最近は漫画界も国際化が進んで、外国人作家の漫画を目にする機会も増えてきました。
「サンケンロック」や「ラキア」の作者で、韓国出身のBoichi先生は、そのなかでも特に知名度が高いのでは。この人の作品に「スペースシェフシーザー」(旧題:「究極宇宙味帝シーザー」)という料理漫画があると知って読んでみたら、これが面白かった。
かつて侵略者から宇宙を救ったという料理皇帝・シーザーは、美少女三人組のモンスターハンター「マナド」に拾われ、「しーちゃん」としてこき使われることに。
一見頼りない少年風の「しーちゃん」ですが、コック帽を被るとダークヒーローな「シーザー様」に変身(この変身シーンが、アメコミっぽくてえらいカッコいい)。
彼と少女たちが宇宙各地を旅しながら、事件を解決していく“SF料理漫画”といった作品(結構きわどいシーンが多いので、そういうの苦手な人は要注意です)。
※【コマ引用】:「スペースシェフシーザー」(Boichi/少年画報社)より
スゴイのはシーザー様の調理シーンで、スペースシャトルのエンジンの火力でチャーハン作ったり、レーザーキャノンをバーナー代わりにして肉焼いたり、もうなんか、やりたい放題。
清々しいほどのバカバカしさですが、実はBoichi先生は大学で物理学を専攻してたらしく(というより、SF漫画を描くための進路だったらしい)、調理法ひとつとっても科学的な裏付けがあったりして、意外とあなどれません。
さらに料理にもかなり造詣が深いようで、韓国料理を中心に色々なメニューが出てくるのも面白い。全体的に「好きで好きでたまらなくて描いてる」感が伝わってくるので、読んでる側もノリノリで楽しめます。「ドカコック」といい、ヤンキンっていい漫画引っ張ってくるなあ。
※【コマ引用】:「スペースシェフシーザー」(Boichi/少年画報社)より
さて今回作ってみたのは(というか、まともに作れそうなのがこれくらいしかない)、第2話に出てくる「高麗人参のリゾット」。
高麗人参の名産地・ジンサインから、土地を荒らすモンスターを退治する依頼を受けたマナド一行。無事任務を完了した後、シーザー様が高麗人参とモンスターの肉を使って振る舞った料理です。
その作り方は、
「モンスターの表面を焼き 中に高麗人参と野菜を入れて煮込む!」
そして「このダシでリゾットを作り、生クリームとパルミジャーノを追加!」、リゾットをアルデンテに仕上げ、「高麗人参とモンスターのフィレ肉を盛りつけ完成!」……というもの。
「モンスターの肉」ってとこが、いきなりやっかいですが、作中に出てきたのは怪鳥系のモンスター。
後書きでもBoichi先生が「鶏肉を参考にして描いた」と言っていたので、ここはやはり鶏肉で。ただ、トッピングするフィレ肉の部分は鶏肉では再現しにくそうなので、牛肉を使います。
なんとなく頭の中でレシピを整理してみると、サムゲタン風リゾットという感じになりそうな予感。うーん、美味しいのか、そうでないのか微妙なライン。
材料:
丸鶏(内臓処理済みのもの)1匹、牛フィレ肉、高麗人参、セロリ、玉ねぎ、ハーブ(タイム、チャービル、ローレル)、生クリーム、米、ニンニク、ショウガ、ネギ。
高麗人参は近くで売ってなかったので取り寄せしたけど、少量で結構いい値段がしてびっくり。
健康食品界でやたらと重宝されてるイメージですが、実物見るのは初めてです。ニンジン臭はそれほどなくて、ネギのような薬味系の香りがします。
作り方:
熱したフライパンに鶏を入れ、表面に焼き色をつけます。その後、鶏のお腹の中に熱湯を注いで湯通しし、汚れを落とします。
鶏のお腹に、適当に切った高麗人参、セロリ、にんにく、ショウガを詰め、ようじやタコ糸で口をふさぎます。(写真、ややグロくてスミマセン)
寸胴鍋に丸鶏を入れ、かぶるくらいの水を入れます。
適当に切ったネギ、玉ねぎ、ローレルを入れて強火にかけ、沸騰したら弱火にしてフタをし、時々アクを取りつつ3時間煮込みます(途中で鍋の野菜がドロドロになってくるので、取り出す)。
3時間経ったのが右の写真の状態。スープが白濁してきて、サムゲタンみたい。美味しそうー。
煮込み終わったら、鍋から丸鶏を取り出します(骨まで柔らかくなってるので、崩れるけど気にしない)。 スープはザルなどで漉して、600cc分だけ取り分けておきます。
残りはジップロックなどに入れて、冷蔵庫でストックスープに。
ここらで、トッピング用のフィレ肉を準備。室温に戻し、塩コショウした肉を、よく熱したフライパンで表面に焼き目をつけます。その後、160度に予熱したオーブンで10~15分ほどロースト。
焼き上がった肉は、アルミホイルに包んで保温し、30分ほど寝かせます。
さてここから、ようやくリゾット作り。まずは玉ねぎとニンニクをみじん切り。また、スープを取る際に取り分けた丸鶏の肉と、腹の中に詰めた高麗人参、セロリを取り出して小さくカットします。
フライパンにニンニクとオリーブオイルを入れて弱火で熱し、香りが立ったら玉ねぎをさっと炒めます。ここに生米(※洗わない)を入れ、透き通るまで炒めます。
