「ブシメシ!」の南京汁 私の知っている中で、一番「静かな」土山しげるマンガかもしれない。 「勤番グルメ ブシメシ!」は、江戸時代の実在の武士、酒井伴四郎の日記をもとにした江戸グルメ漫画。紀州藩から単身赴任で江戸に勤番しつつ、叔父の食事の世話を引き受けている伴四郎の食生活が描かれます。 怒号も飛び交わないし、ヤクザも謎の必殺技も出てこないし、淡々と描かれる下級武士の日常は、まるで谷口ジロー作品のようで、これがほんとに土山先生なのか…(※偏見です)と驚きますが、もともと生活感を描くのがうまいだけあって、こまやかな描写が新境地の面白さ。食い意地の張った叔父上とのやりとりや、江戸の街グルメをうきうきと食べ歩きする様子に、200年前の人物と思えないほど親近感がわいてきます。 今回は、9話に登場する「南京汁」と「胡椒飯」を再現してみます。どちらもおなじみの食材が登場しながら、その調理法は今の私たちからするとちょっと新鮮。 「勤番グルメ ブシメシ!」(土山しげる/リイド社)より ※【コマ引用】「勤番グルメ ブシメシ!」(土山しげる/リイド社)より まずは「南京汁」から。風邪をひいた叔父のために作った、温かくて腹持ちのいい汁物。 料理名に「南京」とついているとカボチャを思い浮かべますが、これは溶き卵とおからが入った味噌汁。なぜこの名称なのかは、少し調べてみても解明できず…。 おから おからを炒める 南京汁の作り方: フライパンにサラダ油を入れて熱し、生おからを焦げないようにパラパラになるまで炒める。 溶き卵を入れる おからを入れる 味噌汁を作り、そこに溶き卵をまわし入れてふんわりと仕上げる。炒めたおからを入れて軽く混ぜ、ひと煮立ちさせたら完成。 完成 食べた感想: おからと卵、肉食が一般的ではなかった江戸時代の貴重なタンパク源がたっぷり入っていて、まさに「滋養食」。 味噌汁におから、って初めての組み合わせだけど、クセもなく、すり流しのようにするすると食べやすくて、気に入りました。よく考えたら豆腐とか油揚げとか、大豆製品は味噌汁の定番なので、合わないはずないか。 「勤番グルメ ブシメシ!」(土山しげる/リイド社)より もう一品は「胡椒飯」。同じく風邪気味の同僚を見舞った際に作ったもの。 和食のイメージが薄い胡椒ですが、作中の解説によると、室町時代には輸入されていたようで、江戸時代には薬味として普通に使われていたよう。 冷や飯 胡椒 胡椒飯の作り方: 鍋に冷や飯を入れ、かつおでとった出汁をそそぎひと煮立ちさせ、醤油で味付けをする。 黒胡椒を挽きながらたっぷり入れる。 きざみ昆布 こんぶを入れる きざみ昆布を散らして完成。 大根おろしを薬味にそえていただきます。 「ブシメシ!」の胡椒飯 「ブシメシ!」の胡椒飯 食べた感想: いわばシンプルな味付けの雑炊ですが、かつお出汁にぴりっと効いた胡椒って、創作料理のようなモダンな組み合わせにも感じる。「一周まわって新しい」的な。 冷たい大根おろしと一緒に食べると体が整っていくような気持ちに。江戸時代の人も文字通り「薬味」として、胡椒を日常に取り入れていたんだなー、と思うと興味深い。 鍋 この話のオチで、叔父のわがままにも関わらず、伴四郎が終始ご機嫌だった理由が明かされるのですが、それは「道具市で新しく買った鉄鍋の使い勝手がまことによかった」から、というもの。 これは実際の伴四郎の日記にも書かれている描写だそうで、おニューの道具がうれしくて料理がはかどるなんて、完全に現代の料理男子に通じるものがありますよね。伴四郎を実写化するなら、谷原章介or速水もこみちあたりを希望(胡椒ファサー)。 ※ほんとは作中のような鉄鍋で再現したかった…のですが、めぼしい鍋が見つからず、今回はストウブで作りました(個人的な「テンションが上がる鍋」ってことで)。 解説を書かれている青木直己さんの著書も面白そうなので、いずれ読んでみよう(Amazonでは品切れ、中古も高騰してるようです…)。
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