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※【コマ引用】「エスパー魔美」(藤子・F・ 不二雄/小学館)3巻より

誰にでも、思い出深い藤子不二雄作品というのがある。
わたしの場合はオバケのQ太郎、ドラえもん、そしてエスパー魔美。実家に単行本が揃っていたので、子供のころから繰り返し読んだ作品たち。

児童向けの他の2作品と違い、主人公が中学生という設定の「エスパー魔美」は、ハッピーエンドと言い難いエピソードもいくつかあり、世の中の白黒つかなさを教えてくれた作品のひとつだったように思う。大人になって読み返して、色あせない理由もそこらへんにあるのかもしれない。

そんなエスパー魔美に、ちょっと不思議な料理が登場していたのを覚えている人はいるでしょうか。
「のぞかれた魔女」のエピソードに出てくる、魔美のパパの好物・たくあんの煮物。
といっても作中の描写としてはほんの少し。

魔美の家を訪れた高畑さんとのやりとりで、
「なんだい、このものすごいにおいは?」
「タクアンを煮てるのよ。パパったらへんなものが大好きなんだから。」
というシーンがあったり、魔美家を敵視するお隣の陰木さんが「毒ガス」と表現して玄関で倒れたり、料理そのもの(鍋の中身)は描かれていないものの、なかなかのインパクト。

どうやら世の中にはたくあんを煮る料理があるらしい、というのはその時初めて知ったものの、WikipediaもQ&Aサイトもない時代にそれ以上知る術もなく。大人になって読み返し、気になってネットで調べたら、意外なことがわかった。

たくあんの煮物は、京都や滋賀、北陸エリアのお惣菜だったのだ。
古漬けのたくあんを塩抜きして煮たもので、「贅沢煮」とも言われるらしい。藤子先生の出身地は富山県だけど、案の定、富山でも「いりこぐ・いりごき」という名前で呼ばれているのだとか。

関西圏のご近所エリアで生きてきたのに、そんな料理があるとは全然知らなかった。
食べ物はさらっと抽象的に描く印象のF先生作品で、この料理は妙に具体的なのも気になる。もしかして、先生ご本人にとっても思い出深い故郷の料理だったりしたのだろうか。

「昔のたくあん」という古たくあんの市販品が手に入ったので、これで再現してみることにしました。
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切ったついでに、ひとつつまみ食いしてみる。
生きてます!と乳酸菌がたからかに主張してくる、発酵の酸味。祖母が漬けていたたくあんも、古くなるとこういう味がしていた。市販品のせいか、塩気は抑えてあるので、塩抜きにそれほど時間はかからなさそう。

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これを、20分ほど茹でて塩抜きします。
茹でている間、確かにガスっぽい独特の匂いがする。市販品のたくあんだからか、人が倒れるほど強烈ではないのが御の字。

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塩抜きしたたくあん(ゆでたあと味を見て、まだ塩気がきついなら水にさらしておく)を鍋に戻し、ひたひたの出汁、しょうゆ、みりん、酒、唐辛子(これはお好み)を入れ、フタをして柔らかくなるまで煮る。

長年謎だったたくあんの煮物、できました。
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食べた感想:
温かいうちは硬めの煮物のような、切り干し大根のような食感。醤油のきいたたまり漬け風の味つけは、おかずにも酒の肴にもよい感じで、なかなか美味しい。
冷蔵庫で冷やすと、もとのたくあんに近い食感に戻るのも面白い。漬物にした時点で大根の水分はほとんど失われているから、長時間煮込んでも煮崩れたりしないんだろうな。

藤子先生の出身の富山県では、だし醤油ではなく酒粕で煮るたくあん煮の情報もいくつか見つかったので、パパの好物はそっちの可能性もありそう。

余談ですがこれを作るのに久々に全巻読み返して、あらためて高畑さんは藤子作品のイケメンランキングでぶっちぎり優勝だなと思いました。付き合うなら高畑さんだし、娘がいたら婿に来てもらいたいし、男として生まれるなら高畑さんになりたい。パーフェクトヒューマンTKHT。


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