タマリンド水のシチュー

坂田靖子先生は、いずれちゃんと読んでみたいなあ、と思っていた作家さん。短編集もたくさんあるし、「バジル氏の優雅な生活」も名作として名高いし、どれから手に取るか……と悩んでる間に、機会を逃してしまっていました。

最近、新旧の食べ物の話を集めた短編集「サカタ食堂」が出たと知り、「これだ!」と決心がついてようやく手に取った次第。 

「サカタ食堂」(坂田靖子/ジャイブ)「タマリンド水」より
※【コマ引用】「サカタ食堂」(坂田靖子/ジャイブ)『タマリンド水』より

短編のなかで一番印象に残ったのが、「タマリンド水」のお話。旅行中に身ぐるみはがされ、東南アジアと思われる村で保護された青年は、そこで毎日村人たちから「酸っぱい味のシチュー」をふるまわれます。

その後無事町に戻った青年は、再び村に行くことを切望しますが、村の名前も場所も不明。諦めかけた頃、友人に誘われて入ったレストランで、あの酸っぱいシチューと再会します。

その料理が「タマリンド水のシチュー」という名前であることを知り、ようやく村への手がかりをつかみますが……。と、こんなお話。

タマリンド
タマリンドは「スパイスビーム」の再現でも使った食材ですが、干したアンズのような甘酸っぱいマメ科の植物。料理の酸味づけに使う、という知識は前回得ましたが、スープにするってどんな味なんだろう。

調べてみると、タマリンドを使った酸味のあるスープ料理は東南アジア各地にあり、タイでは「トムソム」、フィリピンでは「シニガン」、そしてベトナムでは「カインチュア」という料理名のよう。

さてそうすると、今回の「タマリンド水」のエピソードに登場した東南アジアの村は、一体どの国なのか……? 村の人々が仏教徒である点や、水牛のある生活、さらに頭に被っている菅笠から、おそらくベトナムが一番近いんじゃないか、と推測。

というわけで、カインチュアの作り方を参考に再現してみます。


材料 
材料: 
・タマリンド 
・白身魚(今回は骨つきの真鱈) 
・海老 
・トマト 
・もやし 
・オクラ
・パイナップル 
・万能ねぎ 
・バジル 
・パクチー 
・レモングラス 
・唐辛子 
・ナンプラー 
・砂糖、塩

※作り方は、こちらのサイトを参考にさせていただきましたm_ _m 

うーん、久々に材料から味がまったく想像できない料理です。パイナップルの入ったスープって……謎すぎて、オラわくわくすっぞ。 

本場ではメコン川でとれるような川魚を使うようですが、スーパーになかなか置いておらず断念。とりあえずクセのない真鱈と海老にしてみました。そのほかの材料も、手に入れやすい物でアレンジしています。

タマリンド水 
作り方:
1.タマリンドの実はキッチンペーパーなどに入れ、水の入ったボウルのなかで色づくまでよく揉み出します。

たら たらとニンニク 
2.白身魚はぶつ切りにし、塩を振って血合いを洗います(現地では魚の頭も入るようなので、尾頭付きで)。 鍋に油とニンニクを入れて香りが出たらエビと魚を入れ、ざっと火を通します。真鱈は身がやわらかいので、ちょっと崩れてしまった……。

煮る 
3.別鍋に水を沸騰させて酒と塩を入れ、2の魚とエビを加えてアクを取りつつしばらく煮ます。 

タマリンド水を加える ナンプラー 
4.タマリンド水を加え、酸味をつけます(加減はお好みで)。本場ではナンプラーをつけだれにして食べるようですが(鍋の味ぽん的な感じで)、作中では皿ひとつで食べていたので、ここで味付けに使っちゃいます。あと、砂糖も。

野菜色々 もやしとねぎ 
ぶつ切りにしたパイナップル、トマト、オクラ、レモングラスを入れてさっと煮ます。さらにもやし、万能ネギを加えてひと煮立ちしたら完成。 パクチー、バジル、レモン、唐辛子をのせていただきます。

タマリンド水のシチュー 
食べた感想: 
レモングラスや香草のエスニックな香りがして、トムヤムクンから辛さを抜いたようなさっぱりしたスープ。タマリンドだけでなく、トマトやレモンの酸味もありますが、お酢みたいにとがってはおらず、マイルドです。

ただパイナップルを入れすぎたのか変に甘くなっちゃって、これは私の味付けの失敗だな(T益T)。

自分なりに調べて作って食べて、納得したかというとその逆で……うーん、どこがどうとは言えないけど、やっぱり漫画のなかのシチューとは「別物」!なんですよね(これは漫画飯作るたびに、いつも心のどこかで思うことだけど)。

読んだ時のイメージが強いほど、自分のなかの想像の味を超えるのは難しいのかもしれない。 というわけで、「タマリンド水のシチュー」のほんとの味は、私のなかでまだまだ謎のままです。




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