蒸し蒸ししますなー。暑い日は、暑い国の料理を食べるのもまたよし。深谷陽先生の「スパイスビーム」から二品目。
カオ・パッと同じく、おまけマンガに詳しいレシピが登場するパッタイ(タイ風焼きそば)です。 本編でも登場するメニューですが、なかでも印象的なのはウエイトレスのポーラが、店で働くきっかけになったエピソード。
※コマ画像:「スパイスビーム」(深谷陽/日本文芸社)より
当時は屋台だったタイ料理店「チャーン」。マスターがモヤシの根を取る作業にいそしむのを、道ばたでなんとなく眺めていたポーラは、そこで突然「食うか?」とパッタイを振る舞われます。
一口食べてその味に何かを感じ入った彼女は、食べ終わったと同時にいきなり「この店で雇ってくれない?」と押しかけ宣言。なんかこの二人らしい馴れ初めですね。
※コマ画像:「スパイスビーム」(深谷陽/日本文芸社)より
「スパイシー・カフェガール」から本作の「スパイスビーム」にかけて、看板娘のウエイトレスは何人か交代で出てくるんですが、個人的にはこのポーラが一番好き!
ファッションも毎回可愛いし、セクシーで男前な性格もステキです(必殺技は生唐辛子のチュー)。
作り方:
さて、このパッタイのレシピですが、本場の聞いたことがない食材がバンバン出てくる本格的なもの。カオ・パッを作った時と同じアメ横のお店で、大体の材料が手に入ったので、なるべく忠実に作ってみます。
麺は、米麺(クイッティオ)。
なかでも、中太麺の「センレック」(幅2mmくらい)がパッタイ用になるらしい。これを20分ほど水に漬けて戻し、シーイウ・ダムという調味料をからめておきます。
「シーイウ・ダム」(シーユーダムと発音する場合も)は、糖蜜入りの醤油。
なめてみると、独特の黒蜜の風味でかなり甘いです(実際、黒蜜と醤油を混ぜて代用してもいいらしい)。
タイの醤油はこのほか、シーイウ・カオ(薄口醤油)とか香辛料入りのタイプとか何種類かあるようで、名前も似てるためちょっとややこしい。
不思議な食材その2、タマリンド。
マメ科の植物で、果肉はジュースやお菓子、調味料に使われているらしい。ペースト状のタイプもありますが、これはサヤごと乾燥させたもの。外側は薄い殻に覆われてて、バナナのような……何かのような……(みなまで言いません)。
殻をむいて、果肉を出した状態が右の写真。味見してみると、ねっとりしていて甘酸っぱく、干し柿のような梅干しのような、不思議な美味しさ。
この果肉部分をさらしに入れて、水を入れたボウルのなかで、水が色づくまでよく揉み出します。
絞ったタマリンド液に、プリック・ポン(粉唐辛子)、ナムソムプリック(唐辛子漬け酢)、ナムプラー、パームシュガー(ヤシ砂糖)、塩を入れてよく混ぜ、パッタイ用のソースを作ります。
パームシュガーは、きび糖にも似て優しい甘さで美味しい! ほかの料理にもバンバン使えそうな調味料です
ここからは具材。ホムデーン(赤小玉ねぎ)、これも普段見慣れない野菜。玉ねぎというより、身の付き方はニンニクに近い感じです。外の皮をむいて、薄切りに。
具その2。本来は「トーフヘン」という豆腐製品を使うらしいですが、これは残念ながら見つからなかったので、厚揚げで代用。
最近は絹ごしの柔らかいタイプが多いですが、固めのしっかりした厚揚げの方が、炒める際に扱いやすそう。
そのほか、砕いたピーナッツ、ニンニク、干しエビ、ニラ、もやし(ヒゲは取っておく)、豚ロース、卵などの材料を、炒める順番通りにコンロの側に並べておきます。
フライパンを熱して油を入れ、砕いたニンニクを入れて香りが立ったら、豚肉、厚揚げ、ホムデーン、ピーナッツ(半量)を入れてざっと炒めます。
豚に火が通ったら、フライパンの片側に具を寄せ、油を足して卵を入れ、手早くほぐし炒めます。
センレック(麺)、干しエビ、ニラ、もやし(半量)、パッタイ用のソースを入れてさらに手早く炒める。
センレックは、水で戻した時点ではわりと固めなんですが、ここで火を通すとすぐに柔らかくなります。
皿に盛り、残り半分のモヤシとピーナッツを生のまま散らし、マナーオ(ライム)を添えて完成。
食べた感想:
甘さと辛さと酸っぱさ、それに干しエビやモヤシ、ピーナッツなど色んな具材の風味と食感が同時に押し寄せて、タイ料理ってほんとに「複合の美味しさ」なんだなー、と実感。ここにライムをしぼると、またさっぱりしていくらでも食べられる。
日本の家庭向けにアレンジされてない本場レシピは手間もかかりますが、その甲斐ある味でした。知らない食材にたくさん出会えたのも楽しかった!