熱しておいた鶏スープ(600cc)を、半分程度注いで中火で煮ます。煮詰まってきたら、さらにスープを少しずつ足し、これを繰り返します。
鶏肉と高麗人参、セロリもこのへんで投入します。
米が芯がある程度の軟らかさになったら、生クリーム(30cc)とパルミジャーノチーズをいれて煮詰め、塩コショウで味付けして仕上げます。
寝かせておいたフィレ肉のローストを薄くスライスし、皿に盛ったリゾットの上に添えます。 適当なハーブ、よく洗った生の高麗人参を飾って完成。 意外に、イタリアンレストランで出されても違和感のない、おされーな外見になりましたw
食べた感想:
よ、予想外にちゃんと美味しい! リゾットはブロード(だし)が命、とよく聞きますが、3時間煮込んだ濃厚な鶏スープを使ったこれは、思った以上に本格的な味で、まさにサムゲタン風のリゾット。
具に入れた高麗人参はほのかな苦みがして、アクセントになってます。
フィレ肉も半レアのいい感じに仕上がりました。リゾットの具に鶏肉を使ったので、肉×肉の組み合わせはちょっとしつこいかなー、と心配でした。が、いざ食べてみると、鶏があっさりしてるので脂ののったフィレとケンカせず、意外と相性いい感じ。
トッピングの高麗人参は、スティック野菜っぽくそのままいただきます。ちょっと辛くて苦く、ほのかにクセのある香り。食べるとお腹がポカポカしてくるような感じもして、特に美味しくはないけど、なんとなく効能ありそうな味でした。
あ、残った鶏肉とスープで、普通のサムゲタンも楽しめます。
「料理マンガ」というと、ベースは日本の味覚になってることが多いので、こういうのはちょっと新鮮ですね。外国人作家の料理マンガがもっと増えるといいなあ。
ソンちゃん
コメント
コメント一覧 (8)
ありがとうございます、時間をかけた甲斐がありました!
フィレ肉のローストは、以前の記事で東海林さだお先生のローストビーフを再現したことがあって、その時の調理法が役に立ちました。
そして家のエンゲル係数には・・・もう目をそらすことにしていますw
(趣味代と食費はセットだよね!という勝手な思いこみ)
てすごい! ちゃんとおいしくて良かったですね。
ピンク色が残った牛肉がものすごくうまそうです。
ゴ ボ ウ ……!
記事のなかで何か言い足りないな、と思ってましたが、それです、確かに似てます!
お酒に漬かっているのって、お店なんかでもよく見かけますが、臭いんですね~[絵文字:e-263]
でもどんな味なのか、気になります!
高麗人参って、韓国では日常のご飯に普通に使われてるんですかね~。
やっぱり向こうでも高級品扱いで、普段は普通のニンジンを使うのかしら…。
うーん、気になります。
「ゴボウの味やん」と思いました
焼酎やブランデーに高麗人参を漬け込んだんですが
あまりに臭くて、ほとんど飲まずに
好きな人にあげました(笑
サムゲタンだったら美味しく食べられたかも・・・と残念です
(中国の人からお土産に貰ったから、あれから食べてません)
休日丸ごと潰したので、ほめていただいてうれしいですw
サムゲタンのスープって濃厚だから、ラーメンとか鍋とか、ほかの料理にも色々応用ききそうですねー。
Boichi先生はもともと料理がお好きらしいので、どの料理もハチャメチャに見えて、ちゃんと裏付けがあるのにびっくりしました[絵文字:i-183]
ほーーー、ほかのマンガでも紹介されるほど有名だったんですね[絵文字:i-189]>チキン弁当
確かに、午後の時間帯にはほとんど売り切れてて、午前の新幹線に乗る時、ようやく手に入り……人気ぶりを実感しました。
あと、リクエストありがとうございます!
私は不器用なため、自分にとって思い入れがある作品でないと作れず、リクエストに100%お応えするのは難しいのですが、マンガを読む際の参考にさせていただいてるので、うれしいです[絵文字:i-237]
有閑倶楽部はこないだ漫画喫茶で読み返したところだったので、「あれかー!」とすぐ思い出しましたw
可憐が花嫁修業にブラジル料理を習うエピソードでしたっけ…。
パタリロのフランスパンに苺とバター、やっぱり試しますよね!w
あと、マライヒが角砂糖をカリっとかじりながら、カフェオレを飲むシーンも、あこがれて真似しました(歯にしみました…)。
ほかの巻にもおいしそうなエピソードがあるんですね~。
槇村さとる先生の「おいしい関係」は、名作との評判は聞いてましたが、ちゃんと読んだことなかったので、機会があれば読んでみたいです!
こんな料理まで再現するなんてさすがです!
前回コメ返のチキン弁当 往年のマージャン漫画「スーパーヅガン 豊臣君」にも
「旅はやっぱチキン弁当だよね」で載ってマース。
リクエストは受け付けているのでしょうか?
有閑倶楽部単18巻 玉の輿料理天国 ブラジル料理
パタリロ69巻 ショジリエ 精進料理
(フランスパンにバターイチゴ、と、きょうなに食べた?のイチゴジャムには勝てませんよね。私も20年前にやりましたとも!!!)
槇村さとるのおいしい関係 は 好きじゃないのかしら?
花キャベツヒヨコマメ9巻 野菜料理アラカルト
勝手申してあいすみませーん