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※【コマ引用】「おせん」(きくち正太/講談社)10巻より

長年作ってみたかった料理だったのですが、ようやく再現できました。
きくち正太先生「おせん」10巻に登場するすき焼きです。

年の瀬に勃発した、日吉組の純とその妻・富子の夫婦喧嘩。
理由はすき焼きの作り方。
まずは砂糖で焼き付ける関西風、割り下を使う関東風の違いでひと悶着。
さらに鍋に大好きな豆腐を入れようとした富子に対し、肉至上主義の純は「トウフなんて水っぽいもん入れるんじゃねえ」と拒否。これがきっかけで売り言葉に買い言葉となり、富子の家出に発展……というわけでした。

ふたりを仲直りさせるために必要なのは、肉もトウフもどっちも主役で、関西でも関東でもないすき焼き。そんなすき焼き、可能なの?と思ってしまいますが、さすがおせんさん。この難題に応えてしまいます。

まず使う調理器具は、すき焼き鍋ではなくスッポン用の土鍋
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※【コマ引用】「おせん」(きくち正太/講談社)10巻より

きくち先生のコラムによるとこのすっぽん鍋は、伊賀の土楽窯の黒鍋をモチーフにしたものだそう。
しかしこの黒鍋、かなりいいお値段がするので(9寸で15000円くらい)、「土鍋すでに持ってるしなあ…」となかなか購入に踏み切れなかったのですが、なんとうちの実家にあることが判明。ゴールデンウイークに帰省したときに使わせてもらったのでした。

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これがその黒鍋。
特徴はガンガンに空焚きしても大丈夫なほど耐火性が強い点。「ステーキが焼ける土鍋」とも言われているらしいです。

作中では「底が浅くて空焚きできる丈夫な土鍋」ならOK、と説明されていますが、どうせならこの鍋で再現してみたかったのです(夕飯担当する条件で使わせてもらうことに)。

ちなみに必要な調理道具としてはもうひとつ「七輪」もありますが、今回は用意できずガスコンロ→途中でカセットコンロです(きくち作品の再現で七輪を使わないなんて面目ない…)。
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作り方:
まずはタレに使う出し醤油作り。
鍋に水、醤油、みりんを入れて火にかけます。ここに昆布、煮干し、削りガツオ、ネギの切れ端を入れ、再沸騰したらとろ火にして煮込みます(今回は1時間くらい)。
分量は書かれてませんが、以前作った特製割り下を参考に、醤油とみりんは2:1の割合で、ストレートのめんつゆくらいの濃さに仕上げました。

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使うお肉もおせんさん流。すき焼き用の薄切り肉ではありません。
「中の上くらい」の牛もも肉をブロックで買い、まずはステーキくらいの厚さに切って、そのあとひと口大にそぎ切りします(焼き肉用に売られているような形にするイメージです)。

さあ、まずは肉の宴から。
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すっぽん鍋を熱したところに牛脂を溶かし、

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ステーキの要領でもも肉を焼き付けます。

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片面に焼き目がついたら裏返して、火を落とし…

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ここにさっき作った出し醤油を入れて

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肉に焼き絡めて、

溶き卵につけていただきます。
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肉にしっかり厚みがあるので、すき焼きより「肉食べてる!」という実感がわきます。出し醤油もくどくなく、「和風焼き肉」といった体でいくらでも食べられそう(私はふだん関西風派だけど、あれはやっぱり砂糖の甘さがきつくてあんまり量は食べられないのよね)。


お肉をひととおり食べたら、真打登場。今度はお豆腐が主役です。
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お肉は「中の上」レベルでOKだけど、木綿豆腐は「いいもの」を選ぶのがポイント。3時間ほどしっかり水切りしたら、横半分に切って厚さを半分にして、あとは三角や四角などお好きな形に。

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サラダ油7:ごま油3で最初低温、仕上げは高温でキツネ色になるまで素揚げします。

「厚揚げと油揚げの中間」くらい手揚げ豆腐、完成です。
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お肉を食べ終えた鍋の出汁に、お湯で薄めた出し醤油を加えて火にかけ、沸騰したらこの手揚げ豆腐と水菜をどっさり入れ、フタをして5分。

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今度は豆腐が主役、おせんさん流すき焼き鍋・第二形態。

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こちらも溶き卵でいただきます。

とろりとやわらかい手揚げ豆腐は、牛肉のうまみがしみ込んで、ちょっとどうかと思うほど美味しい……。きくち先生も書かれていますが、お肉よりも豆腐が本番といえる料理。なのでお肉フェーズでは食べ過ぎないように、腹五分目くらいにおさえておくのが吉。

お肉同様、味つけの出し醤油がさっぱりしているので、〆までもたれない大人のためのすき焼き。これはたしかにどのすき焼き流派にも属さず、しかも美味しいので、平和なすき焼きが実現できそう。

数年越しのあこがれだった再現ができて、大満足。
黒鍋は煮つけにも便利らしいので、9寸くらいの小さいやつ、買っちゃおうか再び悩み中…(あと七輪も)。




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