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いま「日本一忙しい漫画家」のひとりと言っていい東村アキコ先生が、「料理」×「ミステリー」というふたつの新ジャンルに挑んだ「美食探偵 明智五郎」。
連載を多数抱えるなかでこの新境地……すごい。
主人公は明智小五郎ならぬ「明智五郎」。
都内の一等地に事務所をかまえる私立探偵で、容姿端麗、頭脳明晰、食べることには並々ならぬこだわりがある男。

彼に対峙するのが、浮気した夫を殺したのち、殺人鬼となった元依頼人のマリア。彼女が起こす事件を、明智が「食」をカギに解き明かしていきます。
東村ワールド定番のギャグもありつつ、マリアとの因縁は「黒蜥蜴」を思わせる昭和デカダンな愛憎劇風だったり、いろんな楽しみ方ができる作品です。

フレンチトーストは、とある高級ホテルで起こった若いカップルの毒殺事件に登場するメニュー。
※ネタバレの部分に触れるので、未読の方はご注意ください



被害者が最後に食べたのは、ルームサービスの朝食・フレンチトースト。
なぜ犯人は毒物入りと気づかせずに食べさせることができたのか、なぜ朝食のシチュエーションではないとだめだったのか……。
謎を前に浮かび上がったキーアイテムが、「リンゴ」。

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※【コマ引用】「美食探偵 明智五郎」(東村アキコ/集英社)1巻より
恐ろしい劇薬も、やけどするほど熱々のリンゴジャムに混ぜれば自然と口に運ばせることができる。
推理をもとに、助手(?)のいちごと青森のリンゴ農園にやってきた明智は、そこで「茜」という品種のリンゴと出会います。

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※【コマ引用】「美食探偵 明智五郎」(東村アキコ/集英社)1巻より

東京では見かけない、珍しい品種のリンゴ。砂糖と一緒に煮てみると、ジャムにぴったりなことがわかります。
この「茜」と犯人の関係は?
その先は作品を読んでいただくとして、この印象的な毒林檎ジャムのフレンチトーストを再現してみます。


しかしこの「茜」、都内のお店を探してもほんとに見あたりません。早生種のため、出荷時期も秋口のみと限られているようです。

漫画を読んでから半年越し、ネットで扱っている青森の農家さんを見つけ、お取り寄せでようやく対面できました。
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紅玉とウースターの交配品種……とのことですが、深みのある赤い果皮と、真っ白な果肉の対比が美しくて、見惚れてしまう。紅玉と同じく製菓向きというだけあって、そのまま食べると酸っぱくてあまりおいしくはありません。

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茜リンゴのジャム:
鍋に皮をむいて小さく切った茜リンゴと、重量の30パーセントの砂糖をまぶし、30分ほど置く。
水分が出たらレモン汁を加えて火にかけ、焦がさないように弱火で注意しながら軟らかく、とろみがつくまで煮る。
リンゴひとつ分で↑これくらいの量……意外と減っちゃうんですね。
熱々を味見してみると、生で食べたときの「単なる酸っぱいリンゴ」の印象とうってかわって、さっぱりした甘さにほどよい酸味がきいて、おいしい。
リンゴジャムってあまり好きじゃなかったけど、手作りの出来たてはこんなに違うものなんだなー。

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ちなみにこちらは皮と一緒に煮たもの。果肉がルビー色になってキレイです。

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フレンチトースト:(※分量は参考まで)
ボウルに牛乳(100cc)、卵(2個)、砂糖(30g)、バニラエッセンスを入れて、白身が完全になくなるように泡だて器でよく混ぜる。

食パンは、ホテルブレッドなどきめ細かな生地の4つ切りタイプを使います。
耳を切り落とし、半分のサイズにしたものをボウル液に漬けます。

ホテルのフレンチトーストといえば、オークラの一晩じっくり浸して焼くものが有名ですが、今回のメニューは明智探偵の言葉を借りるなら、
「卵を全部染み込ませず 中はあえて白い部分を残したまま」
が特徴。なので、両面をさっと浸す程度でOKです。

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フライパンにバターを入れて弱火で溶かし、熱くなりすぎないうちに食パンを入れる。
フタをして、じっくりとトロ火で両面をきつね色になるまで焼く。
(食パンがしぼんでしまうので、ひっくり返すとき以外はいじらないようにします)

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焼き上がり。

リンゴのジャムをソースウォーマー(…と見せかけてこれは卓上フォンデュ鍋ですが)に入れてサーブすると、ホテルっぽさ増します。
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劇薬感を出すためにw、粉砂糖も振る。

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食べた感想:
じっくりトロ火で焼いたフレンチトーストは、外は香ばしくこんがり、中は食パンのしっとり感が残っています。
これに出来たての甘酸っぱいリンゴジャムは、メープルシロップもいらないほどパーフェクトな組み合わせ。

同じ素材 同じ味付けでも
美しい皿やサーブする人間の演出でいくらでも価値が変わる

田舎の素朴な手作りジャムも、供し方次第でゴージャスなメニューに化ける。
明智探偵の言う通り「料理とはそういうもの」なのでしょうが、ここを人間関係の愛憎、犯人の動機に結び付けたのがすごいなあ。

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