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ここ数年のマンガ賞のノミネートで必ずといっていいほど名前の挙がる作家といえば、田島列島先生。

私はモーニング掲載の「子供はわかってあげない」が初めて読んだ作品だったけど、やわらかな線で描かれた愛らしいキャラクターたちと、コンテクストが濃縮されたようなディープな会話…ハマる人はどっぷりハマるマンガです。

新興宗教から逃げた教祖の父と、離婚後何年も会っていないその娘(「子供はわかってあげない」)。
不倫された妻と、不倫している女性の妹(短編「ごあいさつ」)。

田島先生のストーリーは「因縁の2人が出会ってしまう」ことの化学反応を描いたものが多いですが、最新作の「水は海に向かって流れる」も、かつて不倫した男女の子どもたちが、ひとつ屋根の下で暮らすことになる、というストーリー。

高校進学をきっかけに、おじが暮らす家で同居することになった直達。
彼を迎えにきたのは、OLの榊さん。

おじの家がシェアハウスと知らない直達は、榊さんを「おじさんの彼女」と思い込み、どこか冷たい態度の彼女にひとり悶々。

家についた瞬間、榊さんが直達に振る舞ったのが、この牛丼。

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※【コマ引用】「水は海に向かって流れる」(田島列島/講談社)1巻より

大きな肉がべろんと箸で持ち上がるこの牛丼、食べた瞬間、

「…こんなにうまい牛丼…食べたことない!!」
と心のなかで叫ぶ直達。

その後再会したおじさんの解説によると、この榊さんの牛丼は「ポトラッチ丼」と呼ばれていることが判明。

「ポトラッチ」とは、祝宴で客に贈り物をする北米先住民のかつての風習。
気前の良さを競うあまり、ときにはエスカレートし破壊的な状況を生むこともあった…というものらしい。
榊さんは時々私財を投げうってかなり上等な肉を買ってきては
フツーの玉ねぎと一緒にフツーのめんつゆで
暴力的に煮つけたものをふるまってくれるのでこの名が付きました
田島作品はこういう文化人類学ネタがちょいちょい挟まれていて、その筋が好きな方はよりほくそえんで楽しめるのではないでしょうか。
(ポトラッチに似た風習は山田芳裕先生の「望郷太郎」にも出てきましたね)

なにより「上等な肉」を玉ねぎとめんつゆで適当に煮て作る牛丼、というのは確かに暴力的で魅力的です。そんな自分の肝っ玉とのチキンレースに耐えられるだろうか。私も私財を投げうって、いざポトラッチチャレンジ。


上等な肉を買いました。
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なぜ常陸牛かというと、その後のバーベキューのシーンで榊さんが常陸牛のパックを買ってきたコマがあったからです。

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※【コマ引用】「水は海に向かって流れる」(田島列島/講談社)1巻より


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部位はどこにしようか迷ったけど肩ロースで。
中年になると赤身のほうが嬉しいんだよね~とか言いがちですが、やっぱ好きですサシの入った肉。

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いい肉を迎え撃つのはめんつゆ、玉ねぎ。

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めんつゆと水を鍋に入れて熱し、スライスした玉ねぎを煮る。

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いい肉を入れます。

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色が変わるまで煮ます。
数千円の肉に対してなんの敬意もコツもない工程にハラハラしっぱなしでしたが、なんとか耐えたぜ。

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雑に煮ても肉の魅力は失われない。肉はパワー。

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蕎麦のように持ち上げてみる。

ひと口食べて、「いい肉」は宇宙みを感じると実感……。
「何食べ」でもあったけど、幸せ脳内物質が出るからでしょうか。
豚や鶏も美味しいし大好きだけど出ないよね、不思議……。

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こっちは榊さんのご飯なしバージョン with B(ビール)。
晩酌もいいけど、お肉はやっぱり白米と食べたほうが脳内物質ドバドバ出る気がする。

あまりにも美味しい牛丼を振る舞われて、榊さんに一瞬で恋のような感情さえ芽生えてしまった直達。
おじさんの説明を受けて、それが単なる「肉の力」だったことに愕然としますが、初対面の、そして実は因縁の深い2人の距離を縮めた料理なことに違いはありません。


そういえばコロナ対策で和牛券云々という血管切れそうなニュースもありましたが、和牛は悪くない。人を憎んで和牛憎まず。
もし支給されてしまったら再びこのポトラッチ丼でいただこうと思います…。




内祝 ギフト 常陸牛 A5 肩ロース 和牛 すき焼き 500g すきやき 肉 内祝い 肉
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