買い込んだ調味料はまだまだ残ってるので、夏の間にパッタイ祭りをしばらく楽しむ予定。今度はソースの粉唐辛子の量を増やして、もうちょっと辛くしてみようかなー。
コメント
コメント一覧 (8)
コメントありがとうございます!
「スパイスビーム」、読むたびにタイ料理店に駆け込みたい気持ちになりますねw
調味料、たしかに普段の料理で少しずつ使ってますが、なかなか減らないです@_@;
もうちょっと小さい容量のものが売っていればいいのにな…。
なかなか更新できませんが、ぼちぼち続けていきますので、よろしくお願いします!
料理漫画好きですので、今後も楽しみにしています。
はじめまして、コメントありがとうございます!
確かにアジア料理って、材料集めが大変ですよね[絵文字:i-202]
家庭料理向けのレシピ本だと、日本でも手に入れやすい材料で代替してたりしますが、深谷先生のレシピは超本格派だったので、勉強になりましたw
「大使閣下の料理人」は、連載当時モーニングで読んでたのですが、タマリンドが出てくるとは知りませんでした!(ベトナムでも使われてるんですねー)
機会があれば、確認してみますね!情報ありがとうございますm__m
アジア料理は調味料集めがハードルあげてますが、ここまで本格的にチャレンジされるなんて、本当にすごいです。
写真もきれいだし、料理の作り方を丁寧に解説されてて、思わず生唾が出るほどおいしそう・・!
umebonさま、「大使閣下の料理人」はご存知ですか?
ベトナムの公邸料理人(日本人)のお話ですが、タマリンドが出てきます。
日本で言う「梅干し」のような味だとか。
マンガはもう完結してますので、ぜひ一度手にとって見てください。
うわーー、先生にご覧いただいてしまった!(動揺)
ただの一ファンの勝手な紹介に温かいお言葉をいただき、恐縮ですm_ _m
パッタイはこんなに本格的なレシピを見たのがはじめてだったのと、マスターが手早く作る美味しそうな描写にノックアウトされてしまいました[絵文字:e-267]
「スパイス」シリーズは、レシピの載っていない料理の数々もすごく美味しそうで(特に蒸したモチ米を手にとって食べるあのカレーに、ずっとあこがれてます)、深谷先生に本気で料理本を出していただきたいくらいですw
今後のご活躍と作品も、楽しみにしております!
たどりついてしまいました。
すごい、ここまで再現していただいて、嬉しくなりました。
タマリンドまで…
描きながら、まさかホントに試す方がいらっしゃるとは思ってませんでした。
味も、美味しく出来上がったようで、更に嬉しいです。
なんて素敵なご趣味でしょう。
ていうか、この出来上がったパッタイ、食べた過ぎます!
なまじのお店より美味しそう~w
タマリンド、初めて扱う食材だったので、おっかなびっくりでしたw
調べたらアジア圏はもちろん、インドや南米まですごい広い範囲で使われてるんですね~。
ほかの国の料理も作ってみたくなりました[絵文字:i-189]
自作より外食のほうが結局美味しい料理って、ありますよね(ラーメンとかその代表格?)。
このパッタイも、私は炒め物の際にフライパンが未だにうまく扱えないので、作りつつ「プロならもっとちゃちゃっと仕上げるんだろうな~」と、ちょっとヘコみましたw
タイ風五目野菜炒め、調べてみましたが、中華の五目炒めにも似てて美味しそうですねー!
タイで激辛が苦手な場合は、パイナップル炒飯が逃げ場になる、とよく聞きますが、これもやっぱり辛さ控えめで優しい味なんでしょうか。
調子に乗って色々調味料買いすぎたので、夏の間にいろいろタイ料理のレシピを試してみようと思います!
私はパッタイは『パッタイセット』を使って3回チャレンジした後は専ら外食にしてます。
私は基本的に自分で作るより店の方がおいしい場合は外食するタイプです。
逆に自分で作った方がおいしいレパートリーも増えつつあります。
タイの調味料の処分方法ですが、『東南アジア風五目野菜炒め』はいかがでしょう?
タイではパッ・パック・ルアム・ミッ、バリではチャプチャイと呼ばれる野菜炒め。
現地で食べた時は辛い料理に辟易していたのもあって衝撃的にウマかったです。
尚タイでは中華風に全ての野菜を油通しした後に調味料を入れて炒めてました。