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クリスマスが近づいて、近所のスーパーの棚に丸鶏が並び始めた。
丸鶏にはあんまりいい思い出がない。

安いオーブンレンジで焼く→てっぺんだけ焦げて中は生焼け→何度も焼き直してパサパサ→半分も食べないうちに無言になる→食卓が微妙に険悪になる→翌日カレー行き(カレーってやっぱりおいしいなー)
……というのがお決まりのパターン。

しかし何度失敗しても、性懲りもなく手に取りたくなるのがこの食材。
スーパーでどうしようかな、と迷っていたら「美味しんぼ」10巻に登場する、中華風のフライドチキンを思い出した。

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※【コマ引用】「美味しんぼ」(雁屋哲/花咲アキラ)10巻より

山岡の同僚である、政治部の松川。
ワシントン支局時代に不味いフライドチキンを食べ過ぎて、今では
俺にとってフライドチキンは人類が発明したものの中で、核兵器と並ぶ忌まわしいものだっ
と、カーネルおじさんが絶望して道頓堀にダイブしそうなセリフを絶叫するほどのチキン嫌い。
そんな彼の妻で、米国人のメリーは
アメリカ人にとってのフライドチキンは、日本人にとってのアジの干物みたいなものだわ
と、故郷のソウルフードを受け入れてくれない夫にストレスを感じている。
(しかしフライドチキン=アジの干物 の例えはイメージがしやすいようで、なかなか実感として受け止めづらい……これが食文化の違いってやつでしょうか)

そこで山岡が提案するのが、表面はパリパリ、中はしっとりジューシー、という中華の技法を使った理想的な鶏料理。
作中に簡単に解説があるので、それをもとに再現してみる。

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作り方:
丸鶏(内臓を抜く処理をされているもの)を1羽用意する。

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丸鶏の表面と内側にあら塩とコショウをたっぷりと塗りまぶし、しばらくなじませる。
大鍋に湯を沸かし、丸鶏をさっと湯通しする。表面の皮に火が通ったな、と思うくらいでOK。

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湯通しした丸鶏は軽く表面の水気をふく(念のため再度軽く塩コショウも)。
水あめを少量の酢でゆるめ(ゆるめすぎないように注意)、丸鶏全体にハケでまんべんなく塗っていく。

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水あめを塗った丸鶏は、風通しのいい場所で半日ほど陰干しする。

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※【コマ引用】「美味しんぼ」(雁屋哲/花咲アキラ)10巻より

さて、この下ごしらえした丸鶏をパリパリに仕上げる秘密兵器が、ジャーレン(炸鏈)。中華用の調理器具で、油通しや湯通しをする際に、中華鍋と組み合わせて使うアイテムだそう。
『 中華用油こし 油こし器 』 中国製 18-8中華用油こし8インチ
『 中華用油こし 油こし器 』 中国製 18-8中華用油こし8インチ


↑山岡さんが使っているのはこのタイプかな。

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私が持っているジャーレンはこちら。ステンレス製でそこそこ軽い。
ジャーレンは手持ちの中華鍋より二回りほど小さいものを選ぶと扱いやすいそう(私はサイズをよく確かめなかったので、微妙に大きさがかみ合わなかった…)。

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揚げ油はピーナッツオイル。
中華鍋にどぼどぼと注いで、火にかける。ピーナッツのいい香りが漂う。

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ジャーレンに丸鶏を乗せて、ピーナッツオイルの温度が低いうちから肉の表面にまんべんなくかけていく。

しかし1キロ近い鶏がどーんと乗ったジャーレンを片手で持ちながら、油をかけ続けるのはかなりしんどい。腕が死ぬ……。
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なのでもうひとつのコンロに鍋を用意し、その上にジャーレンを乗せて隣の中華鍋から油をかける、という小ずるい手段をとってみる。
左の鍋に油が溜まったら、右の中華鍋に油を戻す…というのを繰り返す(コンロに油が垂れまくって掃除が大変だったけど…)。

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かける油の温度が高くなるにつれて、皮がこんがりと色づいていく。
手羽や脚の部分はなかなか色づきづらいけど、ピンポイントで集中的に油をかけると、同じようにこんがりしてくる。

この「気になるところを直接加熱できる」点は、オーブンにはない利点(腕しんどいけど)。

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慣れない作業にもたもたしながら1時間ほど油をかけ続けて、ようやく全体がいい色に(手慣れれば、30分ほどで火は通りそうな気がする)。

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おしりもいい感じ。

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一番の難関は、この丸鶏を切り分けるところ。
せっかくパリッと仕上がった皮をなるべく崩さないよう、見よう見まねで出刃包丁で骨ごとぶつ切りにしていく(中華包丁ほしいなあ)。

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もたつきながら、なんとか切り分けたのがこちら。

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食べた感想:
好みの部位を選んで、骨に気を付けながら丸ごとかぶりつく。
皮はまるで北京ダックのようにパリパリ。下塗りした水あめのおかげか、ほんのり甘みも感じる。

さて問題は肉の部分。
油をかけるだけで、中までちゃんと火が通るのか心配だったのだけど……結果は、無問題!
パサつきがちなむね肉やささみの部分(=わが家では不人気部位)もジューシーで、冷めてもしっとりしているのに驚き。

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そのままでもほんのり塩気があって美味しいけれど、五香粉&塩、スイートチリソースの2種類の小皿を用意してみたら、さらに手が止まらない。手羽の骨の細い部分なんて、まるごとバリバリ食べられる。

「真田丸」の最終回を見つつ無心に食べていたら、

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なんということでしょう。
2人で1羽、いつのまにか完食していた。
松川記者が、おとな気なく我が子と奪い合うように食べていたシーンにも納得。

というわけで、個人的に太鼓判を押せる「美味しんぼ」メニュー。
「立派なオーブンは持ってないけれど、クリスマスに丸鶏を失敗なくおいしく料理したい」方におすすめです。


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