラダ」。 しかし冷凍サラダって何なんだろう。文字通りに青野菜を冷凍しちゃうとグズグズになっちゃうし……。
と、またも味平ワールドの謎に翻弄されつつ、今回は作中のビジュアルを参考にフリルレタス、キャベツ、きゅうり、ラディッシュ、トマト、ゆで玉子で作ってみた。


食べた感想:
脂肪が少ないのに柔らかい食感はさすがヒレ。 付け合せも、ひとつひとつ手間をかけて作ったおかげで、なかなかいい味に仕上がりました。
ただ、一般のステーキのような肉汁加減を期待すると、ちょっと拍子抜けしちゃうのは事実。 試食役をした女性の「そうよアブラだわ!アブラがたりないんだわ!!」という評も、読んだときは「なんじゃそりゃ!!」と突っ込んでいたのですが、言いえて妙かもしれません。
一方で家人は「味平ライスより断然うまい」と絶賛するほどだったので、作中で票が分散したのと同様に、好き好きの面もあるのでしょう。とりあえず英彦の名誉は保たれた……と思います。
点心礼編は、ビッグ錠先生の作画がノリまくっているところも見逃せません。「カレー勝負編」の完成度の高さもすばらしいですが、点心礼編の鬼気迫る筆致も、あらためて必読です。
コメント
コメント一覧 (14)
味平、いま読んでも興奮できるのは、さすが名作ですね!
ヒレ肉のベーコン巻は、牛ヒレのはたまに見かけますが、豚のは珍しいな~、と思いながら作りました。
ベーコンって、こんな使い方もあるんだなー、とちょっと感心。
肉で肉を巻いた料理、すごいボリュームですね。
はじめまして、コメントありがとうございます!
(そしてハンドルネームがすてきすぎます!w)
私も実際にブログをはじめてみて、漫画の料理が気になっていた方の多さに驚きました。
どんなマイナーな漫画でも、「私もおいしそうと思ってました!」とコメントいただいたとき、同志と出会えた気持ちになれますw
今後も好きな漫画からいろいろ作ってみようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします~。
はじめまして、コメントありがとうございます!
そしてすてきなお母様の思い出話、教えていただいてうれしいです。
「牛肉をベーコンで巻いて串に刺したステーキ」のご説明をうかがう限り、確かにこの団さんのステーキに似てますね。
もしかしたらほんとに、蒼い月さんが喜ぶと思って作られたのかもしれないですね。
お母様、実は元祖再現料理家でいらっしゃったのかも・・・!
こちらまでなんだかじんわりしてしまうお話、書き込みいただきありがとうございましたm_ _m
はじめまして、コメントありがとうございます!
そして書籍、お手にとっていただけてうれしいですm_ _m
「味平」今読んでもすごいのに、リアルタイムで読まれていたなんて、うらやましいい!
点心礼編は、ビッグ錠先生の筆の走りがノリノリすぎて戦慄をおぼえるほどです・・・(白糸ばらしも、ありえん、と思いつつ感動してしまいますw)。
今後もビッグ錠先生作品、ほかにも再現していこうと思いますので、どうぞよろしくおねがいします。
僕も料理マンガ好きで、再現して食べてみた〜いとよく思ってましたが、実際にやってるのはすごいです。
料理マンガからの引用だけじゃないのもいいですね。
子どもの頃、こうやって「牛肉をベーコンで巻いて串に刺したステーキ」を、母が誕生日やいいことのあった日に作ってくれていました。これが子ども心に大変なご馳走で、大好きな料理でした。
母は昭和ひとけたなので、どこで覚えたのかなと思っていましたが、小さい頃この漫画を読む機会が結構あり、これは母の職場においてあったこともあるので、もしかしたらこの漫画で覚えた料理なのかもしれません。
母が読んでこれと思ったか、私が食べたいとねだったか、母も亡くなったのでいまとなってはわかりませんが、とても懐かしかったです。
確か「(味が濃いので)3口以上食べたら、味平の負けだった」みたいな流れもありましたよね。
最近の料理漫画って、純粋に料理の味だけで勝負しているものが多いと思うのですが、
食べるシチュエーションまで勝敗に含めちゃうって、さすが元祖の味平・・・!
私もそろそろ脂っこいのが受け付けなくなってきたので、もし実際に審査したら、英彦に軍配をあげるかもしれません・・・。
なんですかその手軽なのにおいしそうな食べ方!>ヒレ肉にわさび醤油
さっぱりして、ワインが進みそう・・・。英彦の料理以上においしそうです!
私もこの料理本で、「こんな作り方あるんだー」とびっくりしました>ほうれん草
プロ用の基礎本って、家庭用のレシピとは色々違ってて驚きました。
たまに「そんな手間かかることできるか!!」と逆切れしたくなるレシピもありますがw、それこそがプロなんだなあ…と勉強になります。
本、お手に取っていただいてありがとうございます!
書籍はひと段落ついたものの、本業の仕事が忙しいのは相変わらずでorz
週末に時間を見つけてぼちぼち更新していきたいです。
>牛次郎先生のうわさ
そ、そうなんですか・・・!(笑)
たまに謎な料理や調理法が出てくるのはそのせいでしょうか・・・。
牛次郎先生、いまは仏門に入られているようで(wiki情報)、それもびっくりです。
味が濃いめの味兵ライスの勝ち。だったかと(超うろ覚え)
屋台で外食するなら、あっさり目の豚ヒレよりはチャーハンが勝つよな。とか
何となくですが納得してました。
今の私の年齢(アラフォー)が室内で食べるならこっちの方が美味しいと何となく思えますね。
食べたばかりなのですが、こういう食べ方も良いですね。
ワインのお供にぴったり!
私はよく青菜のソテーを作るのですが、
このニンニクを差したフォークで炒めるという技、初めて知りました。
今日、明日にでもすぐ真似したいと思います。
基本って大事ですね。 私も基礎本買ってみたいと思います。
本は本らしく、とてもよかったです。
また、最近は更新も以前の様になり、嬉しいかぎりです。
根も葉もないウワサの様な話で申し訳ないですが、牛次郎先生は実際に作って…というのを聴いた事あるようなない様な…(笑)
だとすると納得のセリフですね。
これからも更新楽しみにしてます